真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「ピンサロ病院2 ノーパン女医」(1998/製作:IIZUMI Production/配給:新東宝映画/監督:北沢幸雄/企画・脚本:福俵満/製作・編集:北沢幸雄/撮影:小山田勝治/照明:渡波洋行/音楽:TAOKA/助監督:堀禎一/監督助手:城定秀夫/撮影助手:岩崎智之/照明助手:原康二・小倉正彦/ヘアメーク:角田みゆき/スチール:佐藤初太郎/衣装:JUNKO/録音:シネキャビン/効果:東京スクリーンサービス/現像:東映化学/出演:倉本梨里・佐々木基子・工藤翔子・麻生みゅう・風間今日子・池田一視・中村和彦・河合純・神戸顕一・サイコ国沢・唐沢邦明・いながきまもる・辛梨玉・灰谷二郎・杉本まこと)。
 走つて逃げる池田一視を、慌しくカメラが追ふ。一旦転び、立ち上がつた流れでタイトル・イン。タイトルはおろかクレジットも走行中の手持ちカメラ同様、ガッチャガチャに動き倒し最早満足な判読もまゝならないのは、もしかすると北沢幸雄は荒木太郎よりも馬鹿なのか?と軽く呆れ返る。といふかそもそも荒木太郎の師匠筋に当たる北沢幸雄が、いはゆる荒木調の上だか下を行つてゐたとしても、別に不思議でも何でもないのかも知れないけれど。
 赤い帽子と銀色のジャンパーの二人組にトッ捕まつた澄野渉(池田)は、何だかフワンフワン宇宙船みたいなSE流れる星光病院に連行される。拘束された澄野の前に現れたのは女医の皆元育子(倉本)以下、婦長の息間繰子(イキまくり子といふ寸法か/佐々木基子)と看護婦の大貫倫代(工藤)。おもむろに白衣を脱いだ育子は黒の下着姿で澄野を手コキ、当然目を丸くする澄野の凝視に育子が羞恥を覚えるや、軽く地震的な現象が起こる。院内でのパンティの着用は禁じられてゐる―育子もガーターのみのノーパン―といふ倫代に誘(いざな)はれ、澄野は看護婦の愛多共子(麻生)が佐伯権造(中村)に跨りそれを院長の大洞仙人(杉本)が大燥ぎしながら見守る、これまた素頓狂な一室に。二人が事を完遂、クルクル回りだした装置に狂喜した大洞は、未だ自らが置かれた状況を全く理解しない澄野に荒唐無稽な話を語る。情報統制により噂と片付けられてゐる、地球に衝突し粉砕させる怪彗星。一方、育子が発見者にして最強の使ひ手の、“性的快感と同時に人間に顕れる一種の念力”とのセックス・サイコキネシス。セックス・サイコキネシスで彗星の軌道を変へる作戦が遂行中で、そのために育子にとつて最高のパートナーたる資質の保持者として選ばれたのが、澄野であるといふのだ。リストラ後やくざな道に身を落とし、あれもこれも拗らせた澄野は、大洞が持ち出した大義を一笑に付す。
 配役残り風間今日子・河合純・神戸顕一は、後述する予行演習と本番とに加はるBもゐないのに看護婦Aと、男AとB。河合純は倫代担当で、風間今日子と神戸顕一のペア。河合純と神戸顕一はさて措き、豪華五本柱の一角かつ全盛期の爆乳を爆裂させる風間今日子に、役名がつかない不遇なり不憫には躓かなくないでもない。サイコ国沢から灰谷二郎までは―澄野を捕獲する二人組と―その他院内要員、一件落着後車椅子に乗る国沢実しか確認能はず。ところで、佐々木基子がナース帽の下はフュリオサばりの短髪なのは、同日に封切られた「不浄下半身 尼寺の情事2」に於いて実際に剃髪した名残か。
 北沢幸雄1998年最終第七作にして翌年の正月映画は、第一作「ピンサロ病院 ノーパン白衣」(1997/監督:的場ちせ=浜野佐知/企画・脚本:福俵満/主演:麻生みゅう)から全四作製作されたピンサロ病院シリーズの第二弾。改めて整理すると、1998年正月映画のノーパン白衣と1999年正月映画の2に続き、2001年正月映画の「ピンサロ病院3 ノーパン診察室」(2000/監督:渡邊元嗣/脚本:中野貴雄/主演:黒田詩織)、同年お盆映画の「ピンサロ病院4 ノーパン看護」(2001/監督:的場ちせ=浜野佐知/脚本:山邦紀/主演:望月ねね)と連なる。3には参加してゐない風間今日子が、惜しくも全作制覇を逃す。
 人類滅亡のクライシスに、皆でセックスして立ち向かふ。そこだけ聞くと前後を浜野佐知に挟まれて、ナベはまだしも北沢幸雄までもがファンタ路線に走つたのか。とでも驚くか草を生やしかねないところが、これが改めて見てみると結構以上に素晴らしい。何はともあれ、始終の推移に釣瓶打たれる絡みが必要不可欠な展開が清々しい。大洞はビリング神戸顕一までを一室に集め、セックス・サイコキネシスの予行演習と称した集団プレイ。あくまで乱交はせず、ここでは育子は一人オナニーするに止(とど)まり、未だプロジェクトに賛同を表明してゐない澄野は拘束衣で身動きを封じられ見てるだけ、因みに婦長のお相手は院長。その一幕の火蓋を切る、「いいかみんな、これからこの部屋はピンサロと化す!」なる大洞のシャウトは正しくピンサロ病院といふに相応しい天晴な名台詞。他方、セックス・サイコキネシスで彗星を地球から逸らす任務と恋の狭間で揺れ動きつつ、澄野に一途な想ひを寄せる育子は、澄野が参戦に際し要求した、一千万の報酬に胸を痛める。二度に亘り澄野に寄こされる小切手が、何れも破り捨てられる件は特に一度目がストレートに胸を打つ名場面。クライマックスは残りの一同は予行演習と同じ部屋と、育子と澄野は別室にて、兎も角セクロスセクロス。カウントダウン残り十秒で劇伴が止まり、物語上のピークと、育子と澄野が達する絶頂とが素直に連動した瞬間、嗚呼いい濡れ場を見たと心から感動した。世を拗ねた澄野が正方向の生きる目標を得るに至るラストも、重ねて感動的。序盤は底の抜けた裸映画に見せて、中盤起動した芯のあるエモーションを、見事堂々と撃ち抜いてみせた。考へてみれば脚本は福俵満によるものである訳だから、要は北沢幸雄は与へられた御題を、綺麗に形にした格好か。これから見るナベの3を吟味した上でないと確かなことはいへないが、ピンサロ病院最高傑作と評するに足る一作。嗚呼いい濡れ場を見た、さういふ体験は、ありさうで滅多にない。

 追記< 3も見た、2の優勝。


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