元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「クィーン」

2007-05-11 06:41:30 | 映画の感想(か行)

 (原題:The Queen )97年8月のダイアナ元皇太子妃のパリでの交通事故死をめぐる英国王室内の“実録風ドラマ”だが、これを観てまさか“ここまで描かせる英国王室は実にオープンで素晴らしい(それに比べて我が国は・・・・)”なんて脳天気な感想を持つ者はいないだろうな。

 何の思慮思惑もなく、こんな暴露物みたいなシャシンの製作・公開を王室が黙って見ているはずがない。これはあの事件を女王とブレア首相の側からの都合の良い解釈でとらえたフィクションに過ぎないのだ。ならばそう割り切って楽しめば良い・・・・とも言えないのだから厄介である。

 実在していて現役バリバリの登場人物たちを描くのなら、そんなに思い切った展開に出来ないのは当然。つまりは映画としては微温的に立ち回ることしか出来ず、最初から“そこそこの出来”になることを運命付けられた作品なのだ。これをどう面白く見ろというのか。

 それでも、エリザベス女王を演じてオスカーを受賞したヘレン・ミレンは敢闘しており、実際に女王は少しはこのようなリアクションをしたこともあったのだろうと思わせる存在感。ブレア首相役のマイケル・シーンも本人に似せる役作りに成功。フィリップ殿下に扮するジェイムズ・クロムウェルに至っては、アメリカ人なのに英国ロイヤル・ファミリーの一員として違和感のない佇まいで感心した。ただし、それは単に“良くできた物真似”でしかない。女王の普通のオバサンとしての行動や生活様式も、親しみやすいというより、ワザとらしい。

 本当の舞台裏はこんなもんではないだろう。離婚したとはいえ、世界的な人気者だったダイアナ元皇太子妃の突然死に直面して、王室や政府がいかに動揺したのか想像に難くない。ドロドロとした駆け引きもあっただろうし、陰謀説も跳梁跋扈したことだろうし、ダイアナの恋人ドディ・アルファイドに関する噂も無視できない。

 ただし、それらはここでは描かれない・・・・というか、描けないのだ。おおっぴらに真相に迫れるのは、関係者がほとんどいなくなる将来においてである。今は、本作のような“実録らしき再現ドラマ”でお茶を濁すしかないのだ。

 監督はスティーヴン・フリアーズだが、いつものような切れ味が感じられず、これも不満である。

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