真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「死者の体育祭 人妻喪服運動会」(2001/製作・配給:幻想配給社/監督:石川二郎/脚本:高木裕治/プロデューサー:友松直之・新里猛作・松家雄二/撮影:岡宮裕/協力:愛染恭子、他/出演:深田みゆき・西田ももこ・桜井聖・竹本泰史・山内一寿・山之内幸夫、他)。
 小学校の運動会、真知(深田)は子供の担任教師とトイレでの文字通りの密会に燃える。夫・正一(桜井)とは、ずつと擦れ違ひが続いてゐた。一方ヤクザの竜二(竹本)。敵対するヤクザの命(たま)を獲りに出張つたはいいものの、仕損じて三人から追はれる身に。正一は父兄参加の徒競走に出場する。号砲とシンクロして、竜二は路地裏で無惨に撃ち殺される。正一も正一で、急に過度な運動をしたことによる心臓発作でこちらも急逝してしまふ。
 互ひに天国に行く前に、もう一度だけ肉体を有して遺した妻に想ひを伝へに行きたいと望む正一と竜二に対し、関西弁バリバリの天使(山之内)は真知と竜二の女房・エリ(西田)を賽の河原、のやうな空間に呼び寄せる。真知とエリに種々の競技を競はせ、勝つた方の夫の希望を叶へてやらうといふのだ。
 「死者の体育祭 人妻喪服運動会」。ロマンティックと破天荒とが同居するナイスなタイトルではあるが、看板の前半は偽りである。夫達は離れた場所から模様をテレビで見るだけで、何をする訳でもない。実際に運動会をするのは喪服妻である。和装の真知と洋装のリエとが、裾を淫らに肌蹴ながら綱引きやバナナ喰ひ競争(笑)、クロスカントリーがてらのキャットファイトに汗を流す。一体どういふ契機でかうして形を成すところにまで辿り着けたのだか、皆目見当もつかないファンタスティックなプロットではあるが、実際の中身の方は、それ程はつちやけてゐる訳でもない。寧ろ周到過ぎるくらゐに外堀を埋め過ぎて、笑つて見てゐればいいのか普通に夫婦間の心の交流に感動させられればいいのやら最早判らなくすらなつて来る、なかなかにチャーミングな出来栄えのVシネである。戯れにタイトルをグーグル検索してみたところ、思ひのほか数多くの感想も出て来た。それはそれとして、人の心を捉へたといふことでもあるのであらう。
 後も含めて二人の死の過程や遺して来た妻への想ひを丁寧に描き過ぎて、メイン・プロットたる喪服運動会が始まるのは尺が折り返し地点も結構遠く通り過ぎてしまつてから。挙句に喪服姿で運動会をやつたとて、さしたるお色気を望むべくもなかつたのか。最終競技の旗取り競争がてらのキャットファイトに至つては、カットが変るとそれまで何ともなかつたのに、急に衣服が派手に乱れて乳を無駄に見せてゐたりもする辺りは全く御愛嬌で、実に微笑ましい。
 ただ残念なのは異世界での出来事である筈なのに、堂々と背景に建物や高圧線を映り込ませる無頓着さ。意外に心も込められた物語なだけに、余計に興が醒める。


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