元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「881 歌え!パパイヤ」

2008-09-22 06:41:39 | 映画の感想(英数)

 (原題:881 )アジアフォーカス福岡国際映画祭2008出品作品。まるで気勢の上がらない映画だが、本作品が既に首都圏等では一般公開されたと知って少し驚いた。どう考えても客を呼べる要素はあまりないシャシンであり、何を考えて配給したのか理解に苦しむところである。

 シンガポールではお盆の季節になると街のあちこちに“ゲータイ(歌台)”と呼ばれるステージが設置され、そこでいろいろな出し物が催される。当初は伝統芸能だけだったらしいが、次第に歌謡ショーの体裁になり、今ではそこで客を取れるシンガーは“ゲータイ歌手”として絶大な人気を得るらしい・・・・といった風俗的興味だけが本作の身上である。ドラマ部分はまったく大したことがない。

 スターを目指す普通の女の子2人組(ミンディー・オン、ヤオ・ヤンヤン)が、事務所の女社長の身内である“ゲータイの女神”なるものから音楽的才能を得て“パパイヤ・シスターズ”としてデビュー。ヒットチャートを賑わせる活躍をするといった設定からしてバカらしい。そんな女神がいるならば誰も苦労はしないのだ。

 さらに一方の女の子は不治の病に罹っていることや、女社長の息子が淡い恋心を抱いていることなど、取って付けたようなモチーフが続く。そもそも女神の手助けで売れっ子歌手になったような連中に、観客が感情移入できるわけがないではないか。

 監督・脚本のロイストン・タンは本作が3本目の長編映画ということだが、テンポが悪く撮り方が下手で中盤を待たずして退屈でたまらなくなってくる。これ見よがしな拙いSFXで愛嬌を振りまこうという戦術も、ことごとくハズして笑いの一つも取れない。終盤のワザとらしい御涙頂戴の筋書きにも脱力だ。

 そして最大の敗因は、主人公達が歌う場面に魅力がないこと。もちろん御当地モノの強みで本場ならではのハデなステージングが展開されるが、一本調子で2,3曲聴いたら“もういいよ!”となってしまうのだ。だいたい私はこういう演歌路線は好きではない。音楽をネタにした映画を作る場合、たとえそのジャンルの音楽が苦手な観客でも映画を観ている間は好きにさせてしまうのが真骨頂だろう。それが出来ないのは、作り手に力量が不足しているからだ。キャストも魅力なく、ライバル役の“ドリアン・シスターズ”の方が見栄えがするのだから困ったものである。とにかく、あまり観る価値はない。

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