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風薫る道

Who never feels lonely at all under this endless sky...?

歌舞伎座新開場こけら落 七月花形歌舞伎 夜の部(7月25日)

2013-07-27 22:55:08 | 歌舞伎




今月の歌舞伎座は、夜の部『東海道四谷怪談』のみの鑑賞です。
7月は四季やらバレエやら松竹座やらと色々あったため、楽直前での鑑賞となりました。

久々の花形。
先日の仁左衛門さんのような「すごいの見た…」という感動はさすがになかったものの、初見の演目だったのでとても楽しめました♪
四千円でこれはお得。
3階最後列でも七三がはっきり見えるのが、つくづく有難かったです。


染五郎の伊右衛門。
染五郎の舞台をまともに観るのは実は初めてなのですが、声も仕草も幸四郎さんにそっくりで驚きました。血ってすごいなぁ。
でも幸四郎さんだけじゃなく、何か違うものが混ざってる・・・これは何だろう。
と一幕目でモヤモヤしていたところ、幕間の隣のおばちゃん達の会話であっさり解決。

「幸四郎よりも吉右衛門に声がそっくりね~」
「叔父と甥だからね~」

それだ!
声だけじゃなく台詞の言い回しも、時々吃驚するほど吉右衛門さんにそっくり!
染五郎は吉右衛門さんにも稽古をつけてもらったりしているらしいですが、それにしても似すぎてる。
つくづく、血ってすごいですねぇ。
彼にはぜひこの路線をつき進んで行っていただきたい。

さて、今回の伊右衛門。
なかなか良かったと思います。
色気も思っていたよりはありましたし、いかにもお梅のような子が好きになりそうなタイプの美形。
しつこさのない軽い伊右衛門なので、お岩を捨ててお梅にあっさりと乗りかえるところに説得力がありました。お岩の着物から蚊帳まで全部持ち出そうとするところの身勝手な男の演技、よかった。
幸四郎さんの演技にある一種の“クサさ”が彼にはないのも、私には好印象でした。
これからもっともっと磨いて、素敵な伊右衛門を作り上げていってほしいな。

菊之助のお岩/与茂七/小平。
こちらも可笑しくなってしまうほど父親そっくりの美貌&声の良さ。
登場した瞬間、やっぱり菊ちゃんは華があるな~と感じました。
与茂七がすっきりとカッコよくて絶品!
あいかわらず女形よりも立役の方が色気がある菊ちゃん^^;
主君の仇討ちのために身をくらませて奔走していても、売春宿には行っちゃいます。
直助からお袖を守るようにさっと動くところ、スマートで惚れ惚れした。
そして、地獄宿を去るときに直助に投げる超イヤミな捨て台詞。
「雨が降らないといいがな。なんせ今夜は振られ男がいるからなぁ」
菊ちゃん、こういうのほんと上手いね笑!
先月の助六の「ざまぁみやがれ!」を思い出すわ~。
そして悔しがる直助にお袖ちゃんとのラブラブっぷりを思い切り見せつけながら、花道を去る菊ちゃん。最高でした^^

小平。
やたらと美しく立派な小平で、どうなのかなぁ?と一瞬思いましたが、考えてみれば小平は昔の主君のために自分の命に替えても薬を手に入れようという心意気のある男なので、これくらい立派でも案外いいのかも。
と思おうとしてみましたが、やっぱり下男にしては少々華がありすぎるかな・・・^^;

お岩。
武家の娘らしい凛とした雰囲気がとてもいいと思いました。
また、毒で顔が崩れた後も、菊之助は若くて美しいので、客席に横顔を向けたときに左右の違いが際立っていて、大層見応えがありました。
お岩は死んでからというよりは、実質的には髪梳きの場面で恨みが爆発し、幽霊となったのですね。なるほどと思いました。
ただ、菊ちゃんのお岩は伊右衛門に対する愛情(執着)がとても希薄で、父親の敵討ちという目的のためだけに一緒にいるように見えるので、伊右衛門に裏切られたときの“悲しみ”はあまり伝わってこなかったです。どんなに激しく嘆いていても、淡々と見えてしまう。この淡々さは玉さまのお稽古のタマモノかしら。。
だったら幽霊になった後も玉さま譲りだとよかったのですが、こちらはオドロオドロしさが全然で・・・(怒りは全開だけど)。
思えば5月の花子も、妖しさは皆無だったものなぁ、菊ちゃん。あのときは玉さまが妖しさ担当だったから無問題だったが。。
さらにこの感覚、先月の土蜘の菊五郎さんに感じたのとまったく同じ。。。そうか、このオドロオドロしさ皆無はお父さん譲りか。。。そんなところまで似なくてよいのに。。。

