真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「恥知らずシリーズ 不倫依存症の妻」(1996『人妻パチンカー 玉ころがし』の2009年旧作改題版/製作:サカエ企画/提供:Xces Film/監督:新田栄/脚本:岡輝男/企画:稲山悌二/撮影:千葉幸男/照明:高原賢一/編集:酒井正次/音楽:レインボー・サウンド/助監督:佐藤史/監督助手:北村隆/撮影助手:ウオン・オンリン/照明助手:原康二/録音:シネ・キャビン/効果:中村半次郎/現像:東映化学/出演:岡崎ももこ、小川真実、早乙女宏美、平岡きみたけ、野口四郎、丘尚輝、鈴木ミカ、名執亮太、本多之秀、三浦丈典、秋山晃一、渡辺真、佐々木智明、日野元太、ブルックリン・ヤス、辻一子、久須美欽一/友情出演:田口あゆみ)。出演者中、丘尚輝から辻一子までは本篇クレジットのみ。友情出演の特記こそないが、田口あゆみの名前は新版ポスターにも載る。
 夜の中矢家、夫婦生活の事後あれやこれや旅行パンフレットを眺めながら楽しげに思ひを巡らせる夫・恭介(平岡)に対し、妻の紀子(岡崎)は気が気でない。新婚当初は経済的理由によりハネムーンを断念せざるを得なかつたものの、三年の倹約生活の末に漸く、纏まつた額の貯金が貯まりつつあつた。さういふ次第で恭介は何処に行かうかあそこがいゝかなと心を弾ませてゐつつ、ところが、ところがである!実はといふか何とといふか、紀子が選りにも選つて、しかも止めた約束のパチンコで貯金の大半を溶かしてしまつてゐたのだ。これ、仮に己が恭介のポジションで当事者であつた場合、確実にお縄を頂戴する自信がある。以前ノーパンで打つてゐた際―その前提からよく判らん―に、幻の20連チャンを引き当てたといふ伝説を持つパチンコ主婦仲間の田村涼子(小川)に相談してみたところ、涼子は紀子に、あつけらかんと主婦買春のススメを説く。そこで回想パートに登場する久須美欽一は、かつてその日負けた涼子が身を任せたこともある、パチンコ名人の土木作業員・吉川幹夫。折がいゝのか悪いのか、店内に吉川を見付けた紀子は、微塵も呵責を感じさせるでなく教へられた通りの段取りで、吉川に抱かれてはみたけれど。渡された五万の金では到底埋まる穴ではなく、軍資金だと注ぎ込んだパチンコには、案の定負ける。学習能力皆無のバカが馬鹿を重ねてゐる内に、終に紀子の巨大粗相は恭介に発覚。紀子が帰宅するとこれまで我慢して来た酒に既に酔つてゐた恭介は、当然の怒りを爆発させ夜の街に消える。
 jmdbのデータを真に受けると、実は今作が記念にならないピンク最終作となる早乙女宏美は、足下も覚束ないほど泥酔した恭介を、盛り場にてキャプチュードする如月真子。ベッドの上で意識を取り戻した恭介に、全裸になつた真子が迫る。当惑と逡巡とを振り切り、恭介がゴーの腹を固めたところで、怖いお兄さん登場。野口五郎との近似は髪型くらゐしか認められない野口四郎は、真子のスレイブ(護衛機)あるいは美人局・菊池健志。菊池が愕然とする恭介に、東京湾水泳大会―正確には水没大会―と引き換への、百万円を要求もしくは強要する。それにしても、最早輝かしいまでに類型的なシークエンスである。ある意味、プログラム・ピクチャーといふものはそんな塩梅で丁度いゝ時もあるのかも知れない、何せプログラムされてゐるのだから。
 店員役の丘尚輝から思ひのほか大量にクレジットされるその他大勢陣は、主にパチンコ店店内に見切れる皆さん。その中でも、菊池に渡す百万の工面に追はれる恭介が競馬に続き、スクラッチ式のインスタント宝くじにも撃沈する件では傍らに新田栄も姿を見せる、この人何気に出たがりか。そこかしこで画面を締める貫禄は流石と唸らされざるを得ない田口あゆみは、涼子のパチンコ友達。負けた涼子に缶コーヒーを差し入れし労ふ一幕があるのだが、短い繋ぎのカットながら、小川真実と田口あゆみの2ショットがもたらす安定感は比類ない。
 焦燥した恭介は最後の一万円札を握り締めパチンコ店に赴くかとしたところで、パチプロ並の腕前を誇る菊池と鉢合はせる。その場の勢ひで、恭介が勝てば百万は御破算、但し負けると倍額の二百万を菊池に支払ふといふ条件での、パチンコ勝負をする破目になる。ところが消耗した恭介は交通事故でリタイア、代つてそもそもの元凶たる紀子が、夫婦の命運を賭け菊池との最終決戦に挑む。とかいふクライマックスに至る展開は、配置済みの一発逆転必殺技の布石を踏まへても、パチンコ・バトルものとして実は定石通りの磐石さを誇る。仕方なく時代に後れる点は差し引いても、実用的な攻略法の類は一切盛り込まれないが。とはいへ、そんな折角きちんと誂へられた卓袱台を豪快に引つ繰り返してみせるのが、誰あらう例によつてのエクセス・クオリティを爆裂させる主演女優の岡崎ももこ。乳も尻も大きいといへば確かに大きいくはあれ、まあ腰周りも太い、といふか全体的な骨太感が半端ない。加へて、この人誰かに似てるんだよなあ・・・・?などと首を捻る余地もこの期には存在しない。当時としては兎も角現在の目からすれなば、正しく瓜二つとはこのことか、まあお笑ひトリオ「ロバート」の秋山竜次にソックリな女である。無論、一欠片たりとて有難くなどない。そして、そんな自分よりデカい女房役の相手を務める平岡きみたけはといふと、これ又何と綺麗なマッシュルーム・カットよ(笑。夫婦生活の濡れ場に際しては、あつて然るべき煽情性を明後日なファニーさが凌駕する。直截にいふならば珍しく、物語本体は完成してゐるだけに、紀子役だけでももしも仮に例へば林由美香であつたならば、一歩間違へれば娯楽ピンクの傑作として歴史、の片隅にその名を残して、ゐたかも知れない一作。とまでいふのは、流石に筆を滑らせるにも過ぎるであらうか。一件落着後、オーラスの紀子と恭介の絡みの前には、早乙女宏美の緊縛もお約束程度に差し挿まれる。但しこの件、屈折したお仕置きぶりはストレートに洒落てゐる。

 ところで、いはずもがなをいふが、新題にある“恥知らずシリーズ”といふのは清々しく何のことだかサッパリ判らず、下の句も下の句で感動的に適当極まりない。新田栄の過去の作品群の中に該当するタイトルが見当たらなければ、昨今の旧作改題を見渡してみたところで、別の監督まで含めても同シリーズが冠された他作は存在しない。事こゝに至ると聖性さへ漂はせるアバウトさではある。大体がぞんざい感が唸りを挙げる、旧題も旧題なのだが。何でだか何にだか、愛ほしいやうな気持ちにすらなつて来た。


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