元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「アバター」

2010-01-11 06:37:28 | 映画の感想(あ行)

 (原題:AVATAR)3D上映で観ないと意味のない映画だろう。断っておくが、私は3D上映で観ていない。理由は、あの偏光メガネを装着すると目が疲れるからだ。しかも本作は2時間40分もの長尺。とても耐えられそうにないと思い、通常映写での鑑賞となった次第。だから3Dでの画面は想像で書くしかないが、確かにこの舞台セットと美術は3D映写ではかなりの臨場感が味わえるだろうと思った。

 惑星パンドラの、まさに“異世界”と呼ぶに相応しいエクステリアは、観客を別の空間に誘うには十分だ。クリーチャーの造形も実に良く練られている。特に、異星人はそれほど親しみやすい外見ではない代わりに、まったく生理的に受け付けないほどの気色悪さは持っていない。最初は敬遠したいけど、付き合ってみるとけっこうイイ奴であった・・・・という筋書きを補完するのにふさわしい出で立ちである。

 ただし、逆に言えば3D上映という規格を除外してしまうと、これほど気勢の上がらない映画はないと言える。このストーリーは、まるでケヴィン・コスナーの「ダンス・ウィズ・ウルブズ」と宮崎駿の「風の谷のナウシカ」とを足して二で割ったようなシロモノではないか。もう、救いようがないほどに陳腐である。

 しかも、この退屈な筋書きがなぜ大手を振ってスクリーン上に現出しているのか、その製作意図が透けて見えることも鬱陶しい。つまりは昨今のアメリカの、対外政策への批判だろう。肌の色が違うとか、信じる宗教が違うとかいう理由だけで勝手に“ブラックリスト”に登録し、何かあれば躊躇無く軍隊を送り込み、自らの主義主張を押しつけようとする。基軸通貨としてのドルの価値も怪しくなった現在、明確な“チェンジ”が望まれるアメリカの実情を如実に反映した作劇だと言えよう。

 でも、脳天気な理想主義者のジェームズ・キャメロン監督がいくら声高にテーマを訴えようと、実際のアメリカの外交政策自体もやはり“脳天気”に過ぎない以上、愚直なまでに正面からシュプレヒコールを挙げても底の浅さは免れない。ならばどうしてアメリカは単純に過ぎる政策しか打ち出せないのかといった、その先を突っ込んだような考察をも映画に織り込まなければ、退屈な展開に終始せざるを得ないのだ。

 主演のサム・ワーシントンをはじめシガーニー・ウィーバー、ゾーイ・サルダナ、ミシェル・ロドリゲスといった出演陣も印象に残らない。そこそこ演技が出来れば彼らでなくても一向にかまわないだろう。

 それと、本作のヒットで懸念されるのは、これから3D効果ばかりを狙って内容がスカスカな映画が連発されないかということだ。派手な見せ物は目を引く代わりに飽きるのも早い。何やら“3Dバブル”の様相を呈する可能性もあったりして、観ている側はどうも落ち着かない。
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