風薫る道

Who never feels lonely at all under this endless sky...?

薔薇と宝石と絹と恋

2013-09-16 01:06:00 | その他観劇、コンサートetc




美しい。
もうこれだけ美しいのなら何だっていい、と思わせるレベルの美貌でございますな。。


というわけで、12日に行ってまいりました、美輪さんの『ロマンティック音楽会 2013』@PARCO劇場。
(その前に恵比寿に寄り『黒蜥蜴を探して』も鑑賞)

客席にものすごく目立っている人がいて、さすが美輪さまのファンは色んなのがいるな…目を合わせないようにしなきゃ…と思ったら假屋崎さんだった、笑。ロビーにはExileのAtushiさん、槙原敬之さん、野田秀樹さん、大竹しのぶさん、長淵剛さん、千住博さん、平野啓一郎さんといった有名人の方々からの胡蝶蘭が溢れかえっておりました。なぜか松緑からのも。
…しかしながら、美輪さま。枯れたお花達をそのまま飾っておくのは、いかがなものでございましょう。スタッフさん、ちゃんと水をあげてあげて…。假屋崎さん、あなたが一番気にしてあげて…。美輪さまの会場に対する美意識は、今回も私の理解を超えておりました…。

と、前回同様に下がりかけたテンションでございましたが、その舞台はというと――。

素晴らしいステージでした!!

お芝居でも人生相談でもなく、やはりこの人の本業は「歌」なのだなぁ、と思い知った3時間。
といっても全体の半分はトークで、その内容も決して全てに同意できるわけではないのは相変わらずでございましたが、その上で、それもひっくるめてこの人なのだなと納得させられてしまう。
理由は、その歌。
あれだけのパフォーマンスを披露してくださったのですから、一言も文句はございませぬ。
この人の代わりになれる人が他にいるか?
いや、いない。
そう即答できてしまう。
美輪さんて、身長161cmなんだそうですね。前方の席で観ましたが、まったくそんな風には見えなかったなぁ。

そしてこれは『黒蜥蜴』でも感じましたが、あれほどの歌い方をしているのに自分に酔っている感じが一切なく、客席は興奮していてもステージの上は常に醒めている。悪い意味ではなく、醒めている。それは、美輪さんがMCで話されていた「常に頭は冷たく、心はあたたかく」という言葉に通じていることのように感じました。
ふと思い出したのは、檀さんのこの話。価値の転換が幾度も行われた時代を、生きてきた人。
歌の中で若い青年にもなる、場末の娼婦にもなる、老婆にもなる、歌姫にもなる、怪盗にもなる、悪魔にもなる。
そんな「美輪(丸山)明宏」という人間とそれを取り巻く世の中を、本当のこの人は常に一歩引いたところから冷えた頭で見つめながら、生きてきたのではないだろうか。
歌を聴きながら何人分もの人生を観、同時に美輪さん自身の78年間の人生をも観ているような気にさせられる、そんなステージでした。

セットリストは、次のとおり。
どの曲もyoutubeやニコ動にあがっていますので、ぜひ上から順に聴いてみてください。
生の迫力には到底及びませんが、少しだけステージの雰囲気を感じていただけるのではないかと思います。


【第1部】
テーマは戦争。
舞台背景は、夜の街。
美輪さんは、青いサテンのシャツに黒のパンツ、短い黒髪。
一曲目から衝撃的ですよ。
あれほどマイクを離しているにもかかわらず、その声量。とても78歳とは思えません。
そしてその圧倒的な表現力。

『悪魔』
『亡霊達の行進』
『祖国と女達(従軍慰安婦の唄)』
美輪さんが男性だという事実を、一瞬本当に忘れてしまいました。
『星の流れに』
1部ではこの曲のみ、美輪さん以外の作詞・作曲です。
戦後、夜の街で流行った歌だそうです。
『ヨイトマケの唄』
色々な方がカバーされているけれど、美輪さんのオリジナルがやっぱり一番!
『ふるさとの空の下に』
1965年発表。「ヨイトマケ」のカップリング曲。
からだにゃ傷もあるけれど 心に傷はないはずだ

【第2部】
20分の休憩を挟んで、2部のテーマはロマンティック。
一転して明るい南の海と色とりどりの薔薇のセットに、美輪さんは明るい真っ青なドレスと長い黒髪。

『メケメケ』
1957年発表。「だけどそれがどうしたの?」の意。フランスのシャンソンを美輪さんが訳した歌。
『恋のロシアンキャフェ』
表現の変化が素晴らしいです。
『水に流して』
『黒蜥蜴の唄』
1968年発表。三島由紀夫が自決の前に薔薇の花束を持って美輪さんの楽屋を訪れたことを、さきほどwikiで知りました。
『愛する権利』
今回の曲目の中で素の美輪さんが最もストレートに出ているのは、おそらくこの歌だと思います。
『愛の讃歌』
ピアフの原曲を美輪さんが訳した、無償の愛を歌った歌。

