真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「新妻の朝濡れ下半身」(1992『若奥様の生下着 濡れつぱなし』の1999年旧作改題版/製作:プロダクション鷹/提供:Xces Film/脚本・監督:珠瑠美/撮影:伊東英男/照明:隅田裕行/音楽:新映像音楽/美術:衣恭介/編集:井上編集室/現像:東映化学/録音:ニューメグロスタジオ/出演:秋川典子・浅間夕子・仙城かなえ・杉本まこと・野沢明宏・十辺伸)。出演者中、十辺伸がポスターには十坂伸。少し遠ざかりつつ、どうしても惜しい。それと照明の隅田裕行といふのも、当方の誤字ではない。
 日本庭園に響く嬌声、縁側から演者の顔も満足に見せることなく股間に高速ズームが寄りタイトル・イン、ある意味斬新な開巻ではある。死去した父親が先代社長の飛翔機器に勤務する宮尾正男(杉本)は、元スチュワーデスであつた過去には感動的に特に意味はない妻・佐知子(秋川)に、叔父か伯父の現社長らとの接待ゴルフに朝から御頭つきの豪勢な朝食で送り出されておいて、実際は愛人・トシコ(浅間)との逢瀬。トシコと結婚させた部下の辻野(十辺)は首尾よく関西に出張させた上で、正男はコッテリとトシコを抱いた更に上で、家に帰ると夜は夜で夫婦生活も欠かさない。正男は底の抜けた性豪であつた、底の抜けた映画の主人公に相応しいといへば相応しい。
 配役残り野沢明宏は、正男悪事の懐刀・滝田か瀧田。内緒の会社の転がし株の利鞘と、注文された媚薬と催眠薬とを届けに堂々と社内に現れる。仙城かなえは正男が見初める、新入社員の社長秘書。
 先日再見した「ど淫乱!!熟妻倶楽部 『あぁ~ン、たまンナイ…』」(1996/監督:川村真一/脚本:藤本邦郎)で見せたパキパキッとした表情作りが印象深い、秋川典子目当てで選んだ珠瑠美1992年第一作。してみたところが、若奥様が下手にお上品な造形で、加へて髪型もモッサリした秋川典子が全然パッとしないのは残念。四年といふ歳月がその分若いといふよりは、単に未完成といふ方向にしか作用してゐない。当然珠瑠美と川村真一を比較した場合の演出上の下駄の低さも看過し難く、どうも女優目当てで映画を踏んでみると上手く行かない。女優部では奔放にセックスを楽しむトシコ役の浅間夕子が最も輝き、秋川典子と微妙に被らなくもない矢張り男顔美人の仙城かなえはそこそこ以上の逸材ながら、おとなしく三番手のポジションに止(とど)まる。結局辻野とは別れ、外国人の再婚相手と日本を離れるといふトシコを、何と正男は自宅に招く。そのまま眠剤で眠らせておいた佐知子を交へた、要は主演―の筈の―女優を蔑ろにする巴戦が締めの濡れ場だなどといふのは、一体珠瑠美は自作のビリングを如何に解してゐるのかと問ひ詰めたくもならうところだ。物語といふほどの物語なんぞ端から存在しないことは今更いふまでもないとして、化物じみた性欲の持ち主である正男がただひたすらにヤッてヤッてヤリ倒すに終始する、潔いとでもしか評しやうのない一作。女房を滝田に明け渡すは薬で眠らせた叔父貴の秘書は手篭めにするはと、滝田に片棒担がせた経済犯罪以外にも悪行三昧の正男が、報ひのムの字すら受けるでなくただ一筋にヤッてヤッてヤリ倒す始終は如何にも珠瑠美らしい、流石に幾ら裸映画といへどあんまりな無造作さではあるものの、三本柱の粒は揃つてゐるだけに、割り切るなり観念して接する分にはそれなりに楽しめる、諦めないといけないのか。


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