真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「奴隷弁護士 乱れたエロスジ」(1997『女弁護士 陵<こます>辱』の2012年旧作改題版/製作:フィルムハウス/提供:Xces Film/監督:坂本太/脚本:有馬仟世/企画:稲山悌二《エクセス・フィルム》/プロデューサー:伍代俊介/撮影:創優和/照明:藤塚正行/助監督:羽生研司/監督助手:加藤義一・古川昌史/撮影助手:大塚雅信/照明助手:高橋理之/ヘアメイク:大塚春江/スチール:本田あきら/製作担当:真弓学/編集:金子尚樹《フィルムクラフト》/録音:シネキャビン/効果:東京スクリーンサービス/現像:東映化学/出演:飛鳥ひとみ・林由美香・葉月螢・杉本まこと・山本清彦・久須美欽一)。撮影の創優和が、各種資料には紀野正人、変名のカミングアウトに当たる。
 “私達弁護士は法の精神を遵守し”云々かんぬんと、何処かで耳目にした気もするが出典に辿り着けないコンプライアンスの能書モノローグを垂れつつ、ノシノシ街を闊歩する飛鳥ひとみのショットに続けて、女弁護士の青山貴子(飛鳥)と、同棲する恋人で主席検事である三上信一(杉本)との情事。飛鳥ひとみは確かに乳も太いが、劣るとも勝らず胴回りもまあ太い。兎も角そこに初めてのものではない、正体不明の久須美欽一から脅迫電話がかゝつて来たところでタイトル・イン。改めて開巻戦を完遂した上で、青山弁護士事務所。郵便物の中から摘み出した、こちらも継続するスクラップ式の怪文書を辟易しながら抽斗に放り込んだ貴子は、米田勲(山本)の訪問を受ける。勲の相談は、レイプされた恋人の弁護。さういふ案件は専門外であると固辞する貴子に勲は食下がり、なほも貴子が思ひ出せずにゐると素性を明かす。二年前、OLであつた勲の姉・織絵(林)は、上司・清水(久須美)に残業中のオフィスで強姦される。事件後弁護を担当した貴子の、容赦はおろか配慮の欠片もないいはゆるセカンドレイプに耐へかね、織絵は自殺してゐた。日傘を手に歩道橋から、織絵が放心状態で流れる車列を眺める。カット変りカメラも百八十度動くと、持ち主を失つた日傘が歩道橋の上に転がる。二つの画を通して、織絵が飛び降りた旨を伝へる手法は酌めるが、それならば無理も承知で贅沢をいへば、そこは車を止めておいて呉れると完璧であつた。勲に関する三上の危惧も噛ませて登場する葉月螢は、勲が金を無心する恋人・浜田智里。智里から金を受け取つた勲の前に、何と清水が現れる。清水は貴子に対する復讐のために、勲に雇はれてゐた。噴出するツッコミ処は強ひて押し殺し、一戦後シャワーを浴びに勲が席を外した隙に、智里を清水が急襲。勲から横流れた金と、憐れな生贄たる智里、英気を養つた清水は弁護士会の人間を偽り三上に接触、言葉巧みにでもなく三上家―青山家かも知れないけれど―に上がり込む事に成功。三上を秒殺で制圧した清水は、貴子の帰宅を待ち受ける。
 前年の「女弁護士 羞恥なぶり」(脚本:佐々木乃武良/主演:水沢えり/2003年に『美人弁護士 発情の悦び』と旧作改題/流石に今からそれを観るのはほぼ不可能か)、翌月の「女弁護士 犯す!」(脚本:佐々木乃武良/主演:葉多朋子/東映ビデオ製作によるVシネ)の間に挟まれた、坂本太の女弁護士三部作の第二弾。因みに、“女弁護士三部作”といふのは本当にたつたナウ思ひついた純然たる与太に過ぎないので、ゆめゆめ真に受けられぬよう。閑話休題、織絵のスーサイドに伴なひ親告罪が成立せず、臭い飯は食はずに済んだといふ次第なのか、それにしても勲が姉の片方の敵の清水を頼るだなどと、一体全体如何なる悪い冗談か―後にこの点については一応、甚だ通り難い苦しい方便が設けられはする―といふ以前に、そもそもの発端の織絵が清水に犯される件。時刻は午後八時だといふ割には、ガラス壁向かうの外光は燦燦と明るい。それとも何か、当時織絵と清水はヘルシンキ支店にでも勤務してゐたのか。鏤められた無造作さを仕上げるだか止めを刺すのは、清水に陵<こま>辱されながら、微動だにせず即座に勲を仲間に引き込み無体な逆襲に転じる、貴子の難攻不落な無敵設定。ある意味威勢はいいともいへるのか、幾ら何でもスティーブン・セガールでもあるまいし、それではドラマが成立しない。勿体ないくらゐに硬質な画作りの中、直截に目方から重量級の飛鳥ひとみの猪突猛進が後には何も残さず通り過ぎるのを、ポカーンと見送るばかり。飛鳥ひとみの強面と体型が心の琴線に触れて触れて仕方のない特殊な御仁にしかお薦めし難い一作ではあるものの、林由美香ファースト・カットの可憐さには、一撃で胸を撃ち抜かれる。


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