松緑の直助。
染五郎の伊右衛門とともに、「ワルい男達がつるんでる」雰囲気がよく出てました。
花道での悪巧みが可愛かった笑。
台詞まわしが一本調子に聞こえましたが、菊之助&染五郎とまた違った個性で、三人三様で舞台のバランスがよかったです。

梅枝のお袖。
とってもよかった。気が強くて可愛い、でもしっかり者のこの役にぴったりでした。
地獄宿での与茂七とのケンカが可愛かった。
松緑の直助&菊之助の与茂七と3人で、三角屋敷をぜひ観たいです!

右近のお梅。
好きになったらただ一筋、全く悪気がないからこそひじょ~にハタ迷惑な若い女の子の雰囲気がよく出ていました。

亀三郎の庄三郎。
菊ちゃんに劣らず、通りのいい声ですね~。
与茂七と二人の場面、まったくストレスなく観られました。

それと、小山三さんのお色。
92歳というご年齢がどうこうでなく、あの「味」、とてもいい。
この方のおかげで、地獄宿の場面に面白味と深みが増していました。
いつまでもお元気で頑張っていただきたいです。

三十年ぶりという「蛍狩(夢)の場」は、私はとてもいいと思いました。
四谷怪談って濃縮したドロドロ内容なので、ここだけストーリーが進まない綺麗なだけの時間に、ほっとする。
それに、二人にもこんなときがあったのだという光景を描くことで、現在の物語をより厚みをもって観られるようになると思うのです。岩はもちろん、伊右衛門にも伊右衛門なりの岩への愛情はあったろうし、なにより二人だけが知っている時間や分け合ってきた思い出が、確かにあったのですよね、この二人にも・・・(もっとも菊之助の岩は伊右衛門への愛情が希薄なので、この夢の場を見てもそういう機微はあまり伝わって来ませんが^^;)。
時間も長くないし、毎回やればいいのに。
菊ちゃんの舞踊も見られて満足。
もっとも染五郎の殿様というより平安貴族のような化粧は、夢の世界を演出したのだと思いますが、伊右衛門に見えず違和感。。
そしてこの夢の場でとくに思ったのですが、染&菊ちゃんは、カップルとしてはいまひとつしっくりこないように感じました。気になるほどではないのですが、たとえば『喜撰』の三津五郎さん&時蔵さん、『杜若~』の亀鶴さん&福助さん、『毛谷村』の愛之助&壱太郎のときのような「この二人ピッタリ!」という感じは受けませんでした。

「戸板返し」、「提灯抜け」、「仏壇返し」。
まんまと驚かせていただきました。楽しかった!

「堀の場」のだんまりは、“だんまり”だと気付くまでひどく時間がかかりました^^;
先日の松竹座の“だんまり”はやっぱりうまかったんだなぁ、と再確認。

最後は、伊右衛門と与茂七がぱたりと闘いをやめ、刀を置いて、客席に背を向けて正座。
そして、改めて客席に向き直り、「まず、今日はこれぎり」の挨拶。
きっぱりとスマートな幕切れで、歌舞伎らしくてよかったです。
染五郎も菊之助も見目がいいので、目の保養。
まさかのストレス解消系のラストに大満足でした♪

あとこの夜は、毒を飲む場面の客席の静寂と緊張感がすごかったです。
4月の盛綱の首実検を思い出しました。
歌舞伎座はハコが大きいので、あれだけの人数が静寂になると迫力ありますね。
まあハコが大きいので、普段は緊張感がなくなり、私語も多くなるわけですが。。
でも菊ちゃん、ちょっと引っ張りすぎじゃない?


来月は、仁左衛門さん&竹三郎さんの四谷怪談です!
ああもう、楽しみすぎてどうしよう(><)
無理してチケットとってよかった!!







今月の筋書。
「花形の未来を思わせる元気な朝顔」と紹介されておりますが・・・。
今月の演目のせいで、私には「血の中に咲く朝顔」にしか見えませんでした^^:
現代的でいい感じ♪


《インタビュー》
「東海道四谷怪談」尾上菊之助

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