真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「痴漢トラック 淫女乗りつぱなし」(2000/製作:関根プロダクション/配給:大蔵映画/監督:関根和美/脚本:関根和美・小松公典/原題:『デコトラ漫遊記』/協力アートトラック:弘宝丸・M&M・一栄丸/アートトラック・コーディネート:グループ一番星 須賀良/撮影:柳田友貴/照明:野口素胖/助監督:寺嶋亮/音楽:どばと/編集:フィルムクラフト/録音:シネキャビン/撮影助手:松島秀征/監督助手:林真由美/スチール:大崎正浩/現像:東映化学/効果:東京スクリーンサービス/タイトル:ハセガワタイトル/出演:池谷早苗・永森シーナ・佐々木基子・町田政則・上野太・やまきよ・須賀良・幸英二・須藤為五郎・戸田新太郎・小林操/友情出演:川西弘文・川村誠・磯田晶和・川村昌之・竹野久裕・西村昭彦・小川貴洋・後藤康志・斎藤雅哉・中村拓・西澤誠司・若葉要)。同年関根和美必殺のマスターピース、「淫行タクシー ひわいな女たち」の微妙な姉妹作である。
 考へてみると、タイトルの類似。同時期に製作されてゐる以上当然の如く、スタッフ・キャストの一部重複。中でも佐々木基子のトルコ嬢と町田政則のドライバーが出て来る点は決定的かと思ひつつも、実際の物語は「淫行タクシー ひわいな女たち」とは全く何の関連もない上、今作は三年後に第二作が製作されるシリーズの第一作でもある。一応姉妹作とはいへど、微妙といふ所以である。
 一仕事終へ帰つて来たトラック運転手の団勝馬(町田)はその足で、五年通ひ詰めてゐるトルコ嬢・スミレ(佐々木)の下へと向かふ。競馬狂で常時金欠の勝馬は、スミレに借金の申し出を切り出す。それを、遂に勝馬が自分に求婚して呉れたものかとスミレは勘違ひする。二人の芸達者による掛け合ひだけに安定感は抜群だが、実際のシークエンスは、のんべんだらりする限りの化石コメディではある。そんなものを観てゐて、どうしてこんなにも穏やかな気持ちになれてしまふのだらう。最早己の映画の観方が、正しいのか間違つてゐるのだか我ながらよく判らない。間違つてゐたとて、元より構ひはしないが。さうかうしてゐるところに、舎弟の加茂利一(上野)から急な仕事の連絡が入る。夜はすつかり更けてはゐたが、手間賃は倍、とかいふ条件に勝馬は俄然ヤル気を起こす。途中、勝馬は通ひの定食屋に立ち寄る。何時の間にか、夜が明けてゐたりもする気軽な自堕落さは気にするな。偶々上京し店を手伝つてゐた、店のマスター(幸)の姪・陣内舞子(池谷)に勝馬はすつかり一目惚れする。御自慢のデコトラを伊豆へと走らせる勝馬の運転席に、荷台からコール・サインが入る。不審に思つた勝馬が車を止め荷台を開けてみると、中から尿意を催した派手派手しい女・安西麗子(永森)が飛び出して来た。正確に何とは聞かされてゐなかつた積荷とは、何と麗子であつた。慌てた勝馬は利一に連絡を入れる、さうしたところが、利一はヤバいことになつてゐた。麗子は黒龍会の組長・戸川(須賀)の情婦で、要は伊豆で利一の身柄を押さへた戸川が、勝馬に運ばせる麗子を待つてゐたのだ、勝馬は急いでデコトラを走らせる。
 かうしてみると、ピンク版「トラック野郎」といふよりは、今となつてはピンク版「トランスポーター」といつた感が強い。無論、関根和美だけでは兎も角脚本を小松公典も共同で書いてゐる分、最終的には「トランスポーター」よりも余程お話はしつかりしてゐる。といふか、ここから先は完全にして純然たる素人の邪推でしかないが、この映画思ふに勝馬が積荷を運ぶ本筋と勝馬とスミレとの絡みを小松公典が書いてゐて、舞子周りの切れるものなら切つたところで支障はさしてないコメディ部分は関根和美の仕業、とでもいつた寸法なのではなからうか。
 配役残りやまきよは、ヤクザが全国的に展開した麻薬の取引にトラック運転手が加担してゐるのではないかと踏み、勝馬を尋問する刑事の桜木譲司、中村拓が桜木部下。カメオ含めその他大勢は、定食屋のその客要員に、黒龍会の皆さん。更には舞子が食べた高価な食事の伝票を、勝馬に突きつける料理店店主。ところで戸川の決め台詞其の一:「携帯電話の長話は高くつく」、其の二が「知らねえ方が身のためだ」。
 実も蓋もない言ひ方をぬけぬけとしてみせると、丸々不要な舞子周りの枝葉と、唐突にもほどがある勝馬の妄想と白昼夢と実際に寝てゐる間の夢、の挿入の仕方が滅茶苦茶な辺りが全体の評価を数段落としてしまふが、メインのお話はしつかりしてゐる上、しんみりした人情ドラマと喜劇のバランスも実に良い。惜しいところで何時もの関根和美映画扱ひされるのも致し方ない、残念な一作であるやうにも思へる。
  因みに、三年後に製作された第二作とは、「馬を愛した牧場娘」(2003/監督:関根和美/脚本:関根和美・小松公典)。勝馬は出て来るが、利一もスミレも出て来ない。佐々木基子のポジションには、トルコではなく馴染みのホテトル嬢・花として酒井あずさが座つてゐる。

 永森シーナに関する補足< 麗子役の永森シーナ、恐らく現在ではもう、活動してはゐないものと思はれる。あんまり当てにはならないjmdbのデータにも、ちやうど「痴漢トラック」以降記載がない。体の方はピンク女優随一、といつても過言ではなからうと思へるくらゐに、本当に綺麗な体をしてゐる。体は本当に綺麗なのだが、残念ながら、首から上はこれまた見事なまでに三日月型に湾曲してゐる。そんな―どんなだ―永森シーナの、デコトラ運転席の勝馬と助手席の麗子が会話するのを、真正面から捉へたカット。本当にジャストな真正面中の真正面から撮つて、なほかつ少しうつむかせると、絶妙に顎部の歪みが―あくまで―画面上補正され、永森シーナが普通の美人に見える、といふ奇跡の映像革命を今回“大先生”柳田友貴がやつてのけてゐる。恐らく狙つて押さへた訳ではなく、偶然の産物であらうかとは思ふが。


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