元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「レスビアンハーレム」

2017-05-12 06:23:38 | 映画の感想(ら行)
 新東宝の製作によるピンク映画。87年作品で、監督はアダルトビデオを手掛けていたらしい(私はよく知らないけれど)細山智明。

 心中しようとして山の中に入った女の子二人が、いつの間にか不思議な迷宮に引き込まれる。そこは悪い女王に支配された空間で、同じようにそこに入り込んだ女たちがたくさんいて、やがて女王に対して反乱を起こす・・・・・という何やらSFチックな設定だが、これが実にピンク映画らしい安っぽく、それでいて奇妙な味わいを持つ作品に仕上がっている。

 なぜか迷宮の中に電車が走っていたり、高速道路があったり、そして女王の宮殿が地面にゴザ敷いてその上にほったて小屋建てたようなチャチなものだったり、徹底的にいいかげんな舞台背景ながら、どういうわけか現実の裏側にある異次元の世界の雰囲気がぷんぷん匂ってくるのはこの監督の独特の映像センスのためだろう。たとえれば、アンドレイ・タルコフスキー監督の「ストーカー」に出てくる“ゾーン”みたいな場所だと言うならこれはホメすぎだろうか(ホメすぎだろうな、やっぱり)。

 公開当時のキネマ旬報誌によると、この作品は通常の成人映画の倍の製作費をかけ、撮影日数も一週間以上(!)という“大作”らしい。さらにスーパー16ミリという実験的な試みがなされている。16ミリで撮影し、35ミリにブローアップしたものらしいが、画質にまったく問題がない。そしてこれはピンク映画には珍しい同時録音方式がとられている。

 この映画には男は一人も登場しない。20数名におよぶ女優だけである。中でも強烈なのは女王に扮する秋本ちえみで、ド派手なメイクと巨大な張り形を付けたフリークぶりは、スゴイ。橋本杏子扮するリーダー格の女を中心に暴動は起こり、女王はあえない最期をとげる。ところが、女たちは誰一人その迷宮を去ろうとはせず、女だけのユートピアをそこで築く、という結末になっている。

 映像の面白さと使用される音楽(なぜかナツメロ歌謡曲が多い)の奇妙な雰囲気、実際観なければちょっと言葉では表現できないような作品だ。“カルト・ムービー”とはこういう映画のことをいうのであろうか。

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