真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「人妻痴漢教習 バックからOK!」(1998『痴漢教習所 握つて!』の2015年旧作改題版/製作:フィルム・ハウス/提供:Xces Film/脚本・監督:坂本太/企画:稲山悌二《エクセス・フィルム》/プロデューサー:伍代俊介/撮影:創優和/撮影助手:ジョナ・バベラ/照明:小峯睦男/照明助手:野田友行/助監督:羽生研司・加藤義一/ヘアメイク:松本貴恵子/製作担当:真弓学/スチール:本田あきら/編集:金子尚樹《フィルム・クラフト》/効果:東京スクリーンサービス/出演:高橋真祐美・林由美香・村上ゆう・久須美欽一・前川勝典・山本清彦)。
 大郊外のマイホーム新居での、常盤雛子(高橋)と何だか元気のない夫・耕作(山本)の夫婦生活。雛子はあれこれ積極的に手を尽くすも、往復三時間の通勤とローン返済目的の残業に屈し、終に勃たない耕作は面目なささうに断念。ポップに雛子が悲鳴を上げると場面が昼間にと時制から一変、雛子の姉・小泉美沙(林)が一人で運転する、「大山パーソナルドライビングスクール」(以下OPDS)の教習車。喘いでゐるのか、明らかに尋常でない美沙の様子を抜いてタイトル・イン。美沙が教官の指を求めるや、OPDSの校長・大山(久須美)が潜めてゐた身を起こす。再教習と称して美沙と大山が車中で致す一方、耕作から心因性勃起不全の診断書を突きつけられた雛子は一念発起。耕作を送り迎へするための、免許所得を決意する。後述する村上ゆうと前川勝典の顔見せと一仕事挿んで、雛子は相談した美沙に紹介された、OPDSの門を叩く。玄関にさりげなく掲げられた、“無認可”の文言が気が利いてゐる。
 改めて配役残り村上ゆうと前川勝典は、OPDSの痴女教官・永野と教習生の、組で唯一人免許を持つてゐないヤクザ。学科は免除の最終検定試験、ガッチガチの強面に扮した前川勝典に村上ゆうが投げる、「行くぞチンピラ」の名台詞が笑かせる。
 工藤雅典の最高傑作、「美人おしやぶり教官 肉体《秘》教習」(2001/橘満八と共脚/主演:岩下由里香)くらゐしか探してみると案外見当たらない、運転教習所ピンクの先陣たる坂本太1998年第二作、何気に久須美欽一と前川勝典が両作に皆勤してゐるのが偉い。何はともあれ、台車にマルッと載せた車を引つ張りつつの撮影で、運転しながらの濡れ場をガンッガン繰り出す度量が素晴らしい。坂本太の些末に脇目もふらぬ逆説的にストイックな演出は、例によつてセックスと運転教習とが直結した底の抜けた世界観に、僅かなりとて疑問を感じさせることもなく。フットワーク抜群の林由美香と村上ゆうに、超絶美乳を誇るエクセスライクな主演女優は、正直作り物臭いところまで含めて御愛嬌。手堅い男優部にも穴はなく、六十分面白可笑しく女の裸を楽しませて、後には何にも残さない。これはこれでこれでもピンク映画のひとつの完成形、量産型娯楽映画の大山の中にあつて、慎ましやかに輝く宝玉の如き一作である。


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