真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「バツイチ熟女の性欲 ~三十路は後ろ好き~」(2008/製作:ナベシネマ/提供:オーピー映画/監督:渡邊元嗣/脚本:山崎浩治/撮影:飯岡聖英/照明:小川満/編集:酒井正次/助監督:永井卓爾/撮影助手:海津真也/照明助手:八木徹/応援:広瀬寛巳・大西裕/効果:梅沢身知子/協賛:ウィズ・コレクション/出演:真田ゆかり・藍山みなみ・岡本優希・新納敏正・真田幹也/SPECIAL THANKS:夏井亜美)。
 浜辺と―これ路面か?―電車が走る風景を抜いて、アート・ギャラリー社長の川島静香(真田ゆかり)が、部下の―苗字は終に呼称されないゆゑ不明―真一(真田幹也)と新たな個展の打ち合はせをしながら歩く。タイトル・イン明け、静香は真一を伴ひ帰宅。五年前に離婚した静香と、真一は男女の仲にもあり、一人娘の帰宅を危惧する素振りをみせつつも、長々とした初戦を披露。ここが些か、時間が飛んでしまつてゐるやうに見えなくもないのだが、昼下がりの情事から何時の間にかトップリと日も暮れた事後、ウィズ魂が迸るランジェリー姿の静香は、家内に見知らぬ伊達男が闖入してゐることに驚く。それは編集者である娘・真希(藍山)が缶詰状態のホテルから招いた、恋愛小説家の後藤幸平(新納)であつた。未だ家に居た真一は、女所帯に幸平が逗留することに異を唱へるが、対してプレイボーイを自認する幸平は、三十歳以上の女には興味がないと憚ることなく公言、初対面の静香に臍を曲げさせる。翌朝、一緒に出勤する母娘、当然幸平に関する会話がてら、静香はシャックリが出る。幸平に心を開かない静香と、静香は端から守備範囲外の小癪極まりない幸平とが一つ屋根の下付かず離れずする一方で、真希は鈍感な真一に自身の熱い想ひをぶつけ、一旦目出度く結ばれる。そんな中、携帯電話のGPS機能を辿つて歳の離れた彼女の亜矢(岡本)が、川島家の幸平を急襲する。大胆にもといふか非常識にもとでもいふべきか、人の家で濡れ場をこなすだけこなした亜矢は、合コンで知り合つた二十八歳と結婚するからと、幸平に急過ぎる別れを告げる。小娘相手に無様に狼狽するほかない幸平に、亜矢が投げた止(とど)めの文句が、「子供の頃を思ひ出して、何時までも遊び相手は居ないわよ」。遊んでゐた子供も、「夕焼け小焼け」が町内放送で流れ始めると家族の待つ家に帰る。そろそろ幸平も、人生の黄昏時を迎へる頃合だといふのだ。何を小生意気な、利いた風な口を叩く前に髪を梳け。絡みに際して体が動くと、顔が殆ど見えないぞ。
 三番手が飛び込み揺れる川島家に静香が遅れて帰宅すると、“夢を探しに行く”と称して真希と画廊を捨て姿を消した元夫・山中吾一から、プリクラ感覚の再婚を報告する葉書が届いてゐた。SPECIAL THANKSの夏井亜美は、その新婦・亜美。山中役のB系のオッサンは、永井卓爾か?
 渡邊元嗣2008年第一作は、一言でいふと予想外の一作。互ひに第一印象は最悪の、三十路の女社長と、ぼちぼち初老の蓋も開けつつある恋愛小説家の男。各々年下にフラれた二人は、俄に相手への評価を改めるのも通り越し急速に距離を近づける。前述した亜矢の捨て台詞に加へ、後にイイ雰囲気になりかけた静香に、幸平は得意満面で宣ふ「寂しい時に、涙を見せられるのは大人の男性だけだ」。一々の口説き文句や遣り取りからベッタベタな欠片の工夫も欠いた展開に、この時期のナベが、しかもわざわざ新納敏正まで連れて来ておいて、よもやこの体たらくのまゝ映画が終る訳がない。と、屈折した期待を唯一の頼みの綱に、カット単位での仕上がりはルーズではないものの、終始訴求力には乏しい始終に別の意味で今か今かと喰下がつた。と、したところが、積み重ねた風情も明確な―都合四回―シャックリの、まさかの正しく逆噴射が火を噴く無体でいい加減な、いはゆる“衝撃の結末”といふ奴には、驚かされたのは確かに驚かされた。ベクトルの正否さへさて措けばサプライズの威力といふか破壊力は満更でもない、最大限によくいへば珍作。順撮りしながら、最後の最後まで渡邊元嗣は迷ひを残してゐたのではなからうか、さうとでも思ひ込まないと、正直とてもではないがやつてられなくてやりきれない。

 大体が、見た目以前に高卒採用も考へ難く、三十路の母親に編集者の娘が居るなどといふ時空の歪みを、一体如何に通すつもりなのか。因みに、2ショットが姉妹にしか見えない真田ゆかりは昭和48年生で、藍山みなみは昭和57年生。但し、真田ゆかりのプロフィールは変動制を採用してゐるやうである。総合的に現代ピンク最強の美人女優は実はこの人なのではないかと、時に思へるのと同時に、作品にあまり恵まれない不遇はチト難点。

 以下は再見時の付記< 山中吾一役は矢張り永井卓爾
 備忘録< 結局最終的に静香がくつゝくのは、娘から再略奪した真一。シャックリは寂しさを感じてゐるサイン


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