真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「肉体訪問販売 マルチへの報復」(2002/製作:TMC/監督・脚本:北沢幸雄/プロデューサー:飯泉幸夫/撮影:佐藤芳郎/音効:藤本淳/助監督:城定秀夫/監督助手:伊藤一平、他/出演:川瀬有希子・時任歩・水原香菜恵・千葉誠樹・内山一寿・むかい誠一・牧村耕次・かわさきひろゆき、他)。因みに、プロデューサーの飯泉幸夫と監督・脚本の北沢幸雄とは同一人物。2002年といふ製作年は、jmdbのデータより。2001年製作、となつてゐる記述もあり。
 敏腕セールスレディーである麻衣(川瀬有希子@初脱ぎ)は、ある日かつて同じ職場で働いてゐた、同じく営業マンの塚田(千葉)から声を掛けられる。半年で三千万になる仕事があるのだが、一緒にやらないかといふのである。仕事は胡散臭い、といふか灰色を通り越して余裕で黒いマルチ商法の営業であつたが、そろそろ阿漕な稼業からは足を洗ふつもりであつた麻衣は、纏まつた金の為に塚田の誘ひに乗る。
 マルチの蟻地獄を舞台にした、ピカレスク・ロマン。といふ程、洒落た代物でも別にないが(実も蓋も無い)。麻衣と塚田とが、黒寄りの灰色のマルチ商法の営業マンから、会長室の金庫から現金を強奪して逃走するに至つて何時の間にか明白な黒に染まつて行くストーリーに、特段見るべきところは殆ど無い。今作の白眉は、塚田と麻衣との、それぞれのカモが壊れて行く、あるいは逆襲を受けるシーン。
 塚田のカモは、如何にも寂しげな女の純子(時任)。塚田の枕営業の虜になり、次々に孫会員を勧誘し、金を注ぎ込む。ある日塚田が訪ねたところ、商品のダンボールで埋まつた薄暗い部屋。パンティの尻をこちら(塚田)側に向け、うづくまる純子。振り返ると、鼻を黒く塗り、ヒゲを描いた純子はネズミに!・・・・・凄い、凄過ぎる。マルチ、即ちネズミ講に絡め取られた女が壊れた果てにネズミになる!北沢幸雄の愚直が、ピリオドを越えて余人の手の届き得ぬ破壊力に到達した瞬間である。このシーンだけで、北沢幸雄の名前に釣られた甲斐もあつたといふものだ。愕然とする塚田に、更に純子ネズミは「《けふはピルを飲んでゐないので》沢山子供を産むチュー★」、と壮絶な追ひ討ちをかける。畏るべし、北沢幸雄。
 麻衣のカモはプロレス者(内山一寿/役名失念)といふ設定。同じく商品のダンボールで埋まつた部屋、商品を買ふ為の借金の金利も払へないと打ちひしがれるカモを麻衣が冷たくあしらふと、カモは逆上。麻衣にスリーパー!逆エビからアームロックに移行!微妙にあちこちおかしいストロング・マシーンズのレプリカ(?)マスクを被ると正義のマスクマン「グレートサンダー」に変身。正義のグレートサンダーがお前の穢れた肉体を退治する、と四の字固めで麻衣を責め立てると、「両手は空いてるだろ、脱げ!」。うわ、うわははは。北沢幸雄の豪腕が火を噴く。この人は、紙一重を越えた天才に違ひない。いふまでもなく、私の品性は歪んでゐる。更に首四の字に移行すると、今度は下半身だ!グレートサンダーは麻衣に自慰を強ひる。そのやうな状態で、出来る訳もないが。勿論加減してゐるであらうとはいへ、男から関節技をかけられて、体の小さな川瀬有希子は苦しくない筈がない。苦悶する麻衣の姿は、恐らく演技ではあるまい。初めての裸仕事にして、いきなりのスパルタンな現場。北沢幸雄は鬼である。観てゐる分には、人を騙した者が竹箆返しを喰らふ懲悪的要請を過剰に超えた、頗る面白過ぎるシークエンスではあるが。

 牧村耕次は、マルチ組織「ファメール」会長。清々しいまでの悪党ぶりを披露。水原香菜恵は会長秘書、兼愛人。肛門性交に励むシーンで、水原香菜恵の丸々とした尻に牧村耕次がワセリンを塗り込むシーンは燃える、あるいは萌える。むかい誠一は、都合二度登場する麻衣の以前のカモ。なかみつせいじの量産型とでもいつた風情がある。かわさきひろゆきは、棚から牡丹餅が転がり込んで来るシンデレラ乞食。乞食メイクが汚し過ぎで、ビフォア・アフターでかわさきひろゆきと判らないのは微妙に問題では?
 他に、ファメール幹部に、確認出来ただけで石動三六と国沢実とが登場。国沢実は、国沢星実とクレジット。それは何と読めばいいのだ。
 結局奪つた金も、麻衣と塚田の手元からすり抜けて行く。それでゐて、再起を期した爽やかなラストを迎へる辺りも、調子がいいといへば調子がいいが、北沢幸雄が北沢幸雄であるところの所以ともいへるのか。娯楽映画の着地点としてひとまづ前を向かうとした、志向は明らかに表れてゐる。


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