真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 さて今度は、更にこちらのエントリーの続きといふことで。

 当サイトは小屋でのピンク映画観戦―小屋でしか観ないが―に際して、実質的な意味など欠片もないが、戯れに小屋毎に章立ててゐたりなんかする。正しく気紛れ以外の、何物でもありはしない。閉館に伴ひ2006年の五月に終了した「福岡オークラ死闘篇」と、依然頑強に進行中の「駅前ロマン地獄篇」。下手をすると今年中に第百次の節目も迎へかねない勢ひで俄然展開中の「前田有楽旅情篇」に、随時足を伸ばす「小倉名画座急襲篇」。そして、続く新章「天神シネマ新興篇」が、いよいよスタートした。何気に五つの小屋に跨つての歩みをフと振り返つてみると、我ながら少しだけ壮観でもある。そんなに暇なのか、俺は。あるいは底の抜けた馬鹿か。既述した事柄に関しては改めて蒸し返しても徒に煩雑なばかりなので、今回はシネテリエ天神から模様替へした天神シネマに足を踏み入れてみての、実際の雑感を幾つか並べてみようと思ふ。
 タイミング的には土曜日の夕方、客席は十数席は埋まつてゐた。シネフィルぽい穏当な佇まひの方もあれば、如何にもピンクス臭く一癖二癖ありさうな面々も見られたが、その辺りの実情までは軽く眺めてみただけでは勿論与り知れず、ひとまづ関係ないといふ意味では興味も持ち合はせはしない。特に時間も合はせずに飛び込んで、順番としては「連続暴姦」→「闇のまにまに」→「タマもの」といふ順に観たのだが、最も重要なのはいふまでもなく、プロジェク太上映方式による画質である。「連続暴姦」を一見した瞬時の第一印象としては、確かに駅前よりは若干良いものの、大上段から啖呵を切つてみせるほどのものではない。あくまで、幾分マシといふ程度であらう。但し、後述するが駅前に劣るとも勝らない爆弾を抱へてもゐる。一方これが、「闇のまにまに」に入ると格段に向上する。「闇のまにまに」の上映画質に関しては、駅前のプロジェク太を完全に凌駕してゐる。正しく段違ひで最早“プロジェク太”などといふ、私的な一種の蔑称を使用することも憚られるくらゐである。よしんばフィルム上映ではあつたとしても、中島哲也の「嫌はれ松子の一生」や塩田明彦の「どろろ」のやうに腐れた品質のキネコよりは、余程綺麗に見られる色が出てゐる。映画としての出来は兎も角、「闇のまにまに」を感心しながら通過して「タマもの」に突入すると、残念ながら画質は「連続暴姦」時の期待外れの画質に逆戻りしてしまふ。これはプロジェクター自体のパワーなりスペックは同一である以上、的外れな素人考へであるやも知れぬが元データの問題なのであらうか。挙句ここで先程勿体つけた致命傷を蒸し返すと、「連続暴姦」と「タマもの」に至つては、一度ならず上映といふか要は再生が瞬時とはいへ一時停止したり、音声まで含めノイズが入つたりする。何れもどういふ次第でだか、しかも悪いことにクライマックス近くの大事なところに至つて邪魔が入るので、映画を観る分には結構な妨げとなる。駅前も確かに駅前画質で周囲は何時でもハッテン・パーティーではあつたとて、上映がカクカク停止したりはしない。プロジェク太の調子が悪くあまりにもへべれけで、小屋が流石に木戸銭を下げたことすら過去にはあつたが。未だ一度しか敷居も跨いではをらずあくまでその限りでの話といふ前提の上で、確かに「闇のまにまに」の上映画質は素晴らしいとはいふものの、そもそも肝心のピンクが駄目ならダメぢやね?といふのが、偽らざる率直な感想である。個人的には駅前で戦つて来てもゐる身なので決して首を縦に振つて振られないこともないのだが、世間一般的には、正直これでは厳しくもなからうか。
 私が入場した際の客席は男ばかりであつたが、三本立てが一回りしたタイミングで、男女二名づつ計四名の団体客が現れた。私の座る直ぐ後ろの列に陣取つたので、上映開始前の会話に柿の種をつまみつつ耳を傾けたりもしてみると、男一名が知つた風に曰く、東京には女性客で一杯のピンクの小屋があるとのこと。

 ねえよ、タコ。

 何処に常時女だらけのピンクの小屋があるんだよ、そんなアマゾネスな小屋、実在するなら行つて狩られてみたいところだ、モンティ・パイソンのネタか。たとへば今岡信治をかけるポレポレのことだとでもいふのであれば、それはピンクの小屋ではないし、さういふフィールド乃至は文脈で持ち上げられる類のものばかりがピンク映画ではなからうと、私は強く思ふ。林由美香が真に偉大たる所以は、その“さういふフィールドなり文脈で持ち上げられる類のものばかりではない”地平に於いても、変らずに戦ひ抜いて来たところにこそあるのではないのか。
 最後に、息抜き気取りでひとつ目についた点に触れると、ピンクの小屋にも関らず、上映中人の出入りが殆どないことは実に意外であつた。三本立て合間の休憩時に整然と観客が循環する光景は、妙に新鮮に映つた。上映中の場内も、全く平穏無事。この分なら女の一人客であつても、まづ問題はあるまい。

 付記(11/1)< 直接目撃した訳ではないが、三週目にして早くも、天神シネマの火蓋が切られたらしい。さういふことが俄かには可能なロケーションにも思へなかつたが、ex.シネテリエ天神とはいへ、女の一人客は矢張り考へものであるやうだ。


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