真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「団鬼六 修道女縄地獄」(昭和59/製作配給:株式会社にっかつ/監督:藤井克彦/脚本:中野顕彰/原作:団鬼六『嘆きの天使』《東京三世社刊》より/プロデューサー:奥村幸士/企画:山田耕大/撮影:野田悌男/照明:野口素胖/録音:木村瑛二/美術:後藤修孝/編集:西村豊治/選曲:伊藤晴康/助監督:金沢克次/色彩計測:佐藤徹/製作担当:高橋伸行/出演:高倉美貴・小川亜佐美・伊藤麻耶・山口ひろみ『新人』・宇南山宏・兼松隆・山本伸吾・高山千草・本庄和子・白井達始・高山広士・伊藤睦啓・白石実/緊縛指導:Dr.ハルマ)。配給に関しては事実上“提供:Xces Film”か。
 緊縛され吊られた、小川亜佐美のショットにて鮮烈な開巻。薔薇で打たれた小川亜佐美が恍惚と花弁を貪り食ふと、クレジットとともに海町の駅に、高倉美貴が降り立つ。森を抜け、マリアの聖心修道院に続く吊り橋を渡るところでタイトル・イン。修道院に入るには、吊り橋を画面左から右に渡るしかないカメラ位置―逆側からは海につき撮れない―をここで確認されたし。
 病に床に伏せる修道院老院長の亜佐(高山)が、藤瀬貴子改めシスター・マリア(高倉)を、院長代理を務めるシスター・セシリア(小川)に引き合はせる。伊藤麻耶と山口ひろみは、セシリアがマリアに紹介するシスター・テレジアと英子こと、自己紹介でエコ。その夜、自慰に耽つた末悪夢に跳ね起きたマリアが火照つた体をシャワーで冷まさうとしたところ、テレジアとエコは百合の花を咲かせてゐた。翌日、黒服×グラサン×鼻髭のコンボを決めた強面・川辺(兼松)の運転で、マリアはセシリアとともに、修道院の篤い援助者である作家の熊本文造(宇南山)邸に招かれる。熊本は敬虔なクリスチャンといふよりは、ガッハッハ系の捌けた実力者であつた。吊り橋の渡り口まで戻つたマリアに、本田(山本)が詰め寄る。貴子は本田と不倫関係にあり、その現場に飛び込んだ本田の結構年の離れた妻(本庄)はオッカナイ赤い照明の中その場で手首をカッ切り、簡単にいふと椿三十郎のラスト感覚で血飛沫を噴き絶命する。その体験が、貴子が俗世を捨てるに至る原因であつた。熊本子飼ひのチンピラ三人組・健+サブ+次郎(白井達始+高山広士+伊藤睦啓)に拉致されたマリアは、熊本邸に監禁。貴子に会はせてやると本田もセシリアに誘き出され、お定まりの淫獄の幕がチャッチャと開く。配役残り白石実は、自力で一旦熊本邸を脱出したマリアが逃げ込む、森の中の発電系か上下水道系か、何かの設備を管理してゐる人。
 藤井克彦昭和59年第一作、高倉美貴ロマンポルノ第三戦。何はともあれ、高倉美貴の魅力を通り越した威力がレジェンド。ローターを仕込まれた膣を大仰な貞操帯に塞がれたマリアが、熊本が弄ぶリモコンに操られ美しい表情を苦悶に歪め、素敵にグラマラスな肢体を妖艶に躍らせるシークエンスの破壊力は圧倒的。反面といふか何といふか、先様はピンク映画とは違ふらしいが所詮は裸映画は裸映画。ロマンポルノ何するものぞ、素面の劇映画としての中身は感動的なまでに別にない。熊本の関心が自身からマリアに移つたセシリアの嫉妬を展開を貫く唯一の縦糸に、最後は車をボカーンと爆発させてゴーゴー燃やせば何とかなるだらう。確信犯的にクリシェ通りのラストはスカッと清々しく、被虐の痴態で劣情をタップリと刺激した後には僅かな余韻すら残さない。シネフィルに喰はせるのは勿体ない、まこと腰の据わつた量産型娯楽映画。消費されてナンボだと捉へるならば、この手の一作こそがポップ・カルチャーの鑑だ。

 ひとつ激しく引つかゝつたのが、熊本の心を取り戻さうとするセシリアに解放されたマリア―と本田―が、吊り橋を右から左に逃げるカット。縄地獄の舞台は、熊本邸でないの?何で修道院方向から逃げて来るのよ。そもそも、それでは二人を熊本一行が車で追跡するのとも齟齬を来しかねない。印象的なショットが欲しかつたのかも知れないが、猛烈に無用な一手間にしか映らない。


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