真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「令嬢とメイド 監禁吸ひ尽くす」(2007/製作:ナベシネマ/提供:オーピー映画/監督:渡邊元嗣/脚本:山崎浩治/撮影:飯岡聖英/照明:佐々木英二/編集:酒井正次/助監督:永井卓爾/撮影助手:堂前徹之/効果:梅沢身知子/協賛:ウィズコレクション/出演:夏井亜美・神田ねおん・岡田智宏・藍山みなみ)。監督助手をロストする。
 源田亮(岡田)と立花桔梗(藍山)が、奥深い山道を行く。心霊現象マニアの源田は、神隠しの里と噂される山里を目指してゐた。源氏の末裔でもある源田家では代々、その山は鬼門の方角に当たるとされてゐた。道を失ひかけた二人は、源田にだけ聞こえるピアノの音色に誘はれ、洋館に辿り着く。洋館には、療養中の財閥令嬢といふ佐織(夏井)と、メイドの呉羽(神田)とが暮らしてゐた。
 妖しい力に支配された洋館に囚はれる男と女、洋館の主と男とは、抜き差しならぬ因縁にあつた。千年の時を超える、伝奇ロマンである。些か綺麗に纏め過ぎた。
 ロケ費用の皺寄せか最小限の布陣で挑んだ今作は、後は要は最後に秘密の明かされるまで、妖力に操られた源田と桔梗とが繰り広げあるいは見る、濡れ場と白日夢の数々で延々と綴られる。渡邊元嗣といふ人は、即物的な桃色方面に関しては元来それ程大きな破壊力を有する映画監督ではなく、一方手駒の上でも特にさういふ点に長けた女優陣でもない為、些かならず映画が間延びしてしまふ感は否めない。
 終に明かされる伝説の秘密に触れずには、どうにも話が進まないので伏字で処理すると、<数百年前、公家の娘の佐織は源頼嗣公の下に正妻として嫁いだものの、頼嗣は側室に現を抜かす。嫉妬に狂ふ佐織は狂気の果てに人々の精を吸ふ鬼女となり、陰陽師と対決の末この地に封印される。神隠しとは里の人間が鬼女の妖力に囚はれることで、源田は、頼嗣公の末裔に当たつてゐた>。単なるそこら辺で拾つて来た今時のギヤルにしか見えない、神田ねおんがコスプレ止まりのメイドといふ貧弱さ以前に、看板の―筈の―夏井亜美には、狂ほしい恋心の果てに終には鬼と化した、凡そ千年の時空を超える鬼女としての凄味や重量感、何もかもの資質が丸々不足してしまつてゐるのがどうにもかうにも苦しい。とりあへず、数百年前時制のイメージ・ショットも撮るのだから、せめて髪くらゐは黒に戻せ。
 一箇所目を引かれたのは、かういふ領域での技術的な造詣に全く乏しいところは心苦しいばかりであるが、所々で挿入される白黒ではなく、白青画面―それでゐて何故か黄色は発色する―ともいふべき特殊な画調。間延びしがちな今作にあつて、効果的なアクセントとしても機能してゐる。特別なフィルムの使用や事後処理だと経費がかさむばかりであらうから、恐らくはその場でフィルターを噛ませた程度の撮影ではないかと思はれる。恐ろしく古い映画の、絶妙に美しく劣化したフィルムを見せられてゐるかのやうな、独特の肌触りが心地良い。映画とは、小屋で観るものである。

 因みに鎌倉幕府五代将軍の頼嗣は、四代から二代続く北条氏傀儡のいはゆる摂家将軍で、正確には藤原姓である。更に正確な文言は押さへてゐないが、神隠しの里は、源田家では代々鬼門の方角に当たるといつた台詞がある。一般的に鬼門といふものは家々によつて任意に設定されるものではなくして、陰陽道では艮(うしとら:丑と寅の間)の方位、即ち北東方向と一方向に固定されてゐる。反対方向の南西方向は、裏鬼門とされる。個人的には、この手の事柄は全く当てにするものではないが。
 何処で触れるべきか迷つたところでもあるのだが、どうでもよかないので、敢てハッキリ書く。何方か関係者、早く藍山みなみを何とかしろ。一体どうしたのだ?元々リミットは時にオーバー気味である人ではあつたが、二の腕も太股も、丸々と戦慄さへ感じさせる福々しさである。金網の上から、ギロチン・ドロップでも降つて来るのかと思つた。もう少し、アップ・トゥ・デートな譬へは無いものか。直截にも程があるが、何処か悪いのか?とでもいふほどの肥えやうである。


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