元・副会長のCinema Days

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「堕天使のパスポート」

2012-06-20 06:34:50 | 映画の感想(た行)

 (原題:Dirty Pretty Things )2002年作品。ロンドンの下町に住む、パスポートとアメリカ行きの切符を手に入れるため危険な選択をする若い移民の女と、彼女を守る男性の姿を描く。

 ロンドンの片隅に住む異邦人たちを描くスティーヴン・フリアーズ監督作といえば「マイ・ビューティフル・ランドレット」を思い出すが、この映画は社会派スリラー方面に振った作りである。ただし、この重いテーマでは「マイ・ビューティフル~」にあった飄々とした味わいに欠けるだけではなく、単純なサスペンス編としても楽しめない。ドラマが主題に負けてしまったような閉塞感が漂っている。

 政情不安な本国から逃れてイギリスに辿り着いた不法滞在者たち。ただし彼らが表社会に出るためには偽造パスポートを手に入れるしかない。そこに犯罪組織が付け入り、臓器売買という闇マーケットが成立する。シビアな現実だが、この問題を前にしても誰も具体的な解決方法を提示できない。

 主人公であるナイジェリア人の元医師とトルコ人の娘も、自分たちに降りかかる火の粉を払うのに精一杯だ。こういうネタは娯楽映画の一要素として扱うには不向きだと思う。どうしても取り上げたいなら、ドキュメンタリー仕立てにして真正面から取り組むべきだろう。

 主演のキウェテル・イジョフォーは好演。相手役のオドレイ・トトゥも頑張っているが「アメリ」のイメージが強い彼女にはトルコ人役は違和感がある。

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