風薫る道

Who never feels lonely at all under this endless sky...?

モーリス・ベジャール・バレエ団 Aプロ『魔笛』 @東京文化会館(11月19日)

2017-11-20 21:34:02 | バレエ




Aプロ最終日に行ってきました。

とっっってもよかった・・・・・

この人達の舞台を観るたびに「世界で一番好きなバレエ団はBBLかもしれない」と感じてしまうのだけど、今回も感じました。このバレエ団からしかもらえない何かが確かにあるのです。
とはいっても私は古いファンでは全くなく、2013年の公演にすごく感動して(そのときまでBBLの存在さえ知らなかった。ボレロは知っていましたが)、買い足して全公演を観に行って、その後に来日した第九も観に行ってやっぱり感動して、という感じなので、ベジャール作品は知らないものの方が圧倒的に多いのです。でも、ベジャールの作品からもらえる海のような宇宙のような大きな愛が本当に好きで。それを魂のレベルで踊っているように感じられるダンサー達の空気が大好きで。本当に幸せです。

以下、舞台の感想。

私はオペラを殆ど観ない(高くて観られない)人間なので『魔笛』も初めてで、前夜に予習。まずはケネス・ブラナーが監督した映画を観てみたのですが、私は彼の作るこの種の映画との相性が非常に悪く、、、今回もこの作品の魅力がわかるようなわからないような?で、、、。続いてオペラの対訳を読んで、ちょっと良さがわかってきたような?なところでの鑑賞となりました。

音楽は今回も録音音源(今思うと第九のBBL×生オケの組み合わせって貴重だったのかも)。今月はクラシックコンサートラッシュだったので冒頭こそ録音の音に違和感があったものの、例によってすぐに慣れてしまいました。というか音源の演奏と歌唱が非常に素晴らしかったので、ヘタな生オケよりずっといいと感じられました。

ダンサーの台詞には字幕がつきますが、歌の歌詞には字幕なし。これは個人的には有難かったです。字幕があったらやっぱり見てしまって踊りにあんなに集中できなかったと思うし。ただこの作品って歌詞の内容が結構重要だと思うので、予習をしていって本当によかったと思いました。

先ほども書きましたが、今回も、ベジャールの大きな大きな愛を感じることができました。海のような、宇宙のような、大きな愛。
“ひとつになれ、人類よ!”は『第九』のメッセージだったけど、これはベジャールの作品全体に通じるメッセージなのではないかと感じました(間違えていたらごめんなさい)。今回の『魔笛』のラストはオペラの演出と違い太陽は夜を排除しないんですよね。太陽がその金色のマントを夜にかけると、再び登場したとき夜は金色の光を纏っている。これは、太陽が力で夜を自分の側に同化させたわけではないと思うのです。太陽をも支配しようとしていた夜に太陽はその光で過ちを気付かせ、また夜も太陽の存在を受け入れたことで両者の争いは終結し、両者は安定したひとつの存在となったのではないかと感じました。太陽の光は夜を内包しているのだと思う。
この最後の場面で微笑んで手を取り合うジュリアンとエリザベットの姿には、もう胸がいっぱいで泣きそうになってしまった。。。
そしてそれは『第九』はもちろんですが『ボレロ』でも同じで、メロディとリズムは最後は一つになっているのだと私は思っているのです。メロディだけじゃなく、メロディが死んだときにリズムも死んでいるのではないかと。そして最後には互いは互いを受け入れているのではないかと。私の勝手すぎる解釈ですが、前回ジュリアンとエリザベットのメロディを観て、そしてそれぞれと踊っていたリズムを観て、そんな風に感じたんです。

ところで、この結末はフリーメイソンの理想の形を表しているのですよね。作中で幾度も現れるその徴(三角形の三つの神殿、床に縄で作られる三角形、舞台奥の一つの目、定規とコンパスのシンボルetc)。私はフリーメイソンという組織についてはどう捉えるべきかわからず知識もないので、その辺はあまり突っ込まず、ファンタジーやRPGを観るような気持ちで視覚的に楽しみました。シンプルで幾何学的な舞台セットが楽しかった。
床に描かれた五芒星★は上階席からはずーっと視界に完全な形で入っているので、視覚的に強く訴えかけてくるものがありました。ダンサー達がそれをポイントにして色々な形を作って踊るので猶更。『第九』の床に描かれた円形の図柄にしても、『ボレロ』の赤い円卓にしても、ベジャールの作品って2階以上の席から観た方がいいものが多いように思う(貧民な私は必然的にそうなっていますが)。

そんなおっきなスケールの愛を見せてくれるベジャールだけど、細かな演出も楽しくて愛らしいのよね。鈴の音色で奴隷達が縄跳びを始めちゃったり、舞台上手で可愛くご馳走にがっついてるパパゲーノだったり、三人の童子達のもつカラフルな風船だったり(これは私の席からは見えなかったけど)。照明もキレイだったな~。振付以外の部分はジルによるリニューアルもなされているそうです。

ダンサーは、やっぱりなによりも、ジュリアン・ファヴロー(ザラストロ)とエリザベット・ロス(夜の女王)の存在感と表現力と踊りの美しさにうっとりしちゃいました。本当に大好き。

