京都童心の会

ほっこりあそぼ 京都洛西の俳句の会
代表 金澤 ひろあき
俳句 冠句 自由律 詩 エッセイなど同好の人たちと交流

松尾芭蕉 『野ざらし紀行』 口語訳 <後半>

2024-05-05 08:28:43 | 俳句
松尾芭蕉 『野ざらし紀行』 口語訳
         金澤ひろあき
<後半>
桑名本統寺にて
  冬牡丹千鳥よ雪のほととぎす
旅寝の枕に寝あきて、まだほの暗いうちに浜のほうへ出て、
  明ぼのやしら魚しろきこと一寸
 熱田神宮に詣でて
 社頭は大いに破れ、土塀は倒れて草むらに隠れている。色々な所に縄を張って小さな社の跡を記し、あちこちに石を置いて神の名を記している。よもぎ、しのぶ草が伸び放題に生えているのは、かえってすばらしい状態よりも心がとまるなあ。
  しのぶさへ枯れて餅かふやどりかな
 名古屋に入る道中に風吟する。
  狂句こがらしの身は竹斎に似たるかな
  草枕犬も時雨るるかよるの声
 雪見に歩いて、
  市人よこの笠うらふ雪の傘
 旅人を見る
  馬をさへながむる雪の朝かな
 海辺に日が暮れて、
  海くれて鴨の声ほのかに白し
 あちらで草鞋を脱ぎ、こちらで杖を捨てて、旅暮らしのまま年の暮となったので、
  年暮れぬ笠きて草鞋はきながら
と言いながらも、故郷伊賀で年を越して、
  誰が婿ぞ歯朶に餅おふうしの年
 奈良に出る道中、
  春なれや名もなき山の薄霞
 二月堂に籠って、
  水とりや氷の僧の沓の音
 京に上って、三井秋風の鳴滝の別荘を訪れる。
 梅林
  梅白し昨日や鶴を盗まれし
  樫の木の花にかまはぬ姿かな
 伏見西岸寺任口上人に逢って、
  我が衣きぬにふしみの桃の雫せよ
 大津に出る道、山路をこえて、
  山路きて何やらゆかしすみれ草
 琵琶湖水の眺望
  辛崎の松は花より朧にて
 水口で二十年を経て、昔の友人(服部土芳)に逢う。
  命二つの中に生きたる桜かな
 伊豆の国蛭が小嶋の僧、これも去年の秋より行脚をしていたのが、私の名を聞いて、旅の道連れにもと、尾張の国まで足跡を慕ってきたので、
  いざともに穂麦喰らはん草枕
 この僧が私に告げて言うには、「円覚寺の大顛和尚が、今年一月初めにお亡くなりになった」とのこと。本当に夢のような心地がするのに、まず道中より其角のもとに申し送ったよ。 
 杜国に贈る、
  白げしにはねもぐ蝶の形見かな
 二度、熱田の桐葉様の所にいて、今や関東に下ろうとする時に、
  牡丹蘂ふかく分出る蜂の名残かな
 甲斐の山中に立ち寄って、
  行駒の麦に慰むやどりかな
 四月の末、芭蕉庵に帰って旅の疲れをはらすうちに、
  夏衣いまだ虱をとりつくさず

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