真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「いんらん千一夜 恍惚のよがり」(2011/製作:Blue Forest Film/提供:オーピー映画/監督:竹洞哲也/脚本:小松公典・山口大輔/撮影:中尾正人/編集:有馬潜/助監督:櫻井信太郎/監督助手:永岡俊幸/撮影助手:坂元啓二・俵謙太/協力:L.S.C・Sunset Village/出演:春野さくら・しじみ・ほたる・久保田泰也・藤本栄孝・岩谷健司)。
 通常のオーピー映画カンパニー・ロゴに続き、“製作 Blue Forest Film”は、ラブホテルのテレビ画面に映り込む。地元東京で就職を決めた風見由真(春野)と、千葉の大学に進学する依田和雄(久保田)のお泊り。処女といふ訳ではあるまいが、由真の初めてで拙い口唇性交から、舞台は何処ぞの路肩に停められたワン・ボックスの車内に飛ぶ。見るからに訳ありな風情の中年男女、助手席から渡部千秋(ほたる)が、野地一平(岩谷)の股間に顔を埋める。一方こちらは、おにぎり屋のアルバイト店員・相楽晴海(しじみ)の部屋。春海も、同棲する三文役者・上野丈(藤本)のモノを咥へてゐる。だといふのに、丈が出演予定の「ごすろり博徒」台本に目を落としてゐることに腹を立てた春海が放り捨てた台本の、裏表紙に「いんらん千一夜 恍惚のよがり」。洒落たタイトル・インまで含め、そこそこ気の利いた開巻に映画的には納得しかけるが、三本尺八を連結させておいて、ひとつも痒いところに舌を届かせないのは如何なものか。適宜タイミングを捕まへ、カメラはラブホと部屋と車内をランダムに往き来する。ああでもないかうでもないと仲良く喧嘩しながらも、楽しげな夜を過ごす由真と和雄に対し、二つ年上の丈との交際は、おにぎり屋でのバイト暦とほぼ同じでかれこれ七年。歳も二十七になる春海は、さし迫るあれやこれやの世知辛さと、人の気も知らず呑気で身勝手な丈とに苛立つ。一方、千秋と野地は更にその先だか極北を行き、時折互ひに携帯に目を落とすなり野地は煙草を吸ふだけで、二人の間には無言の時間が流れてゐた。
 今のところ順調な将来を控へた、未だ若い由真と和雄。ありがちな焦燥にぼちぼち人生を詰まれつつもある、そろそろ若くはない晴海と丈。煮詰まつた関係に言葉を失ふ、とうに若さを通り過ぎた千秋と野地。三組の、位相を異にするカップルの模様が同時並行方式で綴られる構成はパッと見、小松公典変名の近藤力脚本による、加藤義一の「痴漢電車 夢指で尻めぐり」(2010/主演:かすみ果穂)も容易に想起させやうか。尤も、輪唱にも似た凝つた形式で、プリミティブなエモーションを追求した「夢指で尻めぐり」を引き合ひに出すまでもなく、今回竹洞哲也2011年第三作の仕上がりは然程どころでもなく強固ではない。三つの現場が特段交錯することもなければその結果物語世界の深化なり醸成が図られることもなく、要は都合のいいところで切り貼りしたものを、六十分分適当に繋げてみたさあ御座い、といふに止まる印象は強い。オーラスに至つて出し抜けに持ち出される、“いづれ”とかいふキー・ワードに関しても、薮から木に竹を接ぐ程度の強度しか感じられない。濡れ場に際しては、後ろ二組は微妙な頃合でもあるのと、そもそも千秋と野地は狭い車中から動けないゆゑ、結果的に由真と和雄が徒な手数を重ねるほかないことは、裸映画的にはどうしても平板を回避出来ず苦しい。三組全ての登場人物が、基本終始屋内に留まることが禍(わざはひ)してか、決定力のあるショットに欠いたことも、展開と画が共倒れては矢張り響かぬ筈がなからう。一点激しく疑問に思へたのは、そこかしこでそれなりに重きを置いた小道具として使用するつもりであるならば、客層に年寄りが多く含まれる点も踏まへるとなほさら当然、チラッとしか見せない携帯メールの液晶画面は、もつと入念過ぎるほどに押さへておいて欲しかつたところではある。と、頼みなどするものか、娯楽映画を舐めてんのか。ここで、不躾に筆を荒げたことには、正当性を主張するつもりも元よりない理由がある。晴海への感情移入も勿論込みで、丈の自堕落さがポップに腹立たしい以前に、臆面もない感情論を振り回すが、チャラい久保田泰也の無様さには虫唾が走る。竹洞組は、このやうなものが商業映画の水準たり得てゐると本当に考へてゐるのか、どうしても解せない。開巻から即座に閉ざされた、小生の意固地な天岩戸が終に開かれることもないままに、唯一の見所はといへば、「超いんらん やればやるほどいい気持ち」(2008/監督:池島ゆたか/脚本:後藤大輔/主演:日高ゆりあ・牧村耕次)に於ける青山えりな(ex.涼樹れん)の大熱演も髣髴とさせる、晴海のリアルな感情を爆発させるしじみ(ex.持田茜)の姿ばかりか。積極的な意匠にも関らず、意欲作とまでいふほどの質感は感じさせない、総じては心許ない一作である。

 もう一つ忘れてた、和雄と由真が、エロ写メを撮る撮らせないで戯れ合ふ件。映像に同調させて音声もスローモーションにしてみせた演出は、不意を突かれ新鮮に映じた。


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