真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「お灸快楽 若草いぶり」(2002/製作:旦々舎/提供:オーピー映画/脚本・監督:山邦紀/撮影・照明:小山田勝治/音楽:中空龍/助監督:田中康文・栗林直人/歌・音楽協力:川瀬有希子/出演:川瀬有希子・風間今日子・佐々木基子・柳東史・平川直大)。
 代々続く灸治療院、「やいと屋」を切り盛りするよもぎ(川瀬)は自分で自分に灸を据ゑながら、恍惚に耽り、束の間の白日夢に落ちる。公園を歩いてゐる自分、「私の人生は終つた」。ヘルメットに防塵マスク、土工(柳)が完全防備の上ガスバーナーで鉄串を熱してゐる。土工は熱せられた鉄串を自らの左腕に押しつけると、奇声を上げながら激痛のエクスタシーに狂乱する。
 さういふ、ヘルレイザー達の果てない乱交を描いた映画であるといふのは真つ赤な出鱈目である―なら書くな―が、ただテンションとしてはそれと当たらずとも同時に遠からざる、変化球を通り越した魔球映画である。
 不感症のさざ波(風間)が、「やいと屋」―いふまでもなく浜野佐知自宅―を訪れる。ゴスなメイクで登場のファースト・カット、一瞬鏡麗子に見えてしまつたのは私だけであらうか。灸を据ゑられてゐる内に感じ始め、用意よくよもぎが和服の袖から取り出した張型―透明で細長くツイストした、旦々舎作頻出ギミック―で自慰に耽る。よもぎは恋人のひぐらしと会ふ。ひぐらしは、幻影の中の土工とそつくりであつた(柳東史の二役)。一方、年増のストリッパー・しら雲(佐々木)とヒモのこほろぎ(平川)が、何処からか東京に流れて来る。こほろぎのインポを治す為に、二人は「やいと屋」に向かふ。よもぎがこほろぎの治療を始めるや否や、しら雲は自らの不幸な生ひ立ち自慢を始める。一歳で父親に女陰―“おまんちよ”と呼称―を舐められ、二歳で節くれ立つた指を挿入。三歳でレイプされた、と。さうかうする内に、こほろぎには灸の効果が現れ始める。しら雲とこほろぎは、試してみると情交に及ぶ。その間よもぎは別室で自らに灸を据ゑ、再び幻影を見る。ハードゲイな井出のこほろぎ、改めゲイ(平川直大の二役)と、ベリーダンサーのやうな衣装のしら雲、改め“更に不幸な女”(佐々木基子の二役)。そこに現れる、今度はよもぎソックリな、GAPのTシャツを着たダンサー“男の子”(川瀬有希子の二役)。ゲイは“更に不幸な女”を袖に振り、“男の子”と戯れる。“更に不幸な女”は、更なる不幸に悲嘆に暮れる。
 改めて真面目に纏めると、灸でトランスしては主人公が垣間見る恐ろしい幻影。現実世界の反転でもあるかのやうな幻影はやがて現実世界を侵食し始め、終には・・・といふメーターも振り切れたエクストリームな幻想譚である。
 パリへの転勤が決まつてゐるひぐらしは、幻影に悩むよもぎに「やいと屋」を閉め、一緒について来て呉れることを望む。初めは代々続く「やいと屋」に未練を残しながらも、よもぎは幻影を振り解くべくひぐらしに同行することを決める。「やいと屋」を畳み、よもぎとひぐらしは旅立つ。幸せな二人を、土工、ゲイ、“更に不幸な女”、“男の子”、そしてさざ波のネガ、ピグマリオンなダッチワイフ(風間今日子の二役)が追ふ!
 今作は、十八番の幻妖怪異な山アクロバティックが、冷徹な論理を以てしてオーソドックスなエモーションにもドラマの軟着陸にも帰結することなく、幻妖怪異が幻妖怪異のまま、台風のやうに吹き抜けて行く。その限りに於いては、平素当サイトの山邦紀最強論からは一円安くなつてもしまふが、それでも矢張り、幻妖怪異が現実世界を侵食し、主人公に猛然と襲ひかかるクライマックスには見応へがある。ひとつ難をつけられなくもないのは、しら雲の妄想癖に毛を生やしたともいへる、不幸自慢とよもぎの見る幻影との親和度がいまひとつであつた点。脚本の練り具合が、足らなかつたものと見える。
 川瀬有希子の歌・音楽協力とは。クライマックス、よもぎ―とひぐらし―が現実世界にまで浸出して来た幻影に襲はれる件に際して、何時もの音源と同時に、バンド活動もしてゐるとの川瀬有希子のトラック(『SHARE』作詞・作曲・編曲・歌:川瀬有希子)が用ゐられる。この川瀬有希子の歌といふのが、21世紀に何をトチ狂つたかまるで、といふかまんまおニャン子クラブのやうな化石的アイドル歌謡。通常音源と80年代アイドル歌謡とが、ストレートにブツ切りで交互に併用される。本来ならばぞんざいにも思へてしまひかねないところでもありつつ、今作に於いては折衷具合そのものが、幻影が現実世界を侵食するに至る混乱の度合をよく表してゐる、などといつてしまへば贔屓目にも過ぎるであらうか。

 とまれさて措き。ここに、今回声を極大にして訴へたきことどもがある。「恋のから騒ぎ」出身だとかいふ経歴は、個人的にはどうでもいい川瀬有希子ではあるが、今回改めて久し振りに再見してみたところ、角度によつては、しかもかなりの高打率で、現在の池脇千鶴に見える、と思ふ。これは、小さからざる事件である。池脇千鶴の、あんな痴態こんな痴態・・・・・キャー♪   >有罪
 悪いことは申さぬ。川瀬有希子の出演作を今直ぐチェックして、マストで小屋にゴーだ!


コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )


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コメント
 
 
 
Unknown (うう)
2009-12-07 15:03:26
こんにちは
 
 
 
Unknown (ドロップアウト@管理人)
2009-12-07 20:41:25
 あ、どうも。こんにちは。
 
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