風薫る道

Who never feels lonely at all under this endless sky...?

『風立ちぬ』 2

2013-08-25 15:55:55 | 映画

宮崎:嫌んなっちゃったんですよ、いろいろ。
庵野:役者さんですか?
宮崎:うん、役者さんが。その、声優じゃないんだけど、なんかみんな同じような感じでしゃべってるんだよね。相手の心をおもんばかってるばかりでね。ばかってるフリをして、それで感じを出して、感じが出てる僕、っていうね。

『風立ちぬ』メイキングより)


宮崎監督が庵野監督の起用を決めたときの、お二人の会話です。
これ、今の時代についても、そのまんま当てはまる気がするんですよね。
みんな同じで、「いい子」ばかりな時代。
「周りに迷惑をかけないエラい僕」みたいな。

今回の映画についての感想を読んでいても、その批判の内容にびっくりします。
「貧しい人達を尻目に二人は楽しく恋愛している」「肺病患者の隣でタバコを吸っている」「肺病患者なのに周りの迷惑を考えず町を出歩いている」「感染させるかもしれないのに、二郎を床に誘っている」「菜穂子は辛い病人なのに、二郎は抱く」「二郎は自分の満足のために兵器を作った」・・・・・・。
いったいみんな、どれだけ品行方正な生き方をしているのだ?と言いたくなります。
芸能人のスキャンダルに対してもそう。
そして世の中で事件があると、自分は関係者でもなんでもないのに鬼の首をとったように加害者を糾弾する人たちのなんと多いことでしょう。
「周りに迷惑をかけずに生きてるエラい俺」を声高に言いながら、その実本人が誰よりもそんな自分にストレスを感じているように私には思えます。
それもいい歳したおっさんではなく、まだ若い人達がそうなのだから不思議です。
若者なら悟った顔をして他人の批判をしていないで、多少周りに迷惑をかけても思いきり生きてみればいい。
まあそれを許さない世の中を作った大人にも、多少の責任はあるかもしれませんが。
こう言うと「そうだ、大人のせいだ」という若者がまたいるのでしょうね。
ちがいますよ。
一番は、あなた達自身の責任です。

もしかしたら戦争の時代よりも、窮屈な時代なのかもしれませんね、現代って。
それも国家から強制されているわけではなく、自分達で自分達の生き方を狭めてしまっているように見えます。
「みんな同じ」の世界を作り上げ、外れる者を声高に非難し、その小さな世界の中にいることで「安心感」を得るのでしょう。
つまらない生き方ですね。
『みんなちがって みんないい』
そんな言葉が流行っていても、世の中には根づいていない。

そういう意味でも、「いい子」を描かなかった今回のこの『風立ちぬ』、いいなあと思ったんですよね、私は。
もし今のような閉塞感のある時代でなければ、ここまでいいとは思わなかったと思います。


毒舌、失礼いたしましたm(__)m


『風立ちぬ』 1

『風立ちぬ』 3

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