真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「義母たちの乱行 レズつて息子も…」(2003『義母レズ ‐息子交換‐』の2012年旧作改題版/提供:Xces Film/製作:シネマアーク/監督:下元哲/脚本:関根和美・大竹朝子/企画:稲山悌二・奥田幸一/撮影:下元哲/照明:代田橋男/編集:酒井正次/助監督:高田宝重/撮影助手:海津真也/出演:橋本杏子・しのざきさとみ・酒井あずさ・しらとまさひさ・拓植亮二・佐々木基子)。
 窃視を表現する為に、左右を大きく削つた可視部分は縦長の画面。風呂上りの橋本杏子が、全身にボディ・ローションを塗る。しらとまさひさの目のアップと、視線に橋本杏子が気付き実を固くしたところでタイトル・イン。
 朝の竹内家、日常的かつ互ひに覗き覗かれてゐることを、血の繋がらぬ母・あい子(橋本)と義息の慎吾(しらと)が既に満更ではない風情で仲良く喧嘩する。そこに横柄に現れる、オーラスと都合二度何れも背中越しにしか見切れない、あい子の夫で慎吾の実父・貴之役の、強ひて譬へるならば小太りの竹本泰志は一体誰なのか。定石だと高田宝重なのだが、髪質が違ふやうに見える。大した度胸で代々木ゼミナールの外景を押さへておいて、予備校の屋上。慎吾は悪友の西山恭輔(柘植)と、幾らジャンル映画といへど藪から棒な大飛翔だが各々父親の後妻を狙ふ素振りを見せる。そんなこんなで恭輔の義母・香奈(佐々木)が内職の翻訳業に精を出す西山家、恭輔が帰宅したものかと思ひきや、慎吾も遊びに来てゐた。その際に実は約束を交し、木曜日にマンション裏で待ち合はせた慎吾と香奈は、ケロッとホテルにて一戦交へる。母親同士も親交を、といふことであい子が香奈を訪ねる。飲み食ひしがてら、何時しか二人は交はる。双方義理の母親が初対面から同性愛、最早奇想天外に近いシークエンスではあるが、細かいことは気にするな。香奈は慎吾を喰つたことを仄めかし、あい子をやきもきさせる。
 しのざきさとみは香奈の元恋人で、矢張り木曜の夜になると香奈が遊びに行く、推定レズビアン・バーのママ・白石律子。酒井あずさは、店名不肖律子の店の女・岡嶋葉子。葉子と寝る香奈を前に、律子が葉子即ち酒井あずさを捕まへて、“若くてピチピチした娘”と称することに何となく度肝を抜かれる。この面子の中では、確かに最年少なのだとしても。
 その後も散発的に輩出しなくもない、“最後のピンク女優”と最初に呼ばれた、80年代後半を中心に大活躍した名女優・橋本杏子。池島ゆたかの「コギャル・コマダム・人妻・美熟女 淫乱謝肉祭」(1996/脚本:五代暁子)で一旦引退後、同じく池島ゆたかの「デリヘル嬢 絹肌のうるほひ」(2002/脚本:五代暁子/主演:真咲紀子)でまさかの電撃銀幕復帰を果たした上での、今作が改めてピンク映画・ラスト・アクトに当たる。因みに、恐らく脱ぎはしないであらうが、近年アタッカーズ社のDVDに、橋本杏子はチョクチョク出演してゐる。それらの監督の川村慎一といふのは、もしかすると川村真一と同一人物なのか?橋本杏子に話を戻すと、口跡は前世紀の全盛期と全く変らず、肢体にも然程の衰へは感じさせない。ものの、潤ひを欠いたのか表情の強張りが流石に正直少々キツい。さうなると、最低限の繋ぎで一応の体裁を整へつつ残りの尺は、クライマックスの義母子スワッピングを含め様々な組み合はせの濡れ場濡れ場でひたすらに埋め尽くす。ある意味裸映画として潔い態度ないしは戦略ともいへ、統一的な起承転結を成し得るだけの物語が存在しない以上、どうしても漫然と絡みが連ねられるばかりでメリハリに乏しいきらひは否めない展開を、主演女優として堂々と支へ抜くには如何せん厳しい。落日の感慨に、おとなしく浸るべきであるのやも知れぬ一作。純然たる枝葉中の枝葉に過ぎず、明後日だか一昨日なハイライトは、香奈が律子の店を劇中一度目に訪れる件。夜の街のショットと、下元哲映画によく見られる光景ではあるが、実店舗ではなくスタジオ内にそれらしくボックス席をあつらへた―だけの―店内風景との間に、二輪挿された白百合を捉へたカットを挿み込むさりげないポップ・センスが、妙な強度で琴線に触れた。


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