真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「絶倫海女 しまり貝」(昭和60/製作配給:株式会社にっかつ/監督:藤浦敦/脚本:池田正一/企画:植木実/撮影:水野尾信正/照明:内田勝成/録音:福島信雅/編集:鍋島惇/美術:中澤克己/音楽:ジミー時田/助監督:北村武司/選曲:山川繁/製作担当:作田貴志/協力:神津島観光協会/出演:清里めぐみ《新人》・伊藤久美子・永野真大・よしのまこと・野上正義・橘家二三蔵・大谷一夫・章文栄・萩原賢三・藤ひろ子・志水季里子・小川亜佐美・立川談志《特別出演》)。配給に関しては事実上“提供:Xces Film”か。
 こんちこれまた別に明示はされないけれども神津島、網元の娘で東京の女子大から帰省中の由美(清里)が、後に海女頭のよし乃(藤)が営むスナック「よこ路」―何て洒落た店名なんだ―のサービス・タイムでは蛤にジュースを含んで、千円のチップを払つた客に噴きつける荒業も披露する奈津(よしの)、同じく蛸やスルメイカを入れる―ついでに感電する―愛子(志水)らと海に潜る。ノーヘルの原チャリで帰宅する由美は旅行者と思しき修司(永野)と出会ひ、宿まで二尻で乗せる、何と大らかな時代よ。島の観光開発を狙ふ東西観光開発の現地先兵「松永不動産」社長・松永(野上)以下、部下で元漁師の順平(大谷)や殆ど登場しない文三(橘家)が暗躍する一方、ある日一仕事終へた由美らは、崖から花束を海に投げる修司の姿を遠目に目撃する。
 配役残り伊藤久美子は、海女で順平と以前は恋人同士であつた芙佐。疲労困憊しながらも奈津や愛子を篭絡し、何のかはよく判らない白紙委任状を掻き集める順平と度々衝突する。因みに文三はといふと松永の腰巾着に止(とど)まり、劇中特に仕事しない。萩原賢三は、この男のグズさが一件の元凶と思へなくもない、借金持ちの網元・剛三。小川亜佐美は―萩原賢三との―絡みは設けられないものの剛三の再婚相手の座に躍り出る、島に長逗留する外地の女・香織。立川談志が東西観光開発社長で、章文栄はその秘書・ナミ。この人は脱がない、藤ひろ子もな。
 連続テレビ小説のヒットに便乗して注目される、藤浦敦による海女ンポルノ最終第五作。風光明媚で本来のどかな小島が、大手開発業者によるインベイジョンに揺れる。但し地上げの手口といふのが女は棹で誑し込み、男は鰒で誑かす。プログラム・ピクチャーが最も得意とする豊潤な方便に従ひ、これは劇中島民性と捉へればよいのか床の中よりも島内をフル活用する色んなとこでの濡れ場がつるべ撃たれる中、ベーシックな惚れた腫れたや血縁の因縁も絡められる。騒動がいい塩梅に熟したところで、正しく真打登場とばかりに談志師匠投入。万事を丸く収める完璧な構成と、誰一人不幸にしない見事な大団円には全力で感動した。あまりにも整ひ過ぎて一歩間違へば平板なルーチンと錯覚さへさせかねないのかも知れない、綺麗な綺麗な娯楽映画。ところで主演の清里めぐみは、その後現場で出会つた滝田洋二郎と結婚、現在に至るとのこと。古参の先輩方にとつては、いはずもがなな周知の出来事なのであらうが。


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清里めぐみについて (XYZ)
2014-01-09 14:02:59
清里めぐみについて、ついでに書くと、にっかつはどうして彼女を見つけたかというと、金子修介監督の「みんなあげちゃう」(原作:確か弓月光)の主役オーディションに応募してきたであろう彼女を口説き落としたと思われます。ちなみにその映画には主人公の友人役で「山中千多枝」の名前で出演されています。
 
 
 
>清里めぐみについて (ドロップアウト@管理人)
2014-01-09 22:20:51
 有難う御座います、先輩、押忍!
 初見でしたがなかなか以上のダイナマイトで、
 滝田洋二郎が羨ましい限りです   >黙らなくていいから息するのやめれ
 
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