風薫る道

Who never feels lonely at all under this endless sky...?

ラファエル前派展 @六本木ヒルズ(2月27日)

2014-03-31 00:18:26 | 美術展、文学展etc




それは懐古か、反逆か?

このコピーかっこいい

在英中はいつでも見ることができていた作品達にまたこうして日本で再会できるとは、なんて嬉しいことでしょう。
昨年のルネサンス祭りといい、フランシスベーコン展といい、ターナー展といい、素晴らしい企画展が目白押しで本当に幸せです。

ミレイは2008年に日本でも企画展がありましたが、今回はロセッティがいっぱいですよ。
この2008年のミレイ展は私はロンドンで観たのですが、それは人がいっぱいで(常設展はとっても空いているんですけども)・・・。
今回もやはりロンドン、ワシントン、モスクワからの巡回ですが、東京会場は割と空いていて、好きな絵を心ゆくまで見ることができました。
昨年のターナー展のときにも思いましたが、不思議と現地で見るよりも作品が立派に見えます。テートは建物も内装も立地も大変素晴らしく大好きな美術館ではありますが、有名どころの絵が所狭しと展示されているため、東京で見る方が一つ一つの絵が大切に飾られている印象を受けるのかもしれません。
それでもやっぱり画家の本拠地であるロンドンで観るのがベストでしょうけれど。

以下、今回のお気に入りの絵です♪



アーサー・ヒューズ 『4月の恋』 1855-56年
入口近くに展示されていた作品。
女性の青とも紫ともいえない服の色がそれはそれは美しく、見惚れました。
ジョン・ラスキンはこの絵の繊細な心理描写と色彩を絶賛し、当時まだ学生だったウィリアム・モリスは、ロイヤル・アカデミー展の講評を読んで1856年にこの絵を購入しています。


アーサー・ヒューズ 『ロムニーを退けるオーロラ・リー』 1860年
この画家は青系の色がお得意なのか、この作品も地面のブルーがとても綺麗でした。



ジョン・エヴァレット・ミレイ 『オフィーリア』 1851-52年
今回の企画展の目玉のひとつ。
私が最初にこの絵を見たのは、17年前のワシントンのナショナルギャラリーでした。二度目は2008年のロンドンのテートギャラリー。今回は三度目の再会になります。
在英中には何度も見ていた絵ですが、にもかかわらず今回も同じ感想をもちました。「記憶の中より色が鮮やか」。
この絵の色って印刷で再現しにくいのでしょうか。花の鮮やかさを正確に印刷したものをほとんど見ません。
今回の図録は比較的実物に近いように思いますが、それでもまだ暗い。。
昨年の「漱石の美術世界展」を特集していた『芸術新潮』のものが、一番うまく再現されていたように思います。

この絵のモデルは、ロセッティの奥さんのエリザベス・シダル。
ミレイは彼女をバスタブに入れ実際にお湯をはって(!)この絵を描きましたが、描くことに夢中で水温が冷えていることに気付かず、風邪を引かせてしまった逸話は有名です。完璧主義者ミレイのモデルを務めるのも大変ですね

漱石の『草枕』に出てくるオフィーリアもこの絵。
カーライル博物館に行ったときも感じたことだけれど、漱石が100年前にロンドンで見た絵を今私は東京で見ていて。100年後にはもう私はいないけれど、きっとまた誰かがこの絵の前に立って漱石に思いを馳せるのだろうなぁと思うと不思議な気がします。



ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ 『ベアタ・ベアトリクス』 1864-70年頃
こちらも大好きな絵。
モデルは上の『オフィーリア』と同じ、エリザベス・シダルです。
シダルは浮気なロセッティのために心身を憔悴させ、結婚2年目に多量のアヘン剤を服用し32歳の若さで亡くなりました。この絵はロセッティが亡くなったシダルを思い、彼女を『神曲』のベアトリーチェになぞらえ描いたものです。
なんて書くとロセッティがクズのようでミもフタもありませんが(実際そうなんですが)、芸術家の恋愛は一般人の理解の及ばない独特な世界でもありますしね・・・。
ちなみにこの絵、在英中の帰国直前に見に行ったら「今イタリアに貸し出されてるの。来年1月には戻るわよ」と言われ「その頃私はロンドンにいないので・・・」と泣く泣く退散。その後の旅行時にようやく出会えた思い出の?絵です。


ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ 『ダンテが見たラケルとレアの幻影』 1855年
「神曲」の煉獄篇より。
左上にダンテ(アリギエーリ)の姿が見えます。


ジョン・エヴァレット・ミレイ 『両親の家のキリスト』 1849-50年
ディケンズから「聖家族を労働者階級のように描いている」と批判された作品。
習作も並んで展示されていました。


ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ 『薔薇物語』 1864年

漱石も「カーライル博物館」で書いているロセッティの家は、現在も変わらずロンドンのチェルシーにあります(ご興味のある方はこのブログのメインページもご覧くださいませ^^)。
チェルシーはお散歩するとほんっとーーーーーに楽しいですよ。
オスカーワイルドの家とか、A・A・ミルンの家とか、それはそれは沢山の作家や画家の家が今でもそのまま現存しているのですよ。こういう文化的意識の高さは、日本は英国に遠く遠く遠く及びませぬ。
そして今こちらのサイトで知ったのですが、1848年にミレイやロセッティがラファエル前派兄弟団(the Pre-Raphaelite Brotherhood)を結成した家も、ロンドンに残っているのですね。7 Gower Streetって漱石の最初の下宿のすぐそばじゃないですか。漱石はそのことを知っていたのだろうか。
ミレイが亡くなったのが1896年、漱石がイギリスに留学したのは1900年。彼らは本当に同時代人なのですねぇ。
ああ、19世紀イギリス、私のたまらない憧れです(>_<)


ラファエル前派展は六本木ヒルズ森アーツセンターギャラリーにて、4月6日まで。

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