元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「ゴーストバスターズ」

2016-09-12 06:20:38 | 映画の感想(か行)

 (原題:GHOSTBUSTERS)製作意図が分からない映画だ。各国でヒットはしている。しかし、映画会社(ソニー・ピクチャーズ)は多額の宣伝費を投入しているため、いまだ採算が取れていないという。ならばPRの費用を抑えればペイできたのかというと、それも難しい。この手の映画はカネを使って興行的ムーヴメントを起こさなければ成功は覚束ない。黙っていても客が入るような内容や出来ではないことは確かなのだ。

 そもそも、84年に公開された“元ネタ”自体が大した映画ではない。当時としては優れたSFXと、ノリの良いテーマ曲。そしてビル・マーレイにダン・エイクロイド、ハロルド・ライミスといった個人芸で笑わせてくれる人気キャストを配し、一種の社会的現象にまで押し上げることが出来た。しかしながら、中身は酒を一杯引っかけて観るのが相応しいほどのレベルに終わっている。呆れたことに、今回リブートされた作品はこの“元ネタ”とほぼ同じことをやっているに過ぎないのだ。何を考えてプロデュースしたのか、理解不能である。

 コロンビア大学の物理学者エリンは、若い頃に悪友のアビーと共同で執筆した幽霊研究本が、いつの間にか電子書籍として出回っているのを発見する。憤慨した彼女はアビーの勤める街外れの三流大学に向かうが、成り行きでアビーとその相棒ジリアンと共に巷で話題になっている幽霊屋敷に乗り込むことになる。そこで噂通り幽霊と遭遇した3人は興奮するが、いらぬ騒動を起こした責任を取らされてそれぞれ勤務先を解雇されてしまう。そこで彼女たちは、地下鉄職員のパティと事務担当のケヴィンを加えて超常現象の調査会社を立ち上げる。

 前回と違う点は主要登場人物が女性になっていることだが、それ以外はあまり変わらない。締まりの無い話がダラダラと続き、笑えないギャグが漫然と並べられ、フワフワした幽霊どもが画面を横切るばかり。しかも、クリステン・ウィグにメリッサ・マッカーシー、ケイト・マッキノンといった本作のキャストは“元ネタ”の面子に比べれば実力も知名度も落ちる。

 まあ、クリス・ヘムズワース扮するケヴィンの造型こそ新味があるが、あまりにも馬鹿っぽいので観ていて途中で面倒くさくなってくる。男性的視点が偏向する現実社会を皮肉っているの何だのという評価があるものの、この体たらくはそんなことを論じる次元にも到達していない。

 映像処理は前回のタッチを踏襲しており、あれから約30年経っているのだから斬新なアイデアを投入してもバチは当たらないはずだが、この点についても全く工夫が足りない。ポール・フェイグの演出は凡庸そのもので、盛り上がる箇所はどこにも見当たらない。エンドクレジットの後には何やら続編の前振りみたいな映像が挿入されても、期待する向きはそれほど多くはないだろう。フォール・アウト・ボーイによるお馴染みのテーマ曲も、心なしか虚しく響く。

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