真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「秘密桃さぐり」(1989/企画:サン企画/製作:Gプロダクション/配給:大蔵映画/監督:市村譲/脚本:夢野春雄/撮影:立花次郎/撮影助手:倉田昇/照明:沖茂/照明助手:中村登/助監督:浦谷純/編集:酒井正次/スチール撮影:最上義昌/音楽:東京スクリーンサービス/録音:銀座サウンド/効果:サウンドボックス/現像:《株》東映化学/協力:ホテル2001《小岩》/出演:山岸めぐみ・浅野美紀・上原絵美・今井かんな・京舞子・末永稔・黒田武士・手稲のぼる・吉岡圭一郎・松本嘉・高崎隆二)。
 ピンクチラシにタイトル開巻、クレジットを経て、手書き感が爆裂するかなめ探偵事務所の表札。さて室内、これが最初にして最大の衝撃。画面右手は襖、正面と左手はカーテンの一室を真正面中の真正面から抜く画角。家具類は何の拘りも感じさせずに配置され、中央奥に猫を撫で撫で椅子に座つた山岸めぐみを置き、その左前方―画面上は右手前―ではケミカルウォッシュにTシャツをタック・インした末永稔が、椅子に肘をつく格好でだらしなく地べたで雑誌を捲るのを、挙句に逆の意味で完璧に中途半端な距離で捉へる。全てが適当な圧倒的に無造作なショットに、グルッと一周どころかグルグル数周して度肝を抜かれた、バターになるかと思つた。猫のショパン(普通の三毛猫)は可愛がりつついきなり序盤から全速後進でマッタリする中、ベランダにて女探偵の眞美(山岸)と助手の三郎(末永)が致してゐると、かなめ探偵事務所を依頼客が訪れる。役名併記のクレジットに、やれやれ、見慣れぬ俳優部の配役を固定する最大の手間が省けたと胸を撫で下ろしたのも正しく束の間、クレジットでは速見とあるものの、黒田武士が眞美(苗字は要?)に渡した名刺には環境計画事務所の鈴木淳、そんなに情報を攪乱するのが楽しいのか。人を小馬鹿にした効果音とともに、脈略などといふ言葉は知らぬ長い長い回想パート。男女がああだかうだするホテル街での引いた画に、石川恵美のアテレコかと思ひきや何と前名義。鈴木は何もしないとホテルに連れ込んだ部下のまゆみ(上原絵美=石川恵美)を、ふん縛つて犯した末に「首吊つて死ね!」の捨て台詞を投げられ逃げられる。納まりのつかない鈴木は、部屋にあつた情報誌に目をつけホテトルを呼んでみることに。現れたリサ(浅野美紀/但しこの人こそ正真正銘石川恵美のアテレコ)を忘れられず捜して欲しいといふのが、何だかんだで序盤を完全に喰ひ潰す本題。本題といつて、本題といふほどの全うな展開をその後が追ふ訳でも全くないのだが。
 改めて配役残り、高崎隆二はてれんこてれんこリサ捜しを開始した眞美が、繁華街の雑居ビルにてリサの写真を見せ尋ねる、クレジット表記ママでマネジャー。その場でマネジャーにスカウトされた眞美が、探偵稼業も殆どそつちのけでホテトル嬢に華麗なる転身―もうヤケクソ―を果たすといふのがふざけ倒すにもほどがある。a.k.a.吉岡市郎の吉岡圭一郎は眞美の客・橋本、京舞子は橋本が過去に買つた、リサはリサでも天と地の地の方の風俗ギャル。首から下はさうでもないのに、顔だけいやに老けてゐる。松本嘉は―ホテトル嬢としての―眞美に興味を持つ、編集まで手掛けるカメラマンで、今井かんなは眞美について訊かれる同じ店のミキ。要は眞美とカメラマンを繋げば事済むポジションながら、普通に一戦こなす。となると全員脱ぐ女優部が総勢五名、盆暮れに掠らない―公開九月―にも関らず、闇雲だか藪蛇に豪華な布陣ではある。そして手稲のぼるが、リサが目下在籍する店の店長、兼情夫の藤木。
 DMMに残る弾も今作含め残り三本、正直ツッコミ処にすら欠く空虚なルーズさに果てしない徒労感を覚えなくもない、市村譲1989年第七作、因みにこの年全九作。寧ろ、あるいはこの際、平成の初めからこんなことをやつてゐて、この期にピンク映画が命脈を未だに保ててゐることが、実は途轍もないラックなのではあるまいか、とさへ感激しかねないまでに相変わらずグッダグダにグダグダな凡作。あるいは、堆く積もつた下手な鉄砲の大山の奥底、量産型娯楽映画が深い闇の中から繰り出す難解な逆説を玩味すべきなのか。中身のない映画の中身に無理から話を戻すと、本来潤沢な裸要員の頭数は、吉岡圭一郎以外―高崎隆二は濡れ場には与らない―ボロッボロの貧弱な男優部と、兎にも角にもメリハリを欠いた始終の中単なる羅列に堕する形で、まるで有難味を感じさせない。それと怒られるものでも映り込んだ―まさか市村組は前貼をも面倒臭がるのか!?―のか、始終絡みの最中にチョイチョイカットが飛ぶのが絶妙にして確実に居心地が悪い。結局リサには藤木がゐるゆゑ、鈴木の恋路?は叶はずじまひといふ結末自体も大概奮つてゐつつ、そもそも鈴木が中盤以降完全に退場したまゝ名前も出て来ない。何処かしら何かしら長所はないものか、どんな映画にも一箇所くらゐはチャーミングなところがある筈だ。所々で繋ぎを整へる―整へるも散らかるもない点は等閑視―ショパンのショット、御猫様もおとなしく、猫は普通に撮れてゐる。三毛猫好きには堪らない、のかも知れない一作、何だそのピンク映画(´・ω・`)


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