真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「挑発美容室 人妻の匂ひ」(1994『人妻変態美容師』の1999年旧作改題版/製作:獅子プロダクション/提供:Xces Film/監督:佐藤寿保/脚本:五代響子/撮影:稲吉雅志/照明:小川満/編集:酒井正次/助監督:今岡信治/監督助手:榎本敏郎/撮影助手:片山浩/照明助手:堀直之/スチール:西本敦男/録音:銀座サウンド/現像:東映化学/出演:鈴川玲理・石原ゆり・しのざきさとみ・池島ゆたか・小林一三・広瀬寛巳・今泉浩一・征木愛造・中島裸茂・柳蜂逸男・紀野真人)。出演者中、広瀬寛巳がポスターには広瀬寛己で、今泉浩一から柳蜂逸男までは本篇クレジットのみ。
 深夜の美容室、百合の花が咲き乱れる。話を聞くに真性ビアンの石原ゆりがタチで、バイと思しき鈴川玲理がネコ。カメラがパンした先の鏡の中、鈴川玲理が果ててタイトル・イン。クレジット中は美容室「POWDER」に、今と比べると流石に全然髪があるひろぽん来店。下着ではないにせよ水着みたいな服の上に、霞並みにスッケスケのシースルーを羽織つた―だけの―扮装で客を出迎へた「POWDER」オーナーの吉永真理江(鈴川)は、カットしながら谷間も露な胸を押しつけるどころか、最終的にはガンッガン跨る。そんな店内の痴態を窺ふ紀野真人の視線に、アシスタントの麗子(石原)が気づく。主に嫉妬心から、破廉恥接客に関して麗子が呈する苦言をまるで意に介さない真理江に、元夫の葉山俊次(池島)から下心込みの事務的な電話が入る。「POWDER」は真理江の度外れた性欲に白旗を揚げた葉山が、慰謝料代りに持たせた店だつた。
 配役残り樹カズの本名である小林一三は、街に出た真理江に声をかける男前ナンパ師。街頭ロングで真理江は一旦拒絶してゐるにも関らず、カット跨ぐとラブホにて濡れ場に大絶賛突入してゐたりするザクザクした繋ぎが麗しい。紀野真人は評判を聞きつけ真理江に接近する漁色家・シノミヤで、しのざきさとみはシノミヤ馴染の人妻ホテトル嬢・ユカリ。シノミヤに呼び出された真理江がホテルに向かふと、既にユカリが裸で寝てゐたりする三番手の投入は地味に輝かしくスマート。今泉浩一・征木愛造(a.k.a.梶野考)・中島裸茂・柳蜂逸男は、オーラス「POWDER」に行列を成すひろぽん以下の助平客要員。中島裸茂と柳蜂逸男が誰々の変名なのかまでは辿り着けないが、どちらか片方は今岡信治、の筈。
 次作の非本流「痴漢と覗き」・「痴漢と覗き 婦人科病棟」(脚本:五代響子/主演:石原ゆり)が画期的に見たい、佐藤寿保1994年第一作。軽く鼻も胡坐をかきつつルックスは垢抜けないものの、ボガンボガンしたオッパイの破壊力は抜群の主演女優と五代響子の脚本を擁した上で、佐藤寿保の名前から自動的に予想されるマッドネスなり残虐描写は、今回一切鳴りを潜める。真理江がユカリを交へた巴戦を嫌つた所以といふのが、ただ単に棹を独り占め出来ないからとのショート・レンジな即物性も鮮やかに、真理江を巡る麗子とシノミヤの鞘当ても所詮は小賢しくすらない些末とばかりに、ヒロインの底なしの貪欲が劇中世界を人類補完計画ばりに埋め尽くして行くグルーブ感は圧巻。男根を原初的に誇示するシノミヤと、撃てばお終ひの男を押し退け、颯爽とペニパンを装着する麗子。三番手が慎ましくヒット・アンド・アウェイに徹する一幕が対照として活きて来る構成が改めて秀逸な、シノミヤ×真理江×麗子の、今度は真理江が望んだ第二次巴戦。結局ともに精魂尽き果てたシノミヤと麗子を余所に、なほも真理江が自慰に狂ふウィナー・テイク・オールは天晴の一言。要求される商品性に、佐藤寿保が脇目もふらず突つ込んだ結果が見事に実を結んだ、極めてシャープでストレートな高水準裸映画である。

 オーラスは完全に振り切れた「POWDER」乱交、首から上を麗子、左乳ひろぽんに右乳征木愛造(a.k.a.梶野考)、観音様シノミヤ、左足今岡真治に右足今泉浩一。六人で一人の女を凌辱するといふよりも、寧ろ皆で真理江に奉仕してゐる画は、当然の話に過ぎないといへばそれまでなのだが、面子の組み合はせが現在では考へられない凄いショット。
 ところでたつた今気づいたのが、旧題も新題も、だから真理江は人妻ではない件。


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