真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「色情坊主の後家くずし」(2004『後家・後妻 生しやぶ名器めぐり』の2007年旧作改題版/制作:セメントマッチ/提供:オーピー映画/監督:森山茂雄/脚本:佐野和宏/原題:『三千世界の烏を殺し 坊主と添ひ寝がしてみたい』/プロデューサー:池島ゆたか/撮影:長谷川卓也/編集:酒井正次/音楽:大場一魅/助監督:伊藤一平/監督助手:中沢匡樹・松丸善三/撮影助手:斉藤和弘・大城真輔/録音:シネキャビン/スチール:津田一郎/現像:東映ラボテック/ネガ編集:フィルムクラフト/協力:Gullwing.inc・digital gizmo・長谷川九仁広・宇佐美忠則・スナックちよ/出演:神島美緒・佐々木麻由子・水原香菜恵・神戸顕一・松丸善三・フク三郎・佐野和宏)。出演者中フク三郎は、本篇クレジットのみ。
 後家といふと手を出す生臭坊主・武田鎮源(佐野)が、けふもけふとて少々頭のネジの緩んだ若後家・神谷百合子(神島)に、あれやこれやと理屈にもならぬ方便で手をつける。オッパイも煩悩、イチモツも煩悩。挙句「和尚様の煩悩硬あい☆」と来た日には、『歎異抄』まで持ち出しておいて、麗しいとすら最早いへる振り抜かれた馬鹿馬鹿しさである。鎮源の弟と、教会での挙式当日に交通事故で死に別れ悲嘆に暮れてゐたところを、前妻とはこちらも死別した鎮源に手篭めにされそのまゝ結婚した本妻・美子(佐々木)は、そんな鎮源に終に堪忍袋の尾を切らす。二号の、カラオケスナック「ちよ」のママ・宗形ちよ(水原香菜恵/因みに公開は、今作の方が半年早い)と、ついでに百合子も仲間に引き込んだ美子は、鎮源殺害計画を練る。成年コミックを経本に偽装し歩き読む松丸善三は、憚りもせず下根を自称する修行僧・鎮念。
 とかいふ次第で、特異体質(?)と異常な強運とに頓挫しつつ、「大怪獣決闘 ガメラ対バルゴン」(昭和41)よろしく矢継ぎ早に展開される鎮源殲滅作戦が、今作の白眉。最初は美子がネットで仕入れた心臓発作を催させる毒―神経毒の類か?―を、ちよの旦那の回忌にビフテキに混ぜ喰はせるも、何故か鎮源には強精剤として作用するばかりで失敗。おかしいなと、一舐めしてみたちよが泡を吹いて卒倒する件を差し挿む辺りは手堅い。続いては、意外な特技を持つ百合子に、鎮源の原チャリのブレーキに細工させる。ものの、首尾よくコース・アウトして山肌に突つ込んだ鎮源ではあつたが、何とそこで埋蔵金を発見し一躍時の人に、何て大胆なオチなんだ。最後はその点スケール・ダウンしてしまひ、ちよに熱を上げる「ちよ」常連の馬渡(神戸)に、割に合はない色仕掛けで直線的な鎮源刺殺を仕向ける。三年後のワイセツ和尚シリーズ第二作と観比べてみると、鎮源のビート感もポップ性も未だ発展途上で、全般的な垢抜けなさも残すが、濡れ場の彩りも鮮やかに概ね愉快に観させる娯楽ピンク高目の水準作である。ラジオならば放送事故寸前の、百合子の間の抜け具合を強調したギャグは、演出なのか、神島美緒の素を弄らずに利したものなのかよく判らない。
 順番は前後しながらも二作を通して観てみると、三年の歳月を経ても、今作と次作が完全に連続した物語である旨がよく判る。次作開巻の鎮源と百合子の―キネコ処理された―絡みは今作締めの濡れ場で、鎮念のショットも、今作ラストからの流用である。さうなると、鎮念の扱ひの無常さが、冷たい北風に混じり殊更身に染みる。

 エンド・クレジットも通過してオーラスは、「三千世界の烏を殺し 坊主と添ひ寝がしてみたい」と締め括られる、原題らしい。出演者中フク三郎に関しては、残念ながら特定不能。ほかに画面中見切れるのは、若干名の「ちよ」客と、遺影としてのみ抜かれる百合子亡夫。一昔前、エクセス未亡人もので亡き夫の遺影といへば、何故か高田宝重がヘビー・ローテーションの時期があつた。
 昨年十一月公開の最新作は勿論未見の上で、漸く第八作までをコンプした森山茂雄の私選ベストは、不器用なエモーションを慎ましやかに撃ち抜く前作である。


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