真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「美人姉妹 月下の凌辱」(2014/製作:加藤映像工房/提供:オーピー映画/監督:加藤義一/脚本:山内大輔/撮影監督:宮永昭典/編集:有馬潜/助監督:小山悟/監督助手:小関裕次郎/撮影助手:加藤育・金山翔太郎/撮影応援:島根義明/音楽:友愛学園音楽部/音響効果:山田案山子/出演:桜ここみ・佳苗るか・酒井あずさ・津田篤・山本宗介・森羅万象)。クレジット終盤に力尽きる。
 細い三日月を一拍抜いて、鎖で繋がれた上に目隠しと口は粘着テープで塞がれた女が、ナイフで怯える体を嬲られタイトル・イン。秀逸に謎と核心とを投げた開巻は、グルッと二周して二度観ると重ねて素晴らしい。
 大蔵保険営業職のOL・大友レイ(桜)は言ひ寄つて来る同僚・遠藤隆史(山本)を、一切気は乗らぬまゝホテルに連れ込む。正常位での営みに自ら早々に匙を投げ、騎乗位で派手に気をやつたレイは事後、改めて遠藤を拒絶する。義父・雄司(森羅)が散乱した競馬新聞に囲まれ高鼾をかく大友家に帰宅したレイに、四つ下で、中野大学に通ふ妹・カナ(佳苗)は一人暮らしを決めたと報告。カナが家を出ることを、レイも快諾する。レイが中学の時に、二人の母親・ノブエ(酒井)は雄司と再婚。劇中仕事をしてゐる素振りは欠片も見せない雄司にさんざ苦労させられながらも、大病を患ひ死に至るまで、ノブエは雄司の肉の支配から逃れられなかつた。高校時代、度々雄司が母を虐げる夫婦生活を目撃してゐたレイは、余命幾許もないノブエが、カナを守る為に自身を雄司に売る会話も聞いてゐた。そんなある日、カナからの連絡が四日間途絶える。心配したレイはカナのアパートを訪問、一見善良さうに見える隣人・杉下(津田)は、友人宅にでも泊まつてゐるのだとレイを慰める。仕方なく手ぶらで帰るかとしたレイは、旅行中である旨のカナからのメールを着弾する。
 五ヶ月後に大蔵電撃移籍を果たす山内大輔を脚本家に擁し、デビュー十周年を記念した2012年第一作「どスケベ検査 ナース爆乳責め」(脚本:小松公典/主演:あずみ恋・Hitomi)以来、要は二年七作ぶりに満足な脚本を得た加藤義一2014年第二作。漸く袋小路を自覚したのかオーピーが終に堪忍袋の緒を切らしたのかは知らないが、とりあへず胸を撫で下ろす。尤も、次々作は盟友ないしは最終兵器・城定秀夫を迎へるのに対して、次作の脚本は相変らず鎌田一利であつたりもする。2015年第一作の話は地方在住の純然たる一ピンクスには依然聞こえて来ない中、かつての岡輝男との黄金コンビ復活を夢想してみるのは、恐らく叶はぬ望みであらうことならば判つてゐるつもりである。
 今作単体に話を戻すと、パキパキッとした硬質の美貌と、柔らかさを感じさせる天然美乳が狂ほしい桜ここみ。パーカのフードを被ると際立つ体の小ささが、自身の前作にして初陣「いんらんな女神たち」第一話「さやうなら好きになつた人」(脚本・監督:金沢勇大)の時とは別人のやうにロリロリした印象を爆裂させる佳苗るか。そして、永遠の全盛期を咲き誇る酒井あずさと、女優部三本柱はエクストリームに強力。一方受ける男優部は、邪欲の権化に相応しい歪んだ重厚感をバクチクさせる森羅万象をトメと扇の要に配し、絶妙に闇を孕んだ津田篤とストレートな山本宗介、脇を二人のイケメンに固めさせる布陣に隙はない。ドラマ的にも先行する姉の母譲りの業を、修羅場を潜り抜けた妹の狂気が一息に追ひ抜く展開には、流石山内大輔を連れて来ただけのことはあると激しく興奮した。ところが、カナがレイをブッ千切つたところで終つてしまふラストには、薮蛇に大友家に現れる遠藤の間抜けさ含め別の意味で吃驚した。肩を透かされるでなければ、腹を立てるでもなく。表面的にはダークな雰囲気に反して、唐突に現出した空白に只々呆気にとられた。何といふか、不思議な手応への一作である。


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