~アンコール~
『花(すべての人の心に花を)』 
一旦幕が下りて、それからほぼ間をあけずに再び幕が上がり、アンコール。
昨今の「どうせお約束なのに長時間手を叩くことを要求される」アンコールと異なり、すっきりとスマートで好感がもてました。
曲が終わった後もすぐに照明が点き、潔いです。
…はっ、松緑から花が届いていた理由はこれか! ←ちがう 
※追記:松緑のお父様(初代辰之助)が生前に美輪さんと舞台で共演されたそうです

美輪さんはこの歌を、輪廻転生を歌ったもの、と解釈されているそうです。
私はいわゆる小説的な輪廻転生は信じてはいませんが、そうだったらいいな、とそんな風に感じました。
辛い人生だけど、みんな、ずーっとずーっと色んな人生を繰り返し生きてきて。
最後の美輪さんの
「どっちが先にそこから抜け出せるか競争です。一緒に頑張りましょう」
という言葉に不思議な元気をいただけました。
ありがとうございました。
アンコール曲に入る前に「次はいつお会いできるかわかりませんからね」と笑って仰っていて、最近は体調面から仕事を減らしてもらっているとのこと、ぜひお元気でいつまでも頑張っていただきたいと思います。

以上、「憲法改正には皆さん絶対に反対してくださいね!」というような言葉をはっきりと仰いますし、その他美輪さんのいろいろな部分を割り切れない方には、この舞台は受け付けないと思います。ですがそうでない限りは、先入観をもって観ないでいるのはあまりにもったいない、そんな舞台でした。

今年は美しくて圧倒的な舞台をいっぱい観られた年だったなぁ。。。(まだ終わっていませんが)
辛くて大変なことは毎日いっぱいあるし、本当に生きているだけで精いっぱいなのだけれど、それでも、幸せです。

さぁて。
薔薇のソルトのお風呂に入って、天平の香りのお香を焚いて、眠るとしましょう。
なんて幸福な初秋の夜(外は台風ですが)。


※2回目(9月26日)鑑賞の感想はこちら


「美輪明宏/ロマンティック音楽会2013」
「美輪明宏ドキュメンタリー~黒蜥蜴を探して~」
 特別インタビュー

大反響の『ヨイトマケの唄』も
わたくしは元祖シンガーソングライターと言われていますが、働く人や弱者の心や立場を歌いたかったから始めたのです。今年の「ロマンティック音楽会」の第一部では、そういうワークソングや世の中に対する警告などを歌った、精神性の強い曲をお届けしようと思っています。たとえば、昨年末のNHK紅白歌合戦で大きな反響をいただきました『ヨイトマケの唄』はもちろんのこと、軍需産業に携わった人々への呪いを歌った『悪魔』、世界中の戦争犠牲者たちが夜ごと行進して反戦を唱える『亡霊達の行進』、従軍慰安婦のことを綴った『祖国と女達』、終戦後の流行歌『星の流れに』。そして、長崎の原爆孤児が故郷の土を握りしめて、決して負けずに生きていくと誓う力強い歌『ふるさとの空の下に』で締めたいと思っています。

ロマンティックで華やかな時を
対して、第二部は華やかに。人情味の溢れる叙情的でロマンティックな深く大きな愛の歌を、若い方はご存知ないかもしれませんが――シャンソン・ド・ファンタジスト=歌を演じるという表現で、お贈りいたします。今までは「愛/L'amour」をテーマにしてきましたが、この秋は「心/Le coeur」をテーマにしたいと思っているんです。この「心」というのは曲者で、持ち方ひとつで明るくも暗くもなるんですよね。そういうお話も交えながら、皆さんと共に現在や将来を見つめ直して、考え直す機会にしたいと思っています。

音楽会・映画などが重なる不思議
9月のパルコ劇場での音楽会と同時に、わたくしを密着取材したドキュメンタリー映画が、全国のいろんな映画館で上映されることになりました。1968年の映画『黒蜥蜴』を観て、わたくしのファンになったという、フランスの映画監督パスカル=アレックス・ヴァンサンが、フランスのテレビドキュメンタリー向けに撮影したものです。とてもいい出来上がりで日本でもDVD化されたのですが、まさか映画館で上映されるとは。それに『黒蜥蜴』も再上映されるそうじゃないですか。この夏にはNHKで特集番組がつくられて、10月からは野田秀樹さんがわたくしの半生を舞台化した『MIWA』が上演される。音楽会も映画も舞台も全部重なるなんて、一体なんなの!?とわたくし自身が驚いています。年忌の追悼ならまだしも、まだ生きてぴんぴんしているのに(笑)、不思議ですね。

生きるエネルギーに火を
私はとにかく、皆さんの中にある「生きるエネルギー」を再燃させるために、火を点けるお手伝いをしたいと思っているんです。そのために毎年、春には舞台を、秋には音楽会を、また私の携帯サイトや様々なメディアで身の上相談を、といろいろな活動を続けています。もしかしたら、そういう思いが多くの皆さんに届き始めたからなのかもしれませんね。


【恋のロシアンキャフェ】
「美輪さん スタンド使えそう」のコメに噴きました、笑
この曲の美輪さん、とっても素敵でした。
ニコニコ動画ですが、ぜひぜひご覧になってくださいませ。



【その他動画】
美輪明宏 ボクらの時代 /SONGS
美輪明宏 ブラボーニッポン オーラの食卓

【インタビュー】
なぜ歌い、戦い続けるのか

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