真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「異常に燃える女」(1990/製作:小川企画プロダクション/配給:大蔵映画/監督:小川和久/脚本:池袋高介/撮影:大沢祐介/照明:内田清/音楽:OK企画/編集:金子編集室/助監督:石崎雅幸/監督助手:浜本正機/撮影助手:岸本勝則/照明助手:佐野良介/録音:ニューメグロスタジオ/効果:協立音響/現像:東映化学/出演:水鳥川彩・白戸好美・風間ひとみ・工藤正人・山科薫・浜本万造・野上正義)。 フォーマルではないが一応黒い服の水鳥川彩が墓参、カメラがパンすると、デカいグラサンで煙草を吹かす工藤正人。水鳥川彩は何かを破り捨て工藤正人の下に歩み寄ると、真山とは完全に縁を切つた旨を告げる。水鳥川彩が捨てた、ポラロイドのいはゆるハメ撮り写真を抜いてタイトル・イン。近年オーピーでは見られないオープニング・クレジットに乗せて、美也子(水鳥川)の回想に突入する。卒業式を間近に控へた高三の冬、美也子は真山(野上)と出会ふ。無粋をいふと、卒業式直前となると二月の真冬に咲きはしない花に立ち止まり目を留める美也子に近づいた真山曰く、「綺麗だね、君は花が好きですか」、英語の教科書みたいな会話だ。ロスト・バージンを焦る美也子は三万円で純潔を真山に安売り、ホテルを出た後単身赴任中といふ真山宅まで転がり込む。美也子が工藤正人と適当に移動する劇中現在時制を適宜差し挟みつつ、恋愛感情はないままに、長けた真山の性戯に美也子が溺れて行く過程が描かれ、続ける。
 その他配役、卒業後美也子は進学することはなく、比較的時間も自由なコンパニオンに就職、山科薫は、真山と会へない時に男を漁る美也子と、手短に一戦交へるテレクラ男。ほかに登場人物も見当たらないゆゑ、恐らくはセカンド助監督の浜本正機と同一人物と思しき浜本万造が、山科薫登場の直前にワン・カット見切れるナンパ男か。白戸好美は、ある日美也子が真山を訪ねたところ、事の真最中であつた女、真山は一欠片たりとて悪びれることもなく巴戦に突入にする。「その頃ね、貴方に初めて会つたのは」、工藤正人は、美也子が真山に連れられたスナック「摩天楼」(大絶賛仮称)で働くアルバイトのバーテン・若松ヤスオ。風間ひとみが「摩天楼」のママで、実は合意の上での円満別居する真山妻。真山は初めから、美也子に嘘をついてゐたのだ。
 主演が水鳥川彩といふ理由だけで適当に選んでみた、和久名義の小川欽也1990年全十一作中第七作、薔薇族入れると十二の八。堅気であることは堅気であるのだが熟練の色事師に開花された一人の女が辿る、些か飛躍の大きな結末に至るまでの過程。よくよく見ると、タイトルの最短距離感が渋い。物語らしい物語が特にある訳でもなく、ひたすらに濡れ場濡れ場を連ねるに終始する誠鮮やかな裸映画。といふ評価も確かに間違ひではなからうが、案外緻密に計算された白戸好美・風間ひとみ・工藤正人の投入を機に美也子の心境の変化を丁寧に紡ぐ展開は、地味に実に見応へがある。二番手・三番手とも裸見せは一度きりに止(とど)め、多少筋張つた辺りがまた堪らない水鳥川彩の美しい肢体を目一杯魅せきることに徹した戦略も秀逸に、意外と素面の映画的にも充実した丹精な一作。出来はさて措いた表面的な作りが今と然程違はないので一見気付きにくいが、もう凡そ二昔前の映画であることにフと驚かされる。

 エンド・マークが被さる脱ぎ散らかされた衣服が、絶妙に何かの形に見えなくもないもののどうにも答へが出ないのは、多分考へ過ぎに違ひあるまい。


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