真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「熟妻の性 蠢く不倫痴態」(1996『人妻の性 淫乱下半身』の2007年旧作改題版/製作:IIZUMI Production/提供:Xces Film/脚本・監督:北沢幸雄/企画:稲山悌二《エクセスフィルム》・業沖球太/製作:北沢幸雄/撮影:小西泰正/照明:渡波洋雪/音楽:TAOKA/編集:北沢幸雄/助監督:瀧島弘義/監督助手:片山圭太/撮影助手:鏡早智・畠山徹/照明助手:那雲サイジ/ネガ編集:酒井正次/効果:東京スクリーンサービス/協力:吉行由美、他男女各一名/出演:水奈りか・桃井桜子・青井みずき・佐々木恭輔・田嶋謙一・山本清彦・神戸顕一)。照明の渡波洋雪は、洋行の誤記ではなく本篇クレジットから洋雪。
 松井ゆかり(水奈)と岡本貴子(桃井)と浅田佐織(青井)、各々宅での仲良し主婦三人組顔見せのテレフォンセックスから、ゆかりが派手に悶え始めたところでタイトル・イン。
 明けて三人の接点を成すヨガ教室、ここで協力勢から吉行由美(現:吉行由実)が講師で、妙齢の女と初老の男の他男女各一名も、その他生徒要員。貴子がゆかりと佐織を誘ふ形で始めた2ショットダイヤルのアルバイトは、三人で月五十万近くを荒稼ぐ活況を呈してゐた。反面、ゆかりは車のセールスマンの夫・秀夫(佐々木)のセックスの弱さに。佐織は長距離トラック運転手の夫・健二(山本清彦/a.k.a.やまきよ/神戸軍団所属)の、劇中描写をみるに三こすり半すら持ち堪へられぬ超早漏に。貴子も貴子で開業医の夫・修平(田嶋)との間に、詳細に関しては奥歯に物を頑強に挟み続ける、兎に角三本柱は三者三様の夫婦生活の悩みを抱へてゐた。そんな中、ゆかりは日々抱へる欲求不満にも背中を押され、電話越しにはキムタクを騙つてみせる神戸顕一と火遊び。ところがその模様を当然知らない内に、遠巻きに居合はせた貴子に写真に捉へられてしまふ。秀夫から購入したばかりの車が故障し、二十八万円の修理代が発生してゐたこともあり、岡本夫妻は大胆な一計を案じる。休日か、昼下がりを秀夫とのんびり過ごすさおりを貴子が呼び出した上で、写真を出汁に拘束。修平は秀夫に、細君を返して欲しくば身代金二十八万を要求する電話を叩き込み、風雲は藪から棒に急を告げる。
 大きく盛り上がつたお椀型のオッパイには張り物臭さも拭ひ難いが、緊張感を伴なふ丸みを帯びた腰から尻にかけてのラインが絶品な、水奈りかのフォトジェニックなプロポーションは銀幕の大きさに一際映える。左右に従へるはムチムチとし且つ陽性の色気が何時観ても抜群の安定感を誇る桃井桜子と、キュートなトランジスター・グラマー青井みずき(a.k.a.相沢知美)。受ける男優部に僅かな穴も無く、裸映画としての布陣は鉄板。警察に相談したところで御近所同士の悪ふざけと取り合つては貰へず、頭を抱へる秀夫に接触した貴子は、大開放のセックス・アピールと共にまさかのクロスカウンター・キッドナップを提示。佐々木恭輔手持ちのメソッドで上手いこと目を白黒させる秀夫と貴子の前に、何も知らない佐織がアイスを食べ食べキョトンと通りがかるカットは完璧。三組の夫婦が誘拐の連鎖で繋がる構成までは、虚構的なチン騒動を抜群に面白く観させたのだが。貴子と修平のネタ的に容易な他愛もない事情を、オチ扱ひで不自然に引張ることは展開上痒いところに手を届かせないもどかしさを生じ、何より、最終的には正体不明の段取りで健二の早漏が治る、だけといふのが娯楽映画の落とし処としては致命的に弱い。百歩譲つてさおりはまだしも、これでは貴子と修平の置かれた境遇は半歩たりとも前に進んではをらず、物語が満足な着地を果たさう筈もない。女の裸は十二分に愉しませるところまで含めて、良くも悪くも六十分の尺が経過すればお話が畳めてゐやうがゐまいが自動的に終了する、実にピンク映画らしい一作といへば、いつていへなくもない。


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