真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「Eカップ本番Ⅱ 豊熟」(1989/製作:バーストブレイン・プロダクツ/配給:新東宝映画/監督:佐藤俊喜/脚本:小林宏一/企画:大橋達夫/プロデューサー:佐藤靖/撮影:下元哲/照明:白石宏明/音楽:ISAO YAMADA/編集:金子編集室/助監督:勝山茂雄/制作:城沢源太郎/演出助手:森田高之/撮影助手:片山浩/照明助手:林信一/メイク:岡本佳代子/スチール:福島佳紀/演出協力:上野俊也/録音:ニューメグロスタジオ/現像:東映化学工業/出演:藤沙月・井上あんり・夢恋次朗・平賀勘一・菊次朗・中根徹)。
 揺れるやうに飛ぶ飛行機模型と、子供の声。やがて風景が団地のものであることが判ると劇伴も起動、“藤沙月IN”のクレジットに続いて藤沙月の名前を冠に戴いたビデオ題がタイトル・イン。屋内プール、の画を何と五十秒弱引つ張つて漸く男が飛び込む、無茶しやがる。泳ぐ男はスイミングクラブのインストラクター・秋山保夫(菊次朗=本多菊次朗)で、クラブに通ふ人妻・室井祐子(藤)が拍手して手を振る。その日はスクールの日でもないのに保夫に会ひに来た、祐子は保夫の部屋に入るや早速セックス。事後、ベッド手前の荷物を抜くカットに何の意味があるのか首を傾げてゐると、その夜。保夫との会話の中ではインポだバカだと散々ないはれやうの祐子の夫・文男(中根)が、電車の中で上着を汚される。ところが裕子はクリーニングに出した替への上着を、保夫の部屋に忘れて来てしまつてゐた。翌日、古い上着を着て文男は出勤。自転車で駅の駐輪場まで、ポケットから定期入れを取り出すと、チャリンと何かが落ちる。結婚前に祐子が住んでゐた、部屋の鍵だつた。文男が鍵を拾ひ上げたところで、バックの高架を爆音鳴らして電車が通過するタイミングが超絶。
 配役残り平賀勘一は文男の会社の先輩で、文男以前に祐子が関係を持つてゐた深谷。文男と顔を合はせる毎に喰つた社内の女の自慢話をするポップな漁色家ぶりが、平勘に馬鹿ハマり。文男が訪ねてみた、祐子のアパートは以前と変らず現存してゐた。井上あんりがその部屋の現住人・江崎紀子で、変名かも知れない夢恋次朗が、紀子が部屋に連れ込む彼氏・桑野順一。忍び込んだ文男が、ベッドの下に潜んでゐるとも知らず。
 佐藤俊喜(現:サトウトシキ)1989年第二作にして、通算でも第二作。公開題のEカップ本番“Ⅱ”とは何事かといふと、「Eカップ本番」(昭和62/監督:渡辺元嗣=渡邊元嗣/脚本:平柳益実/主演:田中みか)が第一作。勿論、主演女優がEカップといふ以外には、二作が一切無関係な便宜すら存在しないナンバリングに関しては、改めるまでもなくいふまでもなからう。何はともあれ、主演女優が浅黒いデブでしかなかつた無印パート1に対し、今の目からすると洗練度の低いルックスは時代の波を超え得ないものの、藤沙月のメリハリの見事に利いた素晴らしい肢体が裸映画的に決定的なアドバンテージ。物語的には当初夫婦仲に隙間もある割に、それなりに安定してゐたかに見えた文男が、祐子が昔住んでゐた部屋の鍵を手に入れただけで何でまた斯くも壊れて行くのか。展開は唐突で、呆気ない破滅もありがちなラストの範疇を逸脱するものではあるまい。とはいへ最終的には井上あんりと嫁の区別さへ失する文男の、ヤバさといふかより直截にはキモさはオフ・ビートはオフ・ビートながら空疎感に裏打ちされた逆説的な血肉が通ひ、何はともあれ、メランコリックなメイン・テーマの威力が絶大。藤沙月目当てのヌキ目的で、アダルトビデオとして今作に触れた諸兄にあられては、よくて釈然としない悪くすればげんなりと棹も萎える様が想像に難くない。そもそも、主役から実は藤沙月ではなく中根徹である、但し小屋にてデカい音で観てゐる分には、奪取した音楽の富に、案外コロッと騙される自信もある。何れにせよ、裸的にも映画的にも、Eカップ本番はⅡの完勝と断言出来る。


コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )


« Eカップ本番/D... 不倫美姉妹 ... »
 
コメント
 
コメントはありません。
コメントを投稿する
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。