ジュリアンはもう太陽神そのもの。でも自ら太陽を司ってはいても、『ライト』の貧しき者で見せたような表情(光を求める人の表情)をふと覗かせるときがあって、その無意識なのか意識的なのか見え隠れする脆さや寂しさのような影がめっちゃ色っぽいんですけど
なんなのなんなのあの空気(前回も同じこと書いた気がしますが)!私にどうしろと!
そこにさらに年齢的な貫録も加わって。ああ、なんて素敵なザラストロ様。。。。
タミーノに試練を課しているとき、赤い鳥居(あれは何かしら。神殿の高座のようなもの?)の上で座っている後ろ姿がギリシャ彫刻のようで、指の先まで美しくて、その姿ばかり見てしまいましたよ。ジュリアンに限らず、バレエダンサーってどんなときも指の先まで常に神経が行き届いていて、それゆえのあの美しさなのだなあと改めて思いました。


エリザベットの存在感と貫録もさすが。ジュリアンと並んで、このバレエ団で今この役をやれるのはこの人しかいないのではないかと心底感じました。今48歳?であれだけ安定感のある踊りができるってすごい。あのゆっくりした振付を自然に美しく見せるのってすごく難しいのではないかと思うのです。体幹が相当鍛えられていないとできないのでは、と。努力しているんだろうなぁ。

そして今回、カテリーナ・シャルキナのパミーナがとてもよかった
2013年のときはちょっとクールな明るい少女という感じだったように思うけど、今回は女性らしい温かみと情感が加わっていて驚きました。彼女は『第九』のときに子供を出産していたそうですが、そういうことも関係あるのかな。ジュリアンと二人だけで踊る場面は『ライト』を思い出してちょっとウルウルしちゃいました。そういえばこの場面のザラストロがパミーナを見る眼差しと仕草がすごく優しくて、それ以外のときは俺様風なのにこのときは優しいお兄さんのようで、すごくよかったです。

ジュリアンはモノスタナトス(ミケランジェロ・ケルーチ)と踊るところもよかったわ~。ケルーチがしなやかな鞭のように色っぽく踊るから、色っぽい×2で観ていて超楽しかったです。

ナレーターと弁者(マッティア・ガリオット)は同じダンサーさんがするんですね。金色の仮面を被っているときが弁者? ところで今日の公演、「パミーノ・・・パミーナ、夜の女王の娘」って言い直してませんでした・・・?でもその気持ちはよくわかる。紛らわしい名前よね笑。

タミーノのガブリエル・アレナス・ルイスは『ライト』で伯爵を踊っていたダンサーですよね。オスカーのヴィヴァルディと踊る場面、好きだったなぁ(ああ、オスカー・・・あなたはどこへ行ってしまったの・・・?→ENBへ行ってしまいました泣)。
領主の息子(王子?)ぽい品の良さ、真面目さ、若々しさがこの役に合っていて、よかったです。フルートの音色にのった恋の歌の踊りのところも、楽しそうでよかった。ここは音楽も大好き。カテリーナともお似合いでした。

パパゲーノの大貫さん。タミーノとのバランスがよくて、明るく可愛らしくて、安心して観ていられました。でももう少ししなやかに綺麗に踊る人だったイメージがあるのだけれど、パパゲーノの振付には今日のような踊り方の方が合ってるのかな。パパゲーナ(ジャスミン・カマロタ)ともとってもお似合いだった あの「子沢山」人形演出すっごい可愛い!空中を飛び交う人形を二人がキャッチしていくのも、楽しいだけじゃなくて光景的にも綺麗だった。

あ~、本当に幸せな舞台だった
客席も思っていたより埋まっていて、ひと安心。
今回は那須野さんが見られなくて残念だったな。那須野さんの踊り、大好きなんです。Bプロでは必ず見られるはずなので、楽しみにしています。
そうそう、カテコではジルが出てきてくれました ジュリアンは今回もニコニコ笑顔

今月は自分でもアホじゃないかと思うくらい観劇&クラシックコンサート尽くしですが、殆どハズレがなくて、それどころか感動する舞台の連続で、ちょっと怖いくらい。。。



BBL公式ページのギャラリーより。


今回の来日公演より。私が観た日はジュリアンはお団子頭じゃありませんでした。


会場ロビーにて。にゃんこがカワユイ


弁者:マッティア・ガリオット
タミーノ:ガブリエル・アレナス・ルイス
パミーナ:カテリーナ・シャルキナ
ザラストロ:ジュリアン・ファヴロー
夜の女王:エリザベット・ロス
パパゲーノ:大貫真幹
パパゲーナ:ジャスミン・カマロタ
モノスタナトス:ミケランジェロ・ケルーチ
夜の女王に仕える三人の侍女:大橋真理、ソレーヌ・ビュレル、ヴァレリア・フランク
三人の童子:クゥィンテン・ギリアムズ、ローレンス・リグ、ヴィクトル・ユーゴー・ペドロソ
三人の僧侶:アンジェロ・ペルフィド、ダニエル・ゴールドスミス、ドリアン・ブラウン
三人の奴隷:ドノヴァーヌ・ヴィクトワール、ドリアン・ブラウン、アントワーヌ・ル・モアル
二人の武士:ドリアン・ブラウン、アンジェロ・ペルフィド
イシス:アランナ・アーキバルド
オシリス:ジェイム・オエッソ 

◆上演時間◆
第1幕 14:00~15:15
休憩 20分
第2幕 15:35~16:55

■音源(ドイツ・グラモフォン)
指揮:カール・ベーム
管弦楽:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
合唱:RIAS合唱団
ザラストロ:フランツ・クラス
パパゲーノ:ディートリッヒ・フィッシャー=ディースカウ
夜の女王:ロバータ・ピータース
パパゲーナ:リーザ・オットー
パミーナ:イヴリン・リアー
弁者:ハンス・ホッター
タミーノ:フリッツ・ヴンダーリッヒ
モノスタナトス:フリードリッヒ・レンツ ほか

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