真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「人妻《裏》盗撮 背徳の情交」(2005/製作:フリークアウト/提供:オーピー映画/監督:国沢☆実/脚本:城定秀夫/撮影:長谷川卓也/照明:ガッツ/助監督:海野敦/音楽:因幡智明/制作:酒井秀明/協力:THUNDER杉山・おもてとしひこ・いじりみちよ/出演:森田りこ・里見瑤子・松村かすみ・マイト利彦・吉岡睦雄・松浦祐也)。
 井出礼司(マイト)は、表向きは父親の遺した昔ながらの個人商店の電気屋を継いでゐる。而してその裏では、家電製品の修理に乗じ家々に隠しカメラを仕掛けて回り、さうして得た盗撮映像を業者に流す凄腕の盗撮マニアであつた。ある日、ステレオ修理の際に綾(松村)の部屋に仕掛けたカメラの盗撮映像を、何時ものやうに金に換へ店の前で一服してゐたところ、向かひの花屋で花を買ふ富田葉子(森田)の姿に、礼司は心を奪はれる。目が合ふと、葉子は自ら礼司の下に歩み寄つて来た。家の電気が点かない、といふのである。蛍光灯が切れてゐただけであつたが、葉子は炊事や洗濯の他は、切れた蛍光灯を換へることすら出来ない女だつた。わざわざ葉子の家を訪ねた礼司は、照明の傘の隅にカメラを仕掛ける。葉子と、夫の勝郎(吉岡)との関係は冷え切つてゐた。勝郎の美香(里見)との浮気に、葉子も薄々勘付いてはゐたが、問ひ質すことなど出来なかつた。夫に構つて貰へぬ寂しさを、ウジウジと葉子は自ら慰める。そんな葉子の姿を灯りを消した部屋で、判り易く国沢実当人を投影したかのやうに内向的で自閉的な礼司が、PCのモニター越しに凝視する。
 袋小路、としか形容のしやうがなかつた自脚本による前作、「ピンサロ嬢 優しい指と激しい舌」(主演:葵しいな)よりは幾分マシではあつたが、如何せん如何ともし難い生煮え感が強い一作。一応最後には葉子―と勝郎―も礼司も、前に向かつて進んで行く形で物語は幕を閉ぢて行くのだが、国沢実本人の暗さの所為かあるいは映画監督としての体力の不足、に因るものなのかは兎も角、どうにも映画がパッとしない。吸ひさし、といふ意味ではなくして、湿気てゐる、といふ意味でのシケモクのやうな映画である。観終つた後全くスカッとしない、居心地の悪いもどかしさばかりが残される。美香や、綾の彼氏である哲也(松浦)は活き活きとしてゐるのに、思ひ入れが過剰な分却つて災ひしたか、肝心の葉子と礼司とが活きてゐない、生きて来ない。南あみや橘瑠璃を主演に撮つてゐた頃のやうな、堅実でストレートな娯楽作をもうこの人は撮れなくなつてしまつたのであらうか。期待度、といふ意味に於いては、一番推してゐる、もしくは推したい監督ではあるのだが。

 最短距離の更にこちら側でいふところのダメ人間役、のマイト利彦は兎も角、森田りこの魅力の乏しさも最終的な雌雄に際して大きかつたのかも知れない。曲がつた顔が誰かによく似てゐる、と思ひながら観てゐたところ、判明した。松田―強制的に―改め熊谷龍平クンを少しフックラさせれば、ほぼ同じ顔になる。


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