真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「痴漢電車 みだらメス発情」(2001/制作:セメントマッチ/配給:大蔵映画/監督:池島ゆたか/脚本:五代暁子/撮影:清水正二/編集:酒井正次/音楽:大場一魅/助監督:佐藤吏/出演:佐々木麻由子・鏡麗子・水原かなえ・美月星美・河村栞・月夜野卍・数多こよみ・鈴木ぬりえ・色華昇子・千葉誠樹・幸野賀一・神戸顕一・アロハ兄弟《新人》・如月小雪)。2003年に、「痴漢通勤快楽2 濡れた終着駅」と改題されてもゐるものの、今回は旧題のまま観たものである。
 定職にも就かず、生涯を痴漢一筋に捧げたその世界では名の知れた、通称“イカセリングの国松”(千葉)。イカセリングといふのは、少年マンガに出て来る大便のやうな突起物の付いた指輪で、痴漢時にはその突起を掌側に裏返し、女陰を攻めるといふ塩梅である。ストイックな痴漢、といふ形容矛盾にも程があるやうなキャラクター造型に、今回池島ゆたかと五代暁子とは観客に些かの疑問も抱かせることなく成功、その点は非常に天晴である。
 既に初老の国松には、妻と一人娘とがかつて居た。痴漢を通して翻訳家のヨシコ(佐々木)と出会ひ、後に結婚する。一女のカオリを儲けたが、カオリは二歳にして病死。程なく、ヨシコも死んでしまふ。更に国松には数十年前、痴漢した女を公園のトイレにまで連れ込み強姦しようとしてゐたところを一喝して以来、国松を慕ひ痴漢稼業を共にして来た弟筋の繁(幸野)が居た。繁は妻・香代子(鏡)の島根の実家の旅館を手伝ふ為、東京を離れることになる。繁は世知辛い東京を離れ、島根で自分と昔ながらの痴漢を続けるやう国松を誘ふが、国松は妻と愛娘との墓を守る為、東京を離れることを拒む。そんなある日、国松は真つ赤なランドセルにほほづき色のワンピースで、自分の方をじつと凝視する女の子(如月)の視線に気付く。
 今回は御存知「鉄道屋」の翻案らしいが、勿論当方ドロップアウトは「鉄道屋」は未見―何が“勿論”なのだ―につき、その件に関しては一切さて措く。「どんな人生であれ、ひたむきに、精一杯生きた人間はどこか美しい」。冒頭字幕で語られるさういふテーマに基き、痴漢一筋に生きた男の生涯を描いた物語である。逆からいへば、痴漢といふ、一般論としては低劣で反社会的な営みに生涯を費やした男を、それでも、そのままに美しく描き上げる。さういふ力業に果敢に挑み、そして見事に為し得てみせた一作である。よく出来てをり、観客からも好評を博したのであらう。旧版そして改題後、既に故福岡オークラで何度となく観てゐる。逆に、これまで感想を書いてゐなかつたことが不思議なくらゐだ。
 美月星美は開巻、神戸顕一に一旦は痴漢された後、恐喝して金を巻き上げるズベ公女子高生。しつかり脱ぐのはビリング中この人まで。美月星美が神戸顕一から金を巻き上げる現場を目撃し、東京に見切りをつけた繁は国松を島根に誘はうと思ひ至る。月夜野卍・数多こよみ・鈴木ぬりえ・色華昇子、は痴漢の被害者要員。勿論、色華昇子はギャグ担当。その際の、クロスカウンターな被害者は繁(火暴)。二人組のアロハ兄弟(片方は“オサム”といふらしい、佐藤吏か)は、(多分)オサムが数多こよみをローターも併用しつつ痴漢。女が感じてゐる隙に、財布を抜き取らうとする性質の悪い痴漢。その現場を国松に目撃され、「痴漢かスリか、どつちかハッキリしろい!」―痴漢にせよスリにせよ、何れも犯罪行為なのだが―とこれ又一喝、目的を阻まれる。後に弟分も交へて国松を待ち伏せ、「お前の時代は終つたんだよ!」とボコる。河村栞は、如月小雪(8さい)の女子高生にまで成長したバージョン。如月小雪は、確か脚本家の如月吹雪の娘であつたやうな気がしたのだが、今回少し調べてみたものの確認出来なかつた。

 痴漢一筋に生きた男の生涯をストイックに、そして美しいものとして描き上げる。さういふ変則的なテーマに真正面から挑み、かつ成功を果たしてゐる。その点に関しては諸手を挙げて評価するに勿論吝かではないが、どうにも、個人的には珍しく実力を発揮した関根和美、何時もの山邦紀。他には例へば中村和愛のやうなエモーションの決定力は、今作はギリギリのところでどうにも持ち合はせない。単に好き好みの問題であるのかも知れず、上手く万人に伝へせしめられるやうな言葉が見付かりもしないのだが、どうしても、微妙なところでの乾き、のやうなものを今作には感じるものである。


コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )


« ロリ色の生下着 女ざかり、SEX... »
 
コメント
 
コメントはありません。
コメントを投稿する
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。