真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「ノーパン熟女 まくる長襦袢」(1999『和服義母の貞操帯 -肉締まり-』の2007年旧作改題版/製作:シネマアーク/提供:Xces Film/監督:下元哲/脚本:岡野有紀&小猿兄弟舎/企画:稲山悌二・奥田幸一/撮影:下元哲/照明:代田橋男/編集:酒井正次/助監督:森山茂雄/撮影助手:真塩隆英、他一名/協力:佐倉萌/出演:黒田詩織・しのざきさとみ・風間今日子・深山洋貴・杉本まこと・神戸顕一・茅茂)。見慣れぬ名前に屈し、助手勢を諸々拾ひ零す。出演者中、茅茂は本篇クレジットのみ。
 夜の山村家、階下には父の耕作(杉本)も居ようといふのに、のつけから勇二(深山)自室での、義母・里美(黒田)との濡れ場。あれれれれ?この映画一体何処から始まるのだ!?
 一流企業に勤めてはゐたものの、耕作はリストラされてしまつてゐた。不貞腐れた耕作は飲むは打つはと遊び歩き、書の道に心得のある里美は、商店街の店主相手に書道教室を開き何とか家計を支へてゐた。失職以来不能となつた耕作は妻の男性関係を邪推し、里美に貞操帯を着けさせる。
 和服義母が貞操帯を着けてゐることも、ノーパン熟女―この当時の黒田詩織が熟女?作中設定二十八歳といふのは些か逆サバか―が長襦袢を捲ることにも、最低限度の偽りはないのだが。明らかに、脚本に初めからの致命的な設計ミスが窺へる一本。
 風間今日子は、サラ金「双葉金融」―二葉とか二場かも―社長の金崎竜子。収入もないのに遊び歩く耕作は、案の定よからぬ筋に多額の借金を作つてゐた。実はレズビアンで、学生時代に二つ先輩の里美にフラれた過去があるといふ豪快な世間、より直截には劇中世界の狭さを唸らせる竜子は邪魔な耕作はチャッチャとマグロ漁船に放り込むと、利息分だと里美自身に目をつける。しのざきさとみは、勇二の担任・小久保沙紀、この人の役柄も酷い。家計を慮り大学進学を断念する勇二に対し、就職先の紹介と引き換へに若い肉体を求めるのである。一応はリアリズム志向と思しきメロドラマの中にあつて、如何にもピンクピンク然としたお手軽さは殊更に目に障る。ただ決まりかけた就職も、竜子とバックの黒崎組の妨害に遭ひ御破算に。無論、就職した勇二が父親の借金を肩代りしてしまふと、里美を手に入れられなくなるからである。竜子の卑劣で大いなる魔手に、里美と勇二は次第に追い詰められて行く。
 詰まるところは何が、本作の抱へた致命傷なのかといふと。冷酷な運命に翻弄される男と女の、物語としては確かに成立してもゐるのだが、問題はその女と男が、義母と血の繋がらない息子である必要が別にないところにある。雑な定型かも知れないが、いはゆる“義母もの”といふと、互ひに親子であるといふ関係性に基く障壁の存在は意識しながらも、惹かれ合ふ実の親子程には歳も離れぬまだ若い義母と多感な時期の、端的にいへばヤリたい盛りの息子。四の五とつかず離れずした挙句に、終には禁断の一線を越える。この、“終には禁断の一線を越える”件が、いはゆる“義母もの”のカタルシスが極大となる瞬間であり、このジャンル最強の決戦兵器となる筈であらう。ところが今作はといふと、開巻いきなり既に里美と勇二は乳繰り合つてしまつてゐる。切り札を馬鹿馬鹿しくも初めから切つてしまつた以降の展開は、何も義母と息子との物語である必要は特になからう。単に、人妻と若い間男であれば事済むだけの話である。大胆にも校内の踊り場での沙紀と勇二の絡みに際しては、下元哲は何を血迷ふたか先に達した沙紀に遅れて絶頂を迎へた勇二が、顔射を望む沙紀目がけて発射する瞬間にスローモーションを使用する。などといふ、腰も粉と砕ける見せ場も無くはない。ものの、最終的には今回の下元哲は、中途半端なドラマ志向への色気を見せた以前に、完全に作劇の勘所を失してしまつてゐると難じざるを得ない。殆どノーメイクの素顔をションボリさせながら、いはば右から左に流されて行くばかりで、凡そ十全たるメロドラマのヒロインたり得るにはどうにも心許ない黒田詩織の弱さも、矢張り痛い。因みに、二十八歳といふ黒田詩織の作中設定に関してであるが。戯れに検索を掛けてみたところ、一応昭和五十一年生―といふことは本公開年当時二十三歳―といふ公称スペックがひとつ出て来た。

 神戸顕一は、里美の習字教室に通ふ室岡周一。着物の上から抱きつく程度で、本格的な濡れ場は無し。森山茂雄ではない茅茂は、他に該当しさうな見切れ要員も見当たらない為、関西弁の「双葉金融」社員か。協力としてクレジットされる佐倉萌は、多分黒田詩織の着付け。日本舞踊も嗜むしのざきさとみも当然に着付けは出来ようが、劇中沙紀は、濡れ場非濡れ場関らず一切勇二としか絡まない。その舞台も校内に限られることから、恐らくは、残りのキャストとは完全に別働で撮影してゐたものではなからうかと推測される。


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