真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「ザ・種馬」(昭和61/企画・製作:イーストホーク/配給:新東宝映画/監督:川崎軍二/脚本:池田正一/企画:北海三郎/撮影:田中正博/照明:並木武彦/録音:杉崎喬/編集:鵜飼邦彦/音楽:井口明夫/美術:多摩川美術/助監督:福原ゆかり/撮影助手:望月真寿男/照明助手:白倉考/監督助手:稲葉雄大/メイク:湯沢あずさ/出演:美波里花・田代葉子・佐竹一男・番哲也)。助監督の福原ゆかりが、ポスターには何故か福原ユカリ。
 牧場の風景に重ねられる、素朴なタイトル・インがいい感じ。
 新婚旅行に出てゐた厩務員の信次(番)が、新妻の弘子(田代)を伴ひ牧場に戻つて来る。牧場主の良平(佐竹)は、仔細は清々しく省略されるが妻・加奈(美波)の不注意により下半身不随、かつ不能の身にあつた。加奈は罪悪感もあつてか良平に甲斐甲斐しく仕へつつ、弘子と信次が否応なく発散させる新婚夫婦のセクシュアルな空気にもアテられ、矢張り拭ひ難い、肉の欲望への飢ゑを覚えることは禁じ得なかつた。そんな妻の風情を酌んだ良平は、浮気すら公認するが加奈にはそのやうなつもりは毛頭ない中、良平の牧場でも、馬の種付けが始まる。目にした文字通り長大な馬の陰茎に、思はず加奈は胸をときめかせる。
 とかいふ、大筋を纏め上げたところまでで、以降は物語を膨らませるなり枝葉を茂らせる営みを感動的に放棄してしまふため、中盤以降が猛烈に中弛む。正直にいふが小屋の暗がりに包まれ前にすると、相当睡魔に抗ふにも困難の伴ふ一作ではある。土台がお馬さんの一物が人間の女の女陰に入らう訳が到底なく、よしんば、もしも仮に万が一入つたとて、我が国の律に照らせばおいそれと撮れよう筋合にもない。実際さうであるやうに、精々、馬と女を交互に捉へたイメージ映像風の出来栄えにしかなり得まい。さうなると、この期に漸く気がつくといふのも随分と間の抜けた話ではあるのだが、クライマックスがさういふ服の上から痒い所を掻くが如きものにしかならない以上、この手の特殊―あるいは特撮―ジャンル作が事前に惹起される衝撃的な好奇はさて措き、結果的には得てして決定力に欠き漫然とした仕上がりとなつてしまふのも、ある意味仕方のない道理といへるのかも知れない。尤も、ラストは小さな赤いヒールを履いただけの姿で白馬―劇中加奈のお相手を務めるのは、黒い別の馬―に跨つた、美波里花の―ほぼ―全裸乗馬といふショットの威力で意外と綺麗に締める。もしかすると、逆に乗馬スキルから逆算してのキャスティングなのか。超絶のカメラワークを駆使しお馬さんの首で巧みに股間は回避しながらも、どうしても数カット覗かずにはゐられない陰毛?は、当時としては結構センセーショナルでもあつたのであらうか。前貼りを全く使用しないとも考へ難いゆゑ、別のものである可能性もあるが、兎も角それらしき箇所に黒い何某かがチラチラ見える。

 今作は2003年に「人妻と馬 うづく快感」といふ新題で既に一度旧作改題されてゐるが、実は更に大きく遡る1991年にも、「馬と人妻」といふシンプル極まりない新題で旧作改題されてゐる。となると今回は何と、旧題そのまゝながら都合三度目の新版公開といふ寸法になる、凄まじい世界に突入して来た感が強い。但し、繰り返すが当サイトは、未見の旧作は未知の新作と何ら変りはないとする姿勢につき、昨今番組編成上を吹き荒れる旧作の嵐に対しても、それはそれとして上等と挑むものである。無論、元気に新作がメキメキ製作されるならば、それが最良であるのはいふまでもない。


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