書く仕事

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「水曜の朝,午前三時」蓮見 圭一

2012年05月19日 11時46分13秒 | 読書
「水曜の朝,午前三時」蓮見 圭一



実は,今「下町ロケット」を借りてきて読もうとしているのだけど,この「水曜の朝...」も2週間ほど前にブックオフで買って,読みかけになっている.
実は最近,すっかり読書のペースが落ちてしまっている.

その理由は,「引越し」だ.

以前は,通勤途中に喫茶店(カフェ)がたくさんあったので,朝の時間をちょっとずつ使って,ほぼ一定のペースで読書が進んでいたのです.

しかし,大学の近くに引っ越してからは,通勤があっという間になってしまい,途中にカフェも無く,すっかり本を読む時間が取れなくなってしまった.
大学に着いてから読めばよいと思うのだが,なぜか,大学に着いちゃうとページを開く気が起こらないんだなあ.

そんな中で,なんとか時間を作って読んだのです.
実は大部分は今日羽田空港のラウンジで読んだというのが真相.

主人公は45歳の若さで逝った翻訳家で詩人の四条直美.
直美は、大阪万博のコンパニオンとして働いていた23歳の夏に、外交官として将来を嘱望される理想の恋人・臼井礼と知り合い,恋に落ちる.

しかし,直美を絶望の底に落とすような事実があることを臼井が隠していたことが発覚し,短い恋は一度終わってしまう.
「もし、あのとき、あの人との人生を選んでいたら…」。

恋というのは障害が大きければ大きいほど燃え上がるものだが,その障害が絶望につながるものなら,そうも言ってられない.

現在なら二人は祝福された結婚をしていたに違いないわけで,結局この恋の破綻も,時代がなした破綻であり,戦後社会における差別・被差別が作ったラブストーリーということになるだろう.

直美は女性としてというより,人間として非常に複雑な感情の動きをする人として描かれており,作者の思い入れを感じるキャラクターだ.

魅力的ではあるが,難しい性格である.

現実にもこういう女性は居そうだが,難しいというのは他人からそう見えるだけであり,本人の心の中は混沌としてはいるが純粋であり,臆病でかつ愛すべき女性である.

人と人とのコミュニケーションはまさに水もの,相性しだいだが,単に相性だけでは済まされない,心の動きが隠れており,その結果として恋に落ちたり,嫌ったりすることになる.

「本当に人間関係は難しい」というのが結論というのは単純化しすぎか.

直美が娘に残した遺書のような形の文章となっているが,直美の恋の半生記であり,切なさと絶望と熱情の記録文学のような気もする.

柄にもなく,こんな恋愛物を読んでしまって...

しかし,直美や臼井を通して,自分にも恋愛の感情が心のどこかに沈殿しているのを発見してしまった気もする.

それを攪拌するのが恐い気もするというのが正直なところだ.

さあ,「下町ロケット」で理系人間の情熱に火をつけよう.


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