真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「快楽郷 人妻に乗る」(1995 冬『本番!!ドすけべ夫婦』の2010年旧作改題版/製作:アウトキャストプロデュース/配給:新東宝映画/監督:上野俊哉/脚本:尾西兼一/企画:森章《新東宝映画》/プロデューサー:岩田治樹《アウトキャストプロデュース》・サトウトシキ/撮影:西久保維宏/照明:南園知男/編集:金子尚樹《フィルム・クラフト》/音楽:E.Tone/助監督:女池充/監督助手:坂本礼/撮影助手:鏡早智、他一名/出演:小川真実・沢田夏子・林由美香・登根嘉章・伊藤猛・清水大敬・佐瀬佳明)。照明助手その他諸々ロストする。
 矢沢シンゴ(佐瀬)が喫茶店に先に入りションボリと待つてゐると、遅れて先輩(伊藤)が現れる。二流会社に勤め既に人生の墓場に到達した伊藤先輩(仮称)は、一流商社マンでしかも医者の娘と付き合ふ、矢沢を羨望してゐた。ところがリストラされてしまつてゐた矢沢は、持ち金も底をつき伊藤先輩に当座のデート資金を無心する。と、したところで。未返済の十万円の貸し金を矢沢に持つてもゐた、伊藤先輩は俄に点火。テーブル越しに長い手足で小突き始めたのはほんのほんの序の口で、静かに鬼のやうな見幕に恐れをなした矢沢が逃げ出すや、伊藤先輩は完全に阿修羅の形相に豹変。怒号と共に往来に飛び出て矢沢を捕まへると、殴る蹴る投げ飛ばすの大立ち回りを展開する。絶賛それどころではないやうな気もしつつ、伊藤先輩も払つてはゐない代金を茶店の店員(不明)が取りに来た隙に、矢沢はどうにか愛車のアウディ―興味がないゆゑ、それ以上の車種まではシラネ―でその場を離脱。兎も角彼女・マイコ(沢田)と落ち合つた矢沢は、ホテルで一戦交へる。久方振りに目にした大美人・沢田夏子の濡れ場は、全く眼福眼福。ところがところが、矢沢が失業した窮地を告白すると、マイコもポップに態度を一変。無体に矢沢に匙と、「チンコ野郎!」などといふあんまりにストレートな捨て台詞とを投げ捨て、部屋から飛び出して行く。幾ら何でもこれでは、オマージュも通り越し殆どですらないコピーでしかないのだが、すつかり黄昏た風情で公園のブランコに揺られながら、「ゴンドラの唄」をタップリ1コーラス歌ふ矢沢の姿に、小川真実が遠目を注ぐ。矢沢が早急に追ひ出される社宅にひとまづ辿り着くと、玄関の前には小川真実が居た。矢沢は覚えてゐなかつたが、出張中の仙台の居酒屋で知り合つた、人妻・チエコであるとのこと。銀行員の夫との生活に疲れ家出して来たといふチエコと矢沢は、だらしない流れで心中することに。とはいへ死にきれずモタモタしてゐたところへ、矢張りさうはいつても心配したマイコが現れる。当然の如く、矢沢とチエコの関係を誤解したマイコは、実はマイコが貸してゐたアウディを回収し再び矢沢の前から去る。
 林由美香は、死地を求め矢沢とチエコが温泉地に赴いたところ、唐突に裸を見せる目的だけで登場する青姦女。完全無欠の濡れ場要員ぶりが、寧ろ清々しい。知らない名前以前に満足に照明も当てられないため、手も足も出しやうがないが多分登根嘉章が、林由美香お相手の野外男。ホッつき歩くチエコと矢沢を、暗がりの中から清水大敬がバナナを頬張りながら監視する。チエコの夫で銀行員の、ミサキキイチロウであつた。矢沢に接触したミサキは、一億円の報酬と再就職先の斡旋を条件に、チエコ殺害を依頼する。一方、もたつく矢沢の影に夫の存在を看て取つたチエコは、逆に三億でのミサキ殺害を提示する。
 仏の顔が三度目に微笑む穏当なハッピー・エンドまで含め、気弱な主人公がたて続く騒動の渦の中で翻弄される、巻き込まれ式のコメディである。その限りに於いては、ミサキ夫婦の人騒がせな真意に顕著であるやうに全く標準的な出来栄えで、首から上はあまり変らない反面、流石に若々しい小川真実のボリューム感を誇る肢体のほかには、とりたててどうかういふ部分も見当たらない。今作特筆すべきは、過不足ない本筋の他方で、妙にアクティブな序盤の枝葉。光量までガチャガチャな長回しも駆使しての、先にも触れた伊藤先輩大爆発。続いて矢沢が何とか車を走らせ始めたはいいものの、車内にカラスが紛れ込んでゐた、などといふ寝耳に水感が爆裂する大胆なギミックを発端として今度はアウディ大暴走。しかもそこに彼女を送り届けたばかりの自転車男(二人とも不明)を絡めての、逃げても逃げても自転車をアウディが追ひ駆けて来るカー・チェイスには吃驚した。為にする真似事ではなく、普通にちやんとしたカー・チェイスで、逆にいふならば一体何処に精力を傾けてゐるのだかよく判らないといへば判らない。アウディの活躍は更に続き、駄目“元”彼氏から貸した車を奪還したマイコが、猛バックで矢沢を轢くふりをする、といふスリリングな見せ場も披露する。あれこれ思ひ返してもみたのだが、スタントもクラッシュもないとはいへ、ロマンポルノならばまだしも、ピンクで本格的なカー・アクションを観た覚えがない。


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コメント
 
 
 
沢田夏子と言う女優 (竹内です)
2010-10-14 23:31:33
沢田夏子女史は素晴らしいですな。

榎本敏郎監督の映画を最後に姿を見なくなりましたけど、伊藤正治監督の「微熱 MYLOVE」で凄いボディに打ちのめされて、彼女が出る映画はできるだけ観るようになりましたね。松田洋治演じる大学生(爆)とアイドルになった八木沙織のラブ・ストーリーで、彼女は仲を裂くために送り込まれた女の役。当然大学生とベッド・イン。自由が丘武蔵野館の舞台挨拶に行ったけど、沢田姐さん不在(涙)。

それ以後もサトウトシキ監督や瀬々監督の映画に出る彼女を観るたびにスクリーンに手を合わせていました。菩薩様ですね。まあセクシー。小川真実さんも素晴らしかったし、個人的に一番好きな女優さんは佐倉萌姐さんだけど、沢田さんもどうしてどうして、ベッドシーンも情熱的に演じていた。

「本番!!ドスケベ夫婦」もあの窓の絡みが見事でほれぼれしましたよ。まあパワフルでしたね。

あと凄く印象に残っているのが光石富士朗監督の「ザ・本番 性感帯モデル」(エクセス)で、これが実は彼女の初ピンク映画みたいですが、彼女の肌が凄く荒れていて、役(ホテトル嬢だったと記憶している)に凄くあっていた。諏訪太郎さんの初出演作でもあったはずで、エクセスだから再映とかしてくれないかなと期待しているんですが・・・。
 
 
 
>沢田夏子と言う女優 (ドロップアウト@管理人)
2010-10-15 00:22:39
 現在では、なかなかお目にかかる機会に恵まれないんですよね・・・・
 同じくソリッド系の美人としては、長曽我部蓉子さんとかも。

 だからこそ僅かな一期一会を、一発必中で押さへて行きたいものです。
 
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