書く仕事

ご訪問ありがとう!!ミステリー小説の感想を中心に,読書,日々の雑感,映画の感想等を書き散らかしています.

「散り行く花」伽古家圭市

2017年09月26日 11時19分29秒 | 読書
「散り行く花」伽古家圭市


小説を紹介するとき、まずジャンルを示すのが普通でしょうか。
そういう意味で、この小説は間違いなくミステリーです。
ミステリーの中でも、「倒叙もの」と言われる構成を取っています。
「倒叙」とは、犯人は最初からわかっていて、探偵が、徐々に犯人を追い詰めるというものですね。
刑事コロンボや古畑任三郎がこれです。

しかし、この小説をミステリー、あるいは倒叙ものです,と紹介してしまうと、決定的な何かを伝え損ねてしまいます。

作者が伝えたいのは、謎ではなく、人間の業なのです。人が心の中に抱えたまま生まれてきて、抱えたまま死んでいく業です。
しかし,ある人は、暖かい家庭に恵まれて持って生まれた業からも逃れられる。
それが叶わず、失意のまま自ら死を選ぶ人もいる。

ミステリーという衣を着た,人間を描いた純文学作品だと思います。

美人画を得意とする絵師,茂次郎を主人公としつつ,業に苛まれる女性達(絵のモデルとなる)の生きざまが綴られる.

私としては,かなり高ポイントの作品です.
お薦めします.

コメント    この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 9月17日(日)のつぶやき | トップ | 9月26日(火)のつぶやき »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

読書」カテゴリの最新記事