風薫る道

Who never feels lonely at all under this endless sky...?

司馬遼太郎 『坂の上の雲』

2007-10-19 00:13:29 | 



このながい物語は、その日本史上類のない楽天家たちの物語である。
楽天家たちは、前をのみ見つめながらあるく。
のぼってゆく坂の上の青い天にもし一朶の白い雲がかがやいているとすれば、それのみをみつめて坂をのぼってゆくであろう。 

(司馬遼太郎 『坂の上の雲』 8巻あとがき)


明治維新をとげ、近代国家の仲間入りをした日本は、息せき切って先進国に追いつこうとしていた。
そんな時代を生きた3人の主人公たち――日露戦争でコサック騎兵を破った秋山好古、日本海海戦の参謀秋山真之、そして文学の世界に巨大な足跡を遺した正岡子規。
他の司馬作品同様、この主人公3人がとても魅力的。
3人とも、どこか飄々としていてとてもマイペース。他人の目なんて気にしない。
そして、なぜか可愛い。。。
伊予弁効果かなぁ。

内容的には、最後の「雨の坂」の章が、この後に続く時代を象徴しているようでいい。
子規の墓まいりをして、雨のなか坂を下ってゆく真之の姿は、日本の姿に重なる。
楽天家たちの時代は終わり、日本は昭和へとつづく暗い軍国主義の時代へと突入してゆく。
同じものを、日本海海戦の際に戦争というものの残酷さに気づき一人号泣する真之の姿の中にも見ることができる。
個人的に、墓まいりとはいえ最後に子規に触れてくれたのは嬉しかったなぁ。私がこの本を好きな理由の80%は子規なので。子規が死んでしまったときは「え?もう登場しないの~・・?」と悲嘆にくれたものだった。

ただ、解説でも書いてあったけれど、敵方に対する表現の辛辣さは読んでいて気になった。司馬さんのそういう表現はこの作品に限ったことじゃないけど、ロジェストウィンスキーに対する描写なんて、何もそこまで・・・と思ってしまうほど。
『燃えよ剣』のように完全なフィクションと割りきれる書き方をしてあれば殆ど気にならないのだけど、この作品はノンフィクションに近いところもあるので、彼にも彼なりの言い分はあるだろうに・・・とどうしても思ってしまい、素直に読みすすめなくなってしまいました。彼の子孫が読んだら悲しむのではないかなぁ。

とはいえ、魅力的な主人公3人を軸に進む展開は全く飽きさせないし、この作品が司馬作品のなかで一番好んで読まれている理由がよくわかります。
私も司馬さんの長編の中ではトップ5に入るくらい好きな作品。
だというのに!!!
3~7巻を失くしてしまったのですよ~・・・・・・。しょっく。
もともと学生時代に古本屋で買ったものなんですけど。
うー・・・また買いなおすのもなんだしなぁ。


戦艦「三笠」。
横須賀の三笠公園にて(米軍基地のすぐ隣)。
艦内では関係資料が多数展示されていて圧巻です。

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