書く仕事

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「アイの物語」山本弘

2008年02月19日 20時54分52秒 | 読書


美しきアンドロイドが機械嫌いの少年に物語る千一夜物語.
う~ん.やられた.
こういうプロットがあったか.

今までのロボットものを大きく分類すると,進歩したロボットが知性を持って人間に反逆し,人類を滅ぼそうとするか,逆に人類の危機をロボットが助けるかのどちらかだったように思います.

でも,この「アイの物語」は,そのどちらでもない.

人類の危機を救うという意味では,後者なんだけど,じゃあ,何から救うのかというと?...いや,やめときましょう.
それは読んでのお楽しみということで.

「人類は霊長類である」
本当ですか?
霊長とは霊が長じている,つまり精神的に高度に発達し,他の動物より神に近い存在だというのでしょう.
何と不遜な命名でしょう.
霊が長じているだと?
霊に長じた存在が,未だに他民族を憎み,戦争で人殺しをし,テロで罪も無い子供や年寄り達を殺し続けている.政治家は賄賂をもらい,金持ちが貧困層から搾取している.
人種差別,性差別はいまだになくならない.
なぜ,黒人の水泳選手がいないのか?
考えた事がありますか?
子供達は転校生や,ちょっと名前が変わっているというだけの理由で同級生をいじめる.
こんな人類がなぜ「霊長類」と言えるのか?

これがこの小説のテーマなんです.
意外でしょ?

つまり,人間の存在自体が持つ「原罪」とでも言いましょうか?,罪深い存在である人類を***する存在としてロボットが出てくるのです.
「***する」は小説を読んだ人だけが知りうる,驚愕の結末です.

深いです.
この本を読み終えて,思いました.
これこそが「哲学」だなって.

去年,一時期,哲学に興味をもって,何冊か哲学書を読んだのですが,結局消化不良でした.

でも,この本は,つまらない哲学書の1万冊ぐらいの価値がある.

そう,断言できます.

人間の心の闇,人はなぜ生まれてくるのか?,人が生きることにはどんな価値があるのか?,また,価値がなくてはならないのか?
将来科学がもっと発達した暁には人類はどこに行くのか?
そんなことに興味がある方は,ぜひどうぞ.
ただ,エンタテイメントとしての,ドキドキワクワクだけを期待すると,満足はできないかもしれません.

テーマはあくまで人の「心」です.
自分って何?と思った事がある方なら,知的興奮を覚える1冊であることは請合います.


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