真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「四十路のをばさん 狂ひ咲き」(1995『をばさんと熟女 -たらし込め!-』の2003年旧作改題版/製作・企画:フィルムハウス/提供:Xces Film/監督:大門通/脚本:有馬仟世/プロデューサー:伍代俊介/撮影:原田清一/照明:斉藤久晃/編集:酒井正次/音楽:伊東義行/助監督:上田良津/撮影助手:橋本彩子/監督助手:加藤義一/出演:青木ゆきの・大橋和美・栞野ありな・大場政則・久須美欽一・平賀勘一)。助監督が上田良津で、更にその下に加藤義一がついてゐるといふのが興味深い。上田良津は、なかなかにソリッドなピンクを撮つてゐたやうな記憶がおぼろげにはあるのだが、一体何処に行つてしまはれたのであらうか。
 開巻、偽らざる看板に打ちのめされる。かずみ(青木)は光次(大場)との事が済むと、美味しいものでも食べて精をつけろと小遣ひを渡す。光次は、かずみがシャワーに消えたのを見図らつて金庫の中から更に金を抜く。カットの変り際に細かく配られた堅実な配慮は買へるが、どうにもガチ四十路の青木ゆきのには何処に、あるいはどうやつて喰ひついたものか皆目見当もつかない。小生はまだまだ、修行が足りぬといふことか。その修行は積むべきなのか積まなくとも構はないのかは、よく判らないが。
 かずみはパブを経営してゐた、従業員はバーテンの光次に、若いアルバイトのあけみ(栞野)。首から上は十人並ながら若々しく美しい栞野ありなの肢体に、辛うじて映画が救はれもした感が強い。店にもう一人、新しい女が現れる。若い頃にかずみと働いてゐたが、寿引退。したものの、離婚を期に夜の街に出戻つて来たあけみ(大橋)である。店に入るなりなかなかいい店ぢやない、とタメ口を叩くあけみに対し、かずみは「店では“ママ”と呼びなさい」と釘を刺す。劇映画としての基本フレームは実はしつかりとしてゐるのだが、全てを忘れさせるのを通り越し木端微塵にしてしまふのは、青木ゆきのを更に上回るのだか下回るのだか、大橋和美の邪悪な破壊力。何でまたこのオバハンはこのオバハンで、選りにも選つて若い頃のいかりや長介にソックリなんだ・・・・、しかも致死量に達さんばかりの勢ひの厚化粧。出て来るだけで銀幕には戦慄が走り、濡れ場ともなると正視に耐へぬ阿鼻叫喚の地獄絵図が展開される。決して太つてゐるといふ訳ではないのだが、下腹に見たこともない、正確には見たくもない訳の判らない肉の付き方をしてゐる。立花満子にも匹敵する、商品化された性の最終兵器である。もしも仮に万が一、人間が、造物主に自らの姿に似せて創り出されたものだとするならば、我々はきつと、その意思からは逸脱してゐるに違ひない。
 最も禍々しいシークエンスは、ひろみは、あけみのお喋りから光次がかずみの男であることを知る。ならばと化け猫、もとい泥棒猫の血が騒いだひろみは、閉店後、光次と二人きりの店内。掃除する光次の前にいきなり裸で現れると、わざとらしく恥らつてみせながら「抱いて・・・」。お願ひしますお願ひします、もう許して下さい。何故に、もしくは何を映画に乞はねばならぬのだ。稀に見る、ショッキングであつた。光次も光次だ、喜んで抱くな。そこは普通の人間であるならば、卒倒でもするしかないところである。
 久須美欽一は大手ゼネコン(推定)の高村。平賀勘一は、高村の会社が神戸で提携する地元工務店の石山。何気に実は起承転結を手堅く纏め上げつつのラストの一戦、かずみの店の店内では、かずみ×高村、ひろみ×石山のピンサロも裸足で逃げ出す過剰な本番サービスが展開される。欠片も羨ましくないところは不思議である、といふか、いふまでもない。

 そこで踏み止まると一切話が終つてしまふのであへて四十路ツートップ、正確には四十路最凶タッグにはひとまづ目を瞑ると、といふか目が潰れてさへしてしまひさうなのだが。今作に於いてどうにも弱いのは、光次役の大場政則。若干若いといふだけで、何の変哲もない男である。ここはもう少し色男を連れて来て貰はぬことには、四十路のをばさん二人が若い男を巡つて文字通り醜い争ひを繰り広げる、といふプロットにいまひとつの説得力が欠ける。1995年当時、たとへば既に真央はじめ―当時は真央元か―や、あるいは樹かずは実働してゐた筈だ。
 「四十路のをばさん 狂ひ咲き」、確かに、四十路のオバハンが狂ひ咲いてゐる。それ以前に、旧題の「をばさんと熟女」とは何事か、目糞と鼻糞といふことか。とはいへ、これまでは完全に等閑視してゐた大門通が、ベテランの名は伊達ではなく、なかなかに堅実を誇りもすることの発見はあつた。少なくとも、それは確かなひとつの収穫ではある。今後は、もう少し注目してちやんと観て行かう。


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コメント
 
 
 
Unknown (栞野ありな)
2009-05-08 01:54:08
なにげに検索していたらたどり着きました。
首から上は人並みの栞野ですwwwww
とても懐かしかったので
コメントさせていただきます。
この作品は私の中でも色んな意味で
かなり印象深い撮影でしたwwwww
もう10年以上前になりますが
記憶に焼き付いています(色んな意味でwwwww)


作品を見て下さる方がいる事を嬉しく思います。
感想面白いのでこれからも書き続けて下さいね☆

 
 
 
>栞野ありな様 (ドロップアウト@管理人)
2009-05-08 07:47:37
 コメント有難う御座います、といふどころか、

 申し訳御座いません・・・・!
 筆を滑らせてばかりの、アホタレ管理人です。
 デス後は謹んで地獄に堕ちるので、大目に見てやつて下さい。

>かなり印象深い撮影でした
>記憶に焼き付いています>>色んな意味で

 有難う御座います、それだけで十分です、押忍!

>作品を見て下さる方がいる事を嬉しく思います
>感想面白いのでこれからも書き続けて下さいね☆

 恐縮です、ゴールデン・ウィークが明けてヘコんでも
 ゐたのですが、元気が湧いて来ました。
 
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