真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「若妻の性欲 だらしない肢体」(1991『若奥様狩り 性感帯をなぶれ!』の2008年旧作改題版/製作:シネマアイランド/提供:Xces Film/監督・脚本:金田敬/プロデューサー:鶴英次/撮影:下元哲/照明:清野俊博/編集:菊池純一/音楽:アントニオウノキ/助監督:松岡邦彦/プロデューサー補:光石冨士朗/監督助手:安藤尋・加賀宮康子/撮影助手:佐久間栄一/照明助手:白石成一・山田聖二/編集助手:田中小鈴/スタイリスト:星輝明/メイク:永江三千子/スチール:石原宏一/製作進行:福山健弥/録音:福島音響/現像:東映化工/出演:須磨れい子・五島めぐ・爆発村とをる・鶴田靖・小林節彦・山本竜二・岸加奈子・内藤忠司・繁田良司・鎮西尚一・大工原正樹・常本琢招・山岡隆資・小沢禎二・天原天女・七里圭・吉岡淳哉)。コンプなスタッフ並びにキャストのデータは、京都は七条のピンク映画館「本町館」公式サイトの、フィルムから写して記録したといふ上映済み作品記録に拠る。
 門司港発祥のバナナの叩き売り、客寄せ口上に節をつけた競り唄である「バナちやん節」を口ずさみながら、結婚ブローカーの村岡(小林)が東京タワーをブラつく。金も入れずに覗き込んだ展望鏡を、戯れにカメラの方へ向けたところでタイトル・イン。中村幻児主催の雄プロダクション出身、松岡邦彦、下元哲らに提供した脚本やそこそこの本数のVシネ監督作で知られ、2006年には「青いうた~のど自慢 青春編~」で遂に一般映画デビューも果たした金田敬の監督デビュー作にして、唯一のピンク映画である。
 万国旗でデコレートされたトンチキな部屋に同居する、フィリピーナのはるみ(須磨)とさゆり(五島)。さゆりは姉のやうに慕ふはるみが、日本に留まる目的で踏み切らうとしてゐる偽装結婚に対して感情的に反対してゐた。乳も豪快に放り出し二人がギャーギャー諍ひ合つてゐるところに、ピンサロ店員のケンちやん(爆発村)が迎へに来る。村岡は自室で、別れた妻である今日子(岸)を抱く。炬燵を活かした濡れ場の、立体的な展開が光る。事後今日子は村岡に、再婚することを告げる。後にも先にも岸加奈子の出番はこの一幕のみ、少々勿体ないか。
 東京タワーで、はるみは村岡・芳介(山本)と落ち合ふ。芳介が、村岡が斡旋したはるみの偽装夫だ。ラブホテルの一室、ホテルキーを御幣代りに、斎主は村岡の二人の結婚式がコミカルに執り行はれる。店での習慣で「一気」コールがないと飲めないはるみは、三々九度に模したビールを一息に飲み干してしまふ。
 さゆりも好きといふ設定で、繰り返し劇中歌唱される「バナちやん節」。�据がれて海を越え売られに来たバナナと、いはゆるジャパゆきさんとを重ね合はせてゐることは明白であらう。尤もそこに不法在留者としての闇が形式的には描かれても、作劇のトーンとしての暗さは概ねない。ともに市民社会のメインストリームからは外れた者同士の、惚れた腫れたがひとまづは活写される。とはいへニューシネマのやうな肌合ひはそれはそれとして買へつつ、人死にをドラマの動因として安易に軽んじる態度には、当サイトとしては賛同しかねる。加へてその件に於いても、ピンクだから仕方がない、といふのはそれをいつてしまへば元も子もないが、ハイゼットを実際に川に沈められなかつたのは正直苦しいか。木端微塵に破綻する訳でもないものの、最終的にこの人とこの人とが結ばれるのかといふ点に関しては、あちこち説得力が足りず、上滑つた顛末であるといふ感は否めない。須磨れい子・五島めぐ・岸加奈子と超強力な女優陣に支へられた濡れ場は十七年の歳月を些かもモノともしない威力に溢れながらも、小林節彦は兎も角爆発村とをる(ポスターには“松村透”)が活きが悪くはないとしてそれだけで弱過ぎる。さゆりの絡みの相手を務めるのはケンちやんしか居ないといふのに、爆発村とをる登場の瞬間から商業映画の体を成し得なくなるのが大いに苦しい。狙ひ過ぎたみせよ、画面が暗くて何が何だかよく判らないカットも二箇所派手に目立つ。全体的な感触は決して悪くはないけれども、痒いところに手の届かないデビュー作といへようか。尤もかういふ球を、この期に臆することなく投げ込んで来るエクセスの姿勢は買へる。

 キャスト中、本篇クレジットのみの内藤忠司以下、十人中監督が六名も名前を連ねる―内藤忠司・鎮西尚一・大工原正樹・常本琢招・山岡隆資・小七里圭―妙に豪華なその他出演者は、ほかに特に見当たらないゆゑ概ねはるみとさゆりとが働くピンサロの客か。明確に見切れてゐた中では、荒木太郎映画で見覚えのある内藤忠司しか確認出来なかつた。松岡邦彦のデビュー作で主演の一角を張つた七里圭ならば、正面から抜かれれば視認出来るつもりではあつたのだが。鶴田靖はピンサロ店長。


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