真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「女看護師 やすらぎの美乳」(2014/製作:ラボアブロス/提供:オーピー映画/監督・脚本:田中康文/撮影:飯岡聖英/照明:ガッツ/編集:酒井正次/音楽:小鷹裕/助監督:菊島稔章/監督助手:小関裕次郎/撮影助手:海津真也/照明助手:宮原かおり/メイク:大橋茉冬/タイミング:安斎公一/応援:小林徹哉/協力:小川兄弟/出演:岡田智宏・加藤ツバキ・愛田奈々・尾嶋みゆき・なかみつせいじ・久保田泰也・本多菊次朗・野村貴浩・池島ゆたか・牧村耕次)。
 シャンデリアからカメラがミサトの屋内を左から右にパンすると、深刻な風情の岡田智宏と野村貴浩が卓を挟む。室井ファンドが経営破綻、莫大な借金を抱へた滝沢雅也(岡田)はお抱へ会計士の佐山(野村)にミサトニックな持ち家込みで財産を全て処分し、残りは郷里で工面する旨を伝へる。室井ファンドに吸収合併された、雅也が社長の金融会社「クリックマネー」―実にそれらしい社名だ―も畳む腹を固めたところで、えらく淡白なタイトル・イン。これ何処なんだろ、実家は何回か観た気もする山間の平屋の一軒家。雅也の妹・晴美(尾嶋)と、家業である林業を継いだ、雅也からは年上の義弟となる入婿の徹(なかみつ)が守る滝沢家では、場面によつては全然矍鑠としてもゐる祖父・修一(牧村)が床に伏せ、訪問看護士の水川真理恵(加藤)が出入りしてゐた。雅也らの両親の去就は、父親も雅也と同じく故郷を捨てたことらしき以外には一切語られない。
 配役残り愛田奈々と本多菊次朗は雅也馴染みのホステス・かおりと、友人の不動産屋・梶弘嗣、愛田奈々の妖艶な夜の蝶ぶりが超絶。梶のスマートなガッハッハ調も、本多菊次朗の持ち芸。久保田泰也は真理恵の婚約者、農家の本田幸一。狭い田舎につき、滝沢家とも付き合ひなり面識がある。そして恩義に報いてか、田中康文映画に於いて大きいか重厚な役を与へられる傾向が窺へる池島ゆたかが、室井ファンド社長の室井治。雅也が室井と会食を持つかおりが働く店が、ミサト―あるいは雅也宅―の居間に幕を張つて誤魔化しただけといふ安普請は、結構目立つ。それはさて措きその件、自らの手の内がかおりから室井に洩れてゐることを察した雅也と、スッ惚けてみせるかおりを音声―乃至は台詞―情報に頼らず目線と表情のみで描くシークエンスの緊張感は素晴らしい。
 田中康文2014年第一作、2013年第二作に当たる薔薇族(未見)含め通算第八作、大蔵第六作。加藤ツバキ的にはザックリした初陣にして田中康文のピンク映画前作「人妻エロ道中 激しく乗せて」(2013)と、対照的にフェミ―ニン―フェミした第三戦の浜野佐知が古巣に復帰したデジタル・エクセス第四弾「僕のオッパイが発情した理由」(脚本:山邦紀/主演:愛田奈々)との、ちやうど中間の印象を受ける、何れの加藤ツバキも実に捨て難い。ついでに岡田智宏は鳥肌実みたいな髪型、この人は二の線にしては、散発的に突飛な頭をしてゐる気がする。加藤ツバキはある意味悲運の主演女優ともいへるのか、結果的に展開の蚊帳の外に置かれた前回に続き、今回は名実とも明確にビリングの頭を岡田智宏に譲る。三度目の正直をと行きたいところではあるのだが、「僕のオッパイが~」からも結構間が空いてゐるのでそれも望みは薄さうだ。話を映画の中身に戻すと、矢尽き刀折れ悄然と田舎道を歩く岡田智宏をロングで捉へたショットで目を見開かされる、火を噴く飯岡聖英の撮影にも、意図的にかさして抑揚を欠いた山町の日常と、雅也が想起する華やかなりし頃とが当然濡れ場にも尺を割かれつつ交互に連ねられる間に、次第に目も慣れて来る。結局、雅也が火の点いた尻は疎遠にしてゐた筈の祖父に拭いて貰ひ―縁がないゆゑ相場が皆目見当もつかないけれど、山ひとつの権利書が五千万にしかならないものなのか?―返す刀で田舎者の農夫から加藤ツバキを寝取るとは随分と都合のいいお話だな、と呆れかけたところで、鮮烈に叩き込まれる昭和の映画のやうな結末には衝撃とともに深い感銘を受けた。スローモーションから、カット跨いでカメラが引く辺り完璧。尾嶋みゆきと久保田泰也の下手な訛が強過ぎて、何をいつてゐるのかよく判らん難点には耳を塞ぎいい映画を観た、とおとなしく満足して小屋を後にすればいいものを。余計な注文を垂れると、口許から締りのない野村貴浩が、硬質な劇中世界の中で如何せん弱さを感じさせる。ここに平川直大が居たとしたら、持ち前の突進力でラストの決定力も更に増したのではなからうかとの思ひを残さぬではない。それはただ単にお前が平川直大のファンだからだろ!といふツッコミに対しては、特に筆を濁すでもなく受け容れる。


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