真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「高校教師 ‐異常な性癖‐」(2002/製作:フィルム・ハウス/提供:Xces Film/監督:坂本太/脚本:岡輝男/企画:稲山悌二/プロデューサー:伍代俊介/撮影:創優和/照明:野田友行/編集:フィルムクラフト/録音:シネキャビン/助監督:竹洞哲也/監督助手:山口大輔/撮影助手:谷口守民/スチール:本田あきら/メイク:パルティール/タイトル:道川昭/現像:東映化学/出演:つかもと友希・相沢知美・ゆき・しらとまさひさ・なかみつせいじ・吉田祐健・おかなおてる・かとうよしかず《新人》)。出演者中、おかなおてるとかとうよしかず(新人)は本篇クレジットのみ。後述するが、ぎいちではないんだよ。然し猛烈に平仮名の多いビリングだ、大人の映画なのに。
 結果論的には盗撮映像といふ方便での、キネコによる主演女優のシャワー・シーンで開巻。私立栄光学園、数学教師で最年少学年―しかも三年生―主任の荻原祥子(つかもと)は、不登校が続く三上修平(しらと)の家庭訪問をクラス担任である篠田典子(相沢)に求めるが、たはけたことに教育ならぬゆとり教師を自認する典子はその役を祥子に押しつけ、劇中もう一人登場する同僚で下卑た小人物感が絶品な蛭田辰男(吉田)も、典子の尻馬に乗る。一応、才女の祥子とずぼらな典子、といふ対照に設定上なつてはゐる、ものの。ヴィジュアル的にはどちらも、といふか寧ろ祥子の方が華美で、女教師はおろか、何れにせよ二人揃つて夜の蝶にでもしか見えない。野暮はさて措き、くさくさした思ひを抱へながらも、祥子は不倫相手の坂上康則(なかみつ)との情事に溺れる。坂上は、祥子の親友・薫(ゆき)の夫であつた。そんな中、祥子を呼び出した薫は、興信所にでも依頼したのか夫との不貞の証拠を突きつけると、ゆき(ex.横浜ゆき)持ち前のクールな距離感で当然の絶縁を言明する。その足で薫は待たせておいた坂上と、一つ前の濡れ場で祥子との逢瀬に使つたラブホテルに突入。プレイをトレースがてら、亭主奪還を高らかに宣言する―要は、二幕続けて撮影した、といふ便宜か―絡みにも、ゆきの攻撃的な持ち味が見事に活かされてある。但し、大絶賛夫婦生活交戦中のホテルから、薫がこれこそ聞こえよがしに祥子に携帯電話をかける件に際しては、時制の移動が些かへべれけ。つい今しがた真昼間であつたものが、何時の間にか日もとつぷり暮れた夜になつてゐる。一体何回戦なのか、薫は結局、制裁に旦那を殺す気か?与太もさて措き、気を取り直、せぬまゝ両親は仕事で海外の三上家を訪ねた祥子を、更なる衝撃が襲ふ。そもそも薫が持つてゐた祥子が坂上とホテルに入る写真は、修平が撮影したものであつた。さうなると後はお定まりの王道展開、醜聞をネタにした修平のとても子供とは思へぬ淫虐に、祥子は綺麗に囚はれる。
 一言で片づけると、魔少年の苛烈な調教を受けるエロい女教師。ほかに補ふ言葉も俄には見当たらないし別にそのまゝでも別に構ふまい、徹頭徹尾そのことのみの正しく一点突破が清々しいまでのエロ映画。ビリング前後して三番目に脱ぐ、相沢知美と吉田祐健の御丁寧にも放課後の教室に於いての情事をも、祥子への加虐の用に供する実は執拗な論理は、ピンク映画の約束事を巧みに始終の進展に取り入れた、何気なファイン・プレー。改めて冷静に努めてみるまでもなくお話自体はスッカスカに薄いが、そのやうなことすら最早瑣末と、この際問ふべきではなからう。劇映画だと思ふから物足りない、今作は裸映画だ。観客が首から上で使ふのは目と耳のみ、後は一物で観るべき極桃色のエクストリーム。ギミックの猛烈な不自然さもものともしない、箱男ならぬ箱女責めで一気にレッド・ゾーンに持ち上げたテンションを、ラストまで一息に振り抜いてみせる終盤は圧巻。終に壊れた女と、度が過ぎたことに狼狽する男との対比には正方向の演出の充実も窺はせつつ、在り来りな哀願を180度引つ繰り返した、情欲のシャウトが鮮やかに映画を締め括る。考へるな、感じろ。そんな至言が何処からか聞こえて来るかのやうな、坂本太とエクセス、両者にとつてともに挨拶代りたり得よう一作である。

 配役残りおかなおてる(=丘尚輝=岡輝男)とかとうよしかず(=加藤義一)は、若干名用意される中から顔が抜かれる、でもなく見切れる程度の生徒要員。何れにせよ、わざわざクレジットに載せるほどか?といふ素朴面した疑問は残らなくもない。


コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )


« 樹<いつき>ま... 後妻の情交 ... »
 
コメント
 
コメントはありません。
コメントを投稿する
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。