真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「婚前生だし 未熟な腰つき」(2011/制作:セメントマッチ/提供:オーピー映画/監督:池島ゆたか/脚本:五代暁子/原題:『Memory』/撮影監督:清水正二/編集:酒井正次/音楽:大場一魅/助監督:中川大資/監督助手:北川帯寛/撮影助手:海津真也/照明応援:広瀬寛巳/編集助手:鷹野朋子/録音:シネ・キャビン/現像:東映ラボ・テック/スチール:津田一郎/タイミング:安斎公一/協力:松井理子、ステージ・ドアー、鎌田一利、小林徹也/劇中歌:『明和女学院校歌』作詞:五代暁子 作曲:大場一魅/出演:夏海碧・佐々木麻由子・日高ゆりあ・野村貴浩・久保田泰也・池島ゆたか・中根大・山の手ぐり子/Special Thanks:周磨要、高木高一郎、YAS、東京JOE、吉永幸一郎、うめ、岡本氏、だいちん、わたなべりんたろう、ステージ・ドアーの方々)。出演者中、山の手ぐり子は本篇クレジットのみ。見るから怪しい協力の徹哉小林徹也は、本クレに従ふ。
 夕暮れ時の海岸、佐倉あおい(夏海)がキャリーバッグを傍らに佇む。右腕には痛々しい大きな傷跡、まさか気づいてゐないのか、あおいに袖で隠さうとする気配は凡そ窺へない。後ろからあおいの両目を手で覆ひ、あおいの恋人で、母校・明和女学院の生物教師・遠山俊作(野村)登場。今作の撮影と並行して舞台でもやつてゐたのか、野村貴浩がまるで日本兵のやうな髪型だ。二人で埠頭を海に向かつて歩き、腰を下ろした背中越しに、低い位置の満月を抜いてタイトル・イン。
 タイトル明けて佐倉家、あおいの母・真理子(佐々木)と、恋人の田村(池島)の情事。先に二人の関係を整理しておくと、真理子はあおいの父親とは、未だあおいが幼い内に、DVの末外に女を作り出て行く形で離婚。独立はしてゐないが、二人の子供は社会に出た田村は頻りに真理子に求婚する―前妻の去就は不明―ものの、結婚に懲りた真理子は固辞してゐた。それはさて措き、田村は聞き分けのない自らの手を“お手手”と称し、真理子にだらしなくムシャブリつく。その池島ゆたかの重量感溢れる惰弱な姿に、小生は偶さか港雄一を見た!
 真理子と田村が、コッテリした一戦を通して丁寧に種を蒔きつつ、入院してゐたあおいが半年ぶりに帰宅。福祉施設副所長の職を持ち潤沢な収入のある真理子は、娘にひとまづのんびりするやう勧める。夕食の買物に出た真理子に、あおいの幼馴染で、推定三河屋店員の佐伯達郎(久保田)が接触。あおいが戻つたことに喜ぶといふよりは、どちらかといふと不安を募らせる。後述する遠山との一回戦挿んで、パブ「ステージ・ドアー」にて、あおいは明和女学院バレー部の先輩でOLの遠藤ミカ(日高)と会ふ。ミカとフリーターの劇団員、といふか要はほぼヒモの杉浦尚也(中根)の恋愛に、教師と付き合ふ自身を勝手に高みに置くあおいは、出過ぎた世話の異を唱へる。後に尚也写メに見切れる浮気相手は松井理子、演技上派手に問題のある夏海碧のアテレコも担当してゐるが、松井理子自体正直然程達者といふ訳でもない。相対的な結論としては、それで十分であるのやも知れないが。
 池島ゆたか2011年年第三作は、新味には薄い一ネタを、兎も角丹念に丹念に積み重ねた習作。明白な雰囲気が静かに流れる中、遅くとも、主演女優の濡れ場初戦の直前。佐倉家玄関口のカットに於いて既に、オチの起爆装置も地表に露な物語ながら、教科書通りの的確な段取りの集積に対しては、娯楽映画に際して論理と技術とを第一義的に尊ぶ個人的な立場からは、大いに好印象を抱いた。無人のシャワーと、空のクローゼットの畳み込みは、ベッタベタにしても抜群のテンポで予想通りの満足感と同時に、緊張感も失はずに観させる。その前段、猜疑に引き攣る山の手ぐり子(=五代暁子)の表情は、些かトゥー・マッチにも思へたが。コッテコテも逆向きに通り越し流石にダサい、終に明示される半年前の悲劇の真相に関してはツッコミ処と生温かく受け取るにせよ、さうなるとこぢんまりとではあれ手堅く纏め上げられた佳品に対し、それなればこそ心を残しもする二点。素面といふ意味での裸の劇映画としては、オーラスのバッド・エンドは、演者のスキルも鑑みるとなほさらもう少し手短にチャッチャと片付けた方が、より余韻を深めたのでもなからうか。そして裸映画的には、日高ゆりあが二戦戦ふのを否定するつもりは毛頭ないが、タップリ長めともいへ、佐々木麻由子の絡みが序盤の一度きりといふのは、最終的には地味にバランスを失した印象も強い。


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