真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「恥ぢらひ女子大生 大胆舌戯」(1990『ザ・ONANIE倶楽部 女子大生篇』の2011年旧作改題版/製作:新映企画株式会社/提供:Xces Film/監督:新田栄/脚本:池田正一/企画:伊能竜/撮影:千葉幸男/照明:鎌田靖男/編集:酒井正次/音楽:レインボー・サウンド/助監督:高島平/監督助手:四宮一志/撮影助手:彦川拓郎/照明助手:石井克男/現像:東映化学/録音:銀座サウンド/効果:蒔田グループ/出演:美穂由紀・早乙女宏美・吉本美奈子・青木リカ子・工藤正人・石神一・千代田一郎・久須美欽一)。企画の伊能竜は、向井寛の変名。効果の時田ならぬ蒔田は、本篇クレジットまゝ。
 女子大生の清美(美穂)と、彼氏で自称カメラマン助手の広岡健一(工藤)の情事で開巻。ひとまづ新田栄映画らしからぬ、美女美男の組み合はせではある。健一は言葉巧みに、自慰させた清美のビデオ映像を撮影する。チャッチャと所変つて「ベスト人材バンク」、実はこの会社のスカウトマンとして働く健一が、女社長の亜伊(吉本)にビデオを基に清美を売り込みがてら、流れるやうに二人は一戦交へる。正しく矢継ぎ早に舞台移り、今度は安い関西弁の逆説的なポップ感が清々しい、亜伊のスポンサー・相沢(久須美)邸。亜伊は清美のビデオを手土産に追加の融資を引き出しつつ、既に勃たぬ相沢の求めに応じオナニーを披露させられ、たかと思へばスイスイと張形も持ち出した早くも劇中都合三戦目。と、こゝまで。殊に序盤戦に際して顕著な、正しく正しく立て板に水の如く三つの濡れ場を連ねる新田栄高速のメガホン捌きは、全く以て実に見事であつたのだが。結局清美は、肩書はコンパニオンながら実質半ば売春婦として、「ベスト人材バンク」でアルバイトする羽目に。要は「ベスト人材バンク」に売られるや、健一とすつかり連絡が取れなくなつてしまつたぞんざいな疎遠に、素性を知らない清美は重ねて胸を痛める。そこに飛び込んで通り過ぎて行く、役柄に即した下衆さが堪らない石神一は、以前清美らを接待に使つたサラリーマン・三郎。清美が現役女子大生であるのを知つた三郎は、後ろめたい弱味に乗じ、しかもホテル代さへ惜しみ清美の部屋にてほゞ無理矢理事に及ぶ。いよいよ傷つき、相変らず音信は不通のまゝ健一宅へとフラフラ向かつた清美は、健一が新たなるカモ・リカ(青木)を誑し込まうとしてゐる現場を目撃、終に絶望する。また随分と、無造作なシークエンスである点はさて措き、道端で睡眠薬をオーバードーズし文字通り行き倒れた清美を、客を取らうとしてゐた売春婦・沙知(早乙女)が、客役の千代田一郎とともに助ける。ところで、正体不明な変名感がある意味誠実な千代田一郎の正体とは、二十年前ともなると当たり前でしかないが随分若い、新田栄その人である。新版・旧版双方、ポスターに名前の記載も見られる。清美から顛末を聞いた沙知は、自身も過去に似たやうな体験を持つのもあり、俄然健一への代理復讐を期する。
 どうせ内容的には特段どころか全く連関はあるまいが、1990年に全三作製作された、「ザ・ONANIE倶楽部」シリーズ第一作。因みに、絶妙に当てにならないjmdbを頼りに沿革をなぞつておくと一月公開の本作に続き、四月に「ザ・ONANIE倶楽部2 女医三姉妹篇」(主演:小林夏樹/水鳥川彩のデビュー作でもあるらしい)、大体均等なペースで八月に「ザ・ONANIE倶楽部3 変態OL篇」(主演:高樹麗/監督と脚本は三作全て新田栄と池田正一)と続く。更に因みに、3の「変態OL篇」は、今新版の二ヶ月後に「ONANIE三昧 秘書もOLも貝いぢり」なる新題で矢張り新版公開されてゐるので、その内相見えることも叶ふだらう。こゝはどうにか、2の「女医三姉妹篇」も是が非ともコンプしておきたいものである。話を戻すと、当代バリバリのAVアイドル・美穂由紀をビリングの頭に擁し、のちに続篇企画を二本従へるところからも、当時それなり以上にヒットしたのではと思しき風情ならば、この期にとはいへ酌めはする。とはいへ、かといつて歳月を越える然程の完成度を、感じさせる訳では必ずしもない。展開の要を成す復讐譚が、段取りの便法ぶりに関しては裸映画特権に免じれば差し引けなくないのもあり、過去を清算した―正確には“して貰つた”―清美が再び前を向いて歩き始めるラストまで、一部始終自体はそれなりに順当。それならば、一体この胸にどうにも残る物足りなさの所以は何なのか、と改めてよくよく考へてみたところ。リベンジの一切は、徹頭徹尾沙知のみにより執り行はれ、そのため中盤から終盤にかけての一頻り、完全に蚊帳の外に押しやられた格好の清美はいよいよラストまで登場すらしない。即ち美穂由紀の濡れ場が、起承転結でいふと承部の石神一戦で打ち止めになつてしまふ構成は、明確に失敗と片づけて差し支へないのではなからうか。確かに、千代田一郎まで含め男優部の布陣では、沙知が無理くり百合でも仕掛けない限り、締めで清美の相手役を務める、適当な面子からそもそも見当たらないといふ駒不足もあるのだが。物語はそこそこには纏まつてをり、少なくとも量的には女の裸も十二分に潤沢。その割には、主演女優を蔑ろにして済ますだなどといふ致命的な大粗相を仕出かしてみせた、珍しい一作である。それとも、穿ち過ぎに過ぎぬやも知れないけれど、当然多忙を容易に予想し得る美穂由紀の、もしかして拘束の問題